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元カノ・現岡真奈香の証言
しおりを挟む「事前にメッセージでもお伝えしましたけど、あたし、去年将希と別れてから連絡を取ってないんで、あんまり話せることはないと思いますよ。そりゃあ、その、将希が死んだことには、お悔やみ申し上げますけれど……。
将希との出会いですか? ……。一人で買い物に出かけた先で、彼があたしを助けてくれたのがきっかけです。その日は風が強くて、将希が助けてくれなければ、あたしは落ちてきた看板の下敷きになって死んでいたと思います。お礼に食事に誘って、そこで意気投合して……って感じです。いえ、話すのを躊躇ったのは、別に変な意味はなくって。ただ、なんか漫画みたいな出会いかたじゃないですか。あたしの友達には、それで結構笑われたので、お姉さんも笑うのかなって思ったんです。お姉さんは、笑わないんですね。
……ふうん。やっぱり、将希って昔からそういう感じなんですね。それならやっぱり、あたしのことなんて、特別大事ってわけでもなかったのかもしれませんね。あたしが猛アタックして、それに折れただけだったのかも。
いえ、将希はとても良い彼氏でしたよ。いろんなところに連れて行ってくれたし、あたしの好物はひとつも漏らさず覚えてくれたし、価値観も似通ってたから、あたしと一緒に一喜一憂してくれたし。出会いかたが出会いかただったからか、将希はなにかと過保護なところがありましたけど、それだけあたしのことを大切にしてくれてるんだなって思ったら、悪い気はしませんでした。別に、束縛が強いわけじゃなくて、本当に些細なことでも気にかけてくれったっていうか。外を歩くときは必ず将希が車道側に回るとか、そういう感じのやつです。週末にお互いの家で過ごすようになっても、その居心地の良さは変わらなくって。だからあたし、結構本気で、このまま将希と結婚するんだろうなって思ってたんです。
別れた理由? 浮気ですよ。
初めて行く場所なのに、前に来たときはどうのって話をし始めたり。あたしと居るのに、ずっと周囲をきょろきょろ見回してたり。果ては、ヒマリとかいう知らない女の名前で私を呼んだんですよ。本っ当、最低。将希は『ヒマリとは決して君が想像するような仲の子じゃない』って謝ってきましたけど、じゃあどういう仲の子なのか説明してよって言ったら、黙りこくったんですよ? それでなにを許せるっていうんですか。だからあたしたちは別れたんです。それ以降は、知りません。連絡先は全部ブロックの上で削除したので。そのヒマリって子とよろしくやってたんじゃないですか? え? あたしと別れてから、誰とも付き合ってなかった? それじゃあ、向こうにもあたしのことがバレて、どっちからも振られたんじゃないですか?
……は? ピーマン? そういえば、あるときから急に食べられるようになってましたね。どうしたのって訊いたら、『俺もいつか父親になるかもしれないし、いつまでも子どもみたいな好き嫌いをしてちゃいけないもんな』なんて言ってましたけど。
そういえば、将希がピーマンを食べられるようになったの、浮気を疑い始めた頃からかも。そうそう、それも違和感のひとつでした。好き嫌いが変わったんじゃなくて、嫌いな食べ物をいくつも克服していたんですよね。浮気相手の料理がよっぽど美味しかったのかな……。あーもう、今思い出しても腹が立つ!」
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