10 / 17
無期限インターアクション
(3)――「『わたし、死んでもいいわ』」
しおりを挟む
「お前に告白されるまで、俺はお前をそういう目で見たことが一度もなかった。だから告白されて、すごく驚いたっていうのが、正直なところだ」
お前の気持ちを伝えられて、それから考えた。
ドーナツを食べて、胃もたれを起こしながら考えた。
胃のむかつきと脳のざわめきと葛藤した。
「男同士だし、俺はお前を友達としか見てこなかったし。どうすれば良いんだろうなって、ずっと、そればかり考えた」
だけど考えれば考えるほど、『詩村三久』個人を否定する言葉は全く浮かばないことに気がついた。
世間体とか、そういうのばかりが頭の中を占拠していたから気づくのには時間がかかったけれど、俺はこいつ自身を否定しようとは考えなかったのだ。
三久との縁は絶対に切れないものだと、俺は確信した。
いやそうじゃない。
切れないんじゃなくて、切りたくない。
俺だって、三久の隣に居たいんだ。
たとえば、高校時代。
夕日の射す部室で、二人きりの勉強会。
あの雰囲気と距離感が、俺は大好きだった。言ったら気持ち悪がられると思って言わなかっただけで、俺は三久と一緒に居るときが一番好きなんだ。
「俺は三久が好きだ。お前の言う『好き』にはほど遠いものかもしれないけど、俺はお前を嫌いにはなれない。お前に告白されたところで、俺のこの気持ちに変わりはない。俺は、お前の隣に居たい」
「……僕は」
黙って俺の話を聞いていた三久は、視線を手元に落したまま口を開いた。
「僕はお前と、その……キスしたり、セッ――いや、エロいことをしたいとか、考えてるんだけど」
「お、おう」
どうして言い直した、とは突っ込まない。真面目な話をしているのだ。
「それでもお前は、僕の隣に居てくれるのか」
三久の顔は、赤らんでいるようにも、青ざめているようにも見えた。そんな三久を見ている俺は、今どんな顔をしているんだろう。わかるのは、正面に居るこいつだけだ。
「――そういえばお前の新作、もう読んだんだけどさ」
「話を逸らすな」
「逸らしてない。良いから言わせろよ」
三久未来の最新作の結末は、歪みに歪んだ思考の結果、全員が死んで終わった。好き過ぎたが故のバッドエンド。主人公は、女を殺してしまうくらいに愛していた。
「お前にだったら殺されても良い。なにされたって構わない。嫌だなんて思わないし、嫌じゃない。それくらいの覚悟はあるし、それが俺の気持ちなんだ」
それまで不機嫌そうな、或いは泣きそうな顔をしていた三久は、途端に目を丸くした。
「それって、つまり――」
「『わたし、死んでもいいわ』」
「そうか」
目が合って、二人して笑った。
なにが面白いというわけじゃない。
ただ、ほっとしたら、自然と笑みがこぼれたのだ。
「あ、おい。お前アイスが――」
持っていたアイスが、もう限界ぎりぎりまで溶け出していた。溶けた部分は俺の手を滴って、数滴ほど床に落ちている。アイス本体がまだ棒にひっついているのが不思議なくらいだった。
「おわっ」
咄嗟に、アイスをテーブルの上にあったマグカップへ突っ込んだ。たぶんこれ、こいつがいつもコーヒーを飲むときに使ってるやつだ……。どうやら中身は入っていないようだが、なんだか複雑な気分だった。床に落としてしまうよりはマシなんだろうけれど。
「アイスのこと、すっかり忘れてた……。これ、溶けても喰えるかな」
「ネットだと、塩胡椒とかで味を整えれば、煮込んでもいけるとか書いてあったな」
「よし、じゃあ後で試そう。それより三久、ティッシュ取ってくれ。手がべとべとだ」
時計をつけていないほうの手で良かった、と安心しながらティッシュを要求したのだが、三久はティッシュを手に取ることなく、俺のほうへと距離を詰めてきた。
お前の気持ちを伝えられて、それから考えた。
ドーナツを食べて、胃もたれを起こしながら考えた。
胃のむかつきと脳のざわめきと葛藤した。
「男同士だし、俺はお前を友達としか見てこなかったし。どうすれば良いんだろうなって、ずっと、そればかり考えた」
だけど考えれば考えるほど、『詩村三久』個人を否定する言葉は全く浮かばないことに気がついた。
世間体とか、そういうのばかりが頭の中を占拠していたから気づくのには時間がかかったけれど、俺はこいつ自身を否定しようとは考えなかったのだ。
三久との縁は絶対に切れないものだと、俺は確信した。
いやそうじゃない。
切れないんじゃなくて、切りたくない。
俺だって、三久の隣に居たいんだ。
たとえば、高校時代。
夕日の射す部室で、二人きりの勉強会。
あの雰囲気と距離感が、俺は大好きだった。言ったら気持ち悪がられると思って言わなかっただけで、俺は三久と一緒に居るときが一番好きなんだ。
「俺は三久が好きだ。お前の言う『好き』にはほど遠いものかもしれないけど、俺はお前を嫌いにはなれない。お前に告白されたところで、俺のこの気持ちに変わりはない。俺は、お前の隣に居たい」
「……僕は」
黙って俺の話を聞いていた三久は、視線を手元に落したまま口を開いた。
「僕はお前と、その……キスしたり、セッ――いや、エロいことをしたいとか、考えてるんだけど」
「お、おう」
どうして言い直した、とは突っ込まない。真面目な話をしているのだ。
「それでもお前は、僕の隣に居てくれるのか」
三久の顔は、赤らんでいるようにも、青ざめているようにも見えた。そんな三久を見ている俺は、今どんな顔をしているんだろう。わかるのは、正面に居るこいつだけだ。
「――そういえばお前の新作、もう読んだんだけどさ」
「話を逸らすな」
「逸らしてない。良いから言わせろよ」
三久未来の最新作の結末は、歪みに歪んだ思考の結果、全員が死んで終わった。好き過ぎたが故のバッドエンド。主人公は、女を殺してしまうくらいに愛していた。
「お前にだったら殺されても良い。なにされたって構わない。嫌だなんて思わないし、嫌じゃない。それくらいの覚悟はあるし、それが俺の気持ちなんだ」
それまで不機嫌そうな、或いは泣きそうな顔をしていた三久は、途端に目を丸くした。
「それって、つまり――」
「『わたし、死んでもいいわ』」
「そうか」
目が合って、二人して笑った。
なにが面白いというわけじゃない。
ただ、ほっとしたら、自然と笑みがこぼれたのだ。
「あ、おい。お前アイスが――」
持っていたアイスが、もう限界ぎりぎりまで溶け出していた。溶けた部分は俺の手を滴って、数滴ほど床に落ちている。アイス本体がまだ棒にひっついているのが不思議なくらいだった。
「おわっ」
咄嗟に、アイスをテーブルの上にあったマグカップへ突っ込んだ。たぶんこれ、こいつがいつもコーヒーを飲むときに使ってるやつだ……。どうやら中身は入っていないようだが、なんだか複雑な気分だった。床に落としてしまうよりはマシなんだろうけれど。
「アイスのこと、すっかり忘れてた……。これ、溶けても喰えるかな」
「ネットだと、塩胡椒とかで味を整えれば、煮込んでもいけるとか書いてあったな」
「よし、じゃあ後で試そう。それより三久、ティッシュ取ってくれ。手がべとべとだ」
時計をつけていないほうの手で良かった、と安心しながらティッシュを要求したのだが、三久はティッシュを手に取ることなく、俺のほうへと距離を詰めてきた。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
【完結・BL】DT騎士団員は、騎士団長様に告白したい!【騎士団員×騎士団長】
彩華
BL
とある平和な国。「ある日」を境に、この国を守る騎士団へ入団することを夢見ていたトーマは、無事にその夢を叶えた。それもこれも、あの日の初恋。騎士団長・アランに一目惚れしたため。年若いトーマの恋心は、日々募っていくばかり。自身の気持ちを、アランに伝えるべきか? そんな悶々とする騎士団員の話。
「好きだって言えるなら、言いたい。いや、でもやっぱ、言わなくても良いな……。ああ゛―!でも、アラン様が好きだって言いてぇよー!!」
無自覚両片想いの鈍感アイドルが、ラブラブになるまでの話
タタミ
BL
アイドルグループ・ORCAに属する一原優成はある日、リーダーの藤守高嶺から衝撃的な指摘を受ける。
「優成、お前明樹のこと好きだろ」
高嶺曰く、優成は同じグループの中城明樹に恋をしているらしい。
メンバー全員に指摘されても到底受け入れられない優成だったが、ひょんなことから明樹とキスしたことでドキドキが止まらなくなり──!?
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる