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無期限インターアクション
(4)――「ありがとな」
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「三久……?」
こいつはなにがしたいんだと疑問に思ったのも、束の間。
三久は俺の前に屈んだかと思うと、ひょいと俺の手を取って、そして、舐めた。
舐めた。
アイスでべとべとになっている俺の手を、舐め始めたのだ。
「――っ」
あまりに唐突な行動に、悲鳴にも似た声が出た。が、三久は構わず俺の手を舐め回し続ける。手の平を、指と指の間を、指を、丹念に舐める。アイスで冷えた手を、三久の温かい舌が這う。くすぐったいような、背筋に悪寒が走るような――とにかく、あまり経験しない感覚だった。
「み、みつひさ――」
いつまで経ってもやめない三久の肩を、ぐいっと押した。
それでようやく、三久の口から俺の手は解放された。
「だからさ、椿季。僕はお前と、こういうことがしたいって言ってんだよ」
押し倒され、三久が俺の上に乗っかる。
見たことのない種類の真剣な面差しに、心臓がどきりと跳ね上がる。
三久の冷たい手が俺の頬に触れ、身体が意思とは関係なしにびくついた。
「……やっぱり、嫌か?」
不安げな表情の三久に、俺は思わず笑った。
「まさか」
頬に触れてるこいつの手に、俺の手を重ねる。
「いまさらビビってんじゃねぇよ、ばーか」
「――っ」
三久が息を呑んだ次の瞬間には、唇を押しつけられていた。
はじめは啄むように。そして、ゆっくりと遠慮がちに、舌が這入ってきた。身体が少しだけ強張ったが、俺もそれに自らの舌を絡める。嫌悪感はなかった。それどころか、気持ちが満たされていく感じがする。
頭がぐらつく。息が上手くできない。主導権を握れないと、こんな風になるのか。
苦しい。気持ち良い。苦しい。気持ち良い。
三久が思い切り俺を抱き締める。次第に首元に手が回り、こちらの動きを封じられた。快楽が際限なく与えられていく。が、次第に、初めて感じる類のぞわりとした感覚に襲われ、これ以上はまずいと判断した俺は、苦し紛れに三久の背中をばしばしと叩いた。
「ごめ……、大丈夫か」
軽く息を切らしながら、三久は申し訳なさそうに俺を見た。
「がっつきすぎ」
「嬉しくって、つい」
「俺は窒息死なんてしたくない」
「さっき、僕になら殺されても良いって言ったじゃねぇか」
「うるせー」
言って、今度は俺から三久に抱きついた。
「どうせなら、生きてお前と一緒に居たいに決まってるだろ」
「……椿季」
三久の腕が、再度俺を包む。さきほどよりも優しい抱きかただ。
「なに?」
「ありがとな」
「……うん」
三久の体格からは考えられないくらいに深い包容力に包まれながら、俺は小さく頷いた。
「なあ椿季。さっき久々に小説書いたって言ってただろ。それ読みたい」
「ああ、あれ嘘」
「は?」
「お前が部屋に入れてくれるような口実って言ったら、そうなるだろ」
「すごく読みたかったのに……」
「嘘ついたのは悪かった。ごめんな」
「許さない。殺す」
「おいふざけんな」
終
こいつはなにがしたいんだと疑問に思ったのも、束の間。
三久は俺の前に屈んだかと思うと、ひょいと俺の手を取って、そして、舐めた。
舐めた。
アイスでべとべとになっている俺の手を、舐め始めたのだ。
「――っ」
あまりに唐突な行動に、悲鳴にも似た声が出た。が、三久は構わず俺の手を舐め回し続ける。手の平を、指と指の間を、指を、丹念に舐める。アイスで冷えた手を、三久の温かい舌が這う。くすぐったいような、背筋に悪寒が走るような――とにかく、あまり経験しない感覚だった。
「み、みつひさ――」
いつまで経ってもやめない三久の肩を、ぐいっと押した。
それでようやく、三久の口から俺の手は解放された。
「だからさ、椿季。僕はお前と、こういうことがしたいって言ってんだよ」
押し倒され、三久が俺の上に乗っかる。
見たことのない種類の真剣な面差しに、心臓がどきりと跳ね上がる。
三久の冷たい手が俺の頬に触れ、身体が意思とは関係なしにびくついた。
「……やっぱり、嫌か?」
不安げな表情の三久に、俺は思わず笑った。
「まさか」
頬に触れてるこいつの手に、俺の手を重ねる。
「いまさらビビってんじゃねぇよ、ばーか」
「――っ」
三久が息を呑んだ次の瞬間には、唇を押しつけられていた。
はじめは啄むように。そして、ゆっくりと遠慮がちに、舌が這入ってきた。身体が少しだけ強張ったが、俺もそれに自らの舌を絡める。嫌悪感はなかった。それどころか、気持ちが満たされていく感じがする。
頭がぐらつく。息が上手くできない。主導権を握れないと、こんな風になるのか。
苦しい。気持ち良い。苦しい。気持ち良い。
三久が思い切り俺を抱き締める。次第に首元に手が回り、こちらの動きを封じられた。快楽が際限なく与えられていく。が、次第に、初めて感じる類のぞわりとした感覚に襲われ、これ以上はまずいと判断した俺は、苦し紛れに三久の背中をばしばしと叩いた。
「ごめ……、大丈夫か」
軽く息を切らしながら、三久は申し訳なさそうに俺を見た。
「がっつきすぎ」
「嬉しくって、つい」
「俺は窒息死なんてしたくない」
「さっき、僕になら殺されても良いって言ったじゃねぇか」
「うるせー」
言って、今度は俺から三久に抱きついた。
「どうせなら、生きてお前と一緒に居たいに決まってるだろ」
「……椿季」
三久の腕が、再度俺を包む。さきほどよりも優しい抱きかただ。
「なに?」
「ありがとな」
「……うん」
三久の体格からは考えられないくらいに深い包容力に包まれながら、俺は小さく頷いた。
「なあ椿季。さっき久々に小説書いたって言ってただろ。それ読みたい」
「ああ、あれ嘘」
「は?」
「お前が部屋に入れてくれるような口実って言ったら、そうなるだろ」
「すごく読みたかったのに……」
「嘘ついたのは悪かった。ごめんな」
「許さない。殺す」
「おいふざけんな」
終
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