上 下
11 / 17
無期限インターアクション

(4)――「ありがとな」

しおりを挟む
「三久……?」
 こいつはなにがしたいんだと疑問に思ったのも、束の間。
 三久は俺の前に屈んだかと思うと、ひょいと俺の手を取って、そして、舐めた。
 舐めた。
 アイスでべとべとになっている俺の手を、舐め始めたのだ。
「――っ」
 あまりに唐突な行動に、悲鳴にも似た声が出た。が、三久は構わず俺の手を舐め回し続ける。手の平を、指と指の間を、指を、丹念に舐める。アイスで冷えた手を、三久の温かい舌が這う。くすぐったいような、背筋に悪寒が走るような――とにかく、あまり経験しない感覚だった。
「み、みつひさ――」
 いつまで経ってもやめない三久の肩を、ぐいっと押した。
 それでようやく、三久の口から俺の手は解放された。
「だからさ、椿季。僕はお前と、こういうことがしたいって言ってんだよ」
 押し倒され、三久が俺の上に乗っかる。
 見たことのない種類の真剣な面差しに、心臓がどきりと跳ね上がる。
 三久の冷たい手が俺の頬に触れ、身体が意思とは関係なしにびくついた。
「……やっぱり、嫌か?」
 不安げな表情の三久に、俺は思わず笑った。
「まさか」
 頬に触れてるこいつの手に、俺の手を重ねる。
「いまさらビビってんじゃねぇよ、ばーか」
「――っ」
 三久が息を呑んだ次の瞬間には、唇を押しつけられていた。
 はじめは啄むように。そして、ゆっくりと遠慮がちに、舌が這入ってきた。身体が少しだけ強張ったが、俺もそれに自らの舌を絡める。嫌悪感はなかった。それどころか、気持ちが満たされていく感じがする。
 頭がぐらつく。息が上手くできない。主導権を握れないと、こんな風になるのか。
 苦しい。気持ち良い。苦しい。気持ち良い。
 三久が思い切り俺を抱き締める。次第に首元に手が回り、こちらの動きを封じられた。快楽が際限なく与えられていく。が、次第に、初めて感じる類のぞわりとした感覚に襲われ、これ以上はまずいと判断した俺は、苦し紛れに三久の背中をばしばしと叩いた。
「ごめ……、大丈夫か」
 軽く息を切らしながら、三久は申し訳なさそうに俺を見た。
「がっつきすぎ」
「嬉しくって、つい」
「俺は窒息死なんてしたくない」
「さっき、僕になら殺されても良いって言ったじゃねぇか」
「うるせー」
 言って、今度は俺から三久に抱きついた。
「どうせなら、生きてお前と一緒に居たいに決まってるだろ」
「……椿季」
 三久の腕が、再度俺を包む。さきほどよりも優しい抱きかただ。
「なに?」
「ありがとな」
「……うん」
 三久の体格からは考えられないくらいに深い包容力に包まれながら、俺は小さく頷いた。
「なあ椿季。さっき久々に小説書いたって言ってただろ。それ読みたい」
「ああ、あれ嘘」
「は?」
「お前が部屋に入れてくれるような口実って言ったら、そうなるだろ」
「すごく読みたかったのに……」
「嘘ついたのは悪かった。ごめんな」
「許さない。殺す」
「おいふざけんな」



 終
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結・BL】DT騎士団員は、騎士団長様に告白したい!【騎士団員×騎士団長】

彩華
BL
とある平和な国。「ある日」を境に、この国を守る騎士団へ入団することを夢見ていたトーマは、無事にその夢を叶えた。それもこれも、あの日の初恋。騎士団長・アランに一目惚れしたため。年若いトーマの恋心は、日々募っていくばかり。自身の気持ちを、アランに伝えるべきか? そんな悶々とする騎士団員の話。 「好きだって言えるなら、言いたい。いや、でもやっぱ、言わなくても良いな……。ああ゛―!でも、アラン様が好きだって言いてぇよー!!」

オメガ嫌いなアルファ公爵は、執事の僕だけはお気に入りのオメガらしい。

天災
BL
 僕だけはお気に入りらしい。

無自覚両片想いの鈍感アイドルが、ラブラブになるまでの話

タタミ
BL
アイドルグループ・ORCAに属する一原優成はある日、リーダーの藤守高嶺から衝撃的な指摘を受ける。 「優成、お前明樹のこと好きだろ」 高嶺曰く、優成は同じグループの中城明樹に恋をしているらしい。 メンバー全員に指摘されても到底受け入れられない優成だったが、ひょんなことから明樹とキスしたことでドキドキが止まらなくなり──!?

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

君を独占したい。

檮木 蓮
BL
性奴隷として売られたユト 売られる前は、平凡な日を送っていたが 父の倒産をきっかけに人生が 変わった。 そんな、ユトを買ったのは…。

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

くまさんのマッサージ♡

はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。 2024.03.06 閲覧、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。 2024.03.10 完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m 今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。 2024.03.19 https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy イベントページになります。 25日0時より開始です! ※補足 サークルスペースが確定いたしました。 一次創作2: え5 にて出展させていただいてます! 2024.10.28 11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。 2024.11.01 https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2 本日22時より、イベントが開催されます。 よろしければ遊びに来てください。

高嶺の花宮君

しづ未
BL
幼馴染のイケメンが昔から自分に構ってくる話。

処理中です...