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16.――古傷だらけのこの男の身体に、俺からの傷をひとつだけで良いからつけてやりたかった
しおりを挟む一時退去先として訪れたのは、屋敷を出て数分ほど歩いてきたところにあった。
屋敷を囲う広大な自然の中、そこはぽつねんと存在していた。特に人の手が入ったようには見えないが、そこはまるで広場のように訪れるものを歓迎する明るい雰囲気がある。その中央ほどに一本だけ生えている木が「ここで休んでいきなさい」と言わんばかりに泰然自若と構えていて、俺は一目でここが気に入った。
ここからは屋敷の屋根はかろうじて見えるものの、その逆は難しそうだ。
なんだか秘密基地を発見したときのように、とうの昔に失ったはずの少年心をくすぐられる。
「気に入った?」
呆けて見入っていた俺に、ロイドが声をかける。
その手にはまだ殺虫剤が握られていたが、屋敷の外に出てからはその表情に緊張の色はない。
「うん。良い場所だね」
秋の冷たさが混じる風が吹き抜け、心地良く身体を通り過ぎて行く。
上を見上げれば澄んだ青色をしていて、ぐっと空に吸い込まれてしまいそうな気分になる。
このまま、空に吸い上げられてしまえたら。
そうしたら、俺は一体どうなるのだろう。
今度こそ、完全に消えることができるのだろうか。
「――ヒイロ!」
後ろから肩を強く掴まれ、慌てて振り返る。
「どうしたの? ゴキでも見つけた?」
聞いたことのない声を出すものだから、ゴキブリを見つけてしまったのかと思って苦笑しながらに問う。しかしロイドの手に殺虫剤はなく、今はむなしく地面に転がっていた。
「一人で行ったら、駄目だよ?」
「……? うん、行かないよ」
俺がどこに行くのを危惧したのかは理解できなかったが、俺はそう断言した。あのアパートはもう引き払われてしまっているのだろうし、実家に助けを求める気なんて毛頭ない。今の俺に許された居場所は、ここしかないのだ。
「ヒイロ、こっち」
肩から手を離したと思うと、するりと手を掴んでロイドは誘導する。向かう先はこの広場の中央にある木だ。
「座って」
「うん」
木の幹を背もたれにするように二人で並んで座る。手は、繋いだままだ。
「眠いのなら、寝てても良いよ。今朝はあまり眠れなかっただろう?」
僕はここにいるから、と指を絡めながら、ロイドは言う。
「ここなら、怖い夢もみないと思うから」
「……」
すぐ隣にいるのに、どうしてだろう、ロイドの表情を見ることはできなかった。
寝不足を見透かされていたことが恥ずかしかったわけではない。
ロイドがじっと俺の顔を見つめていることはわかっていた。
けれど、その愛情も心配も、俺は真正面からは受け取れない。
「じゃあ、少し寝る。肩、借りて良い?」
「もちろん」
許可を得てから、目を合わせないままに身体を傾けてロイドに寄り掛かる。
ロイドの隣は温かく、このまま目を瞑ってしまえばすぐに眠れそうな気もした。
意識が僅かに揺れて、ロイドにはあのことを伝えておきたい衝動に駆られた。
「……今から話すことは、ただの寝言だからね」
絡めた指がびくりと微かに震えた。ロイドのほうかと思ったけれど、違う、震えているのは俺のほうだ。
ロイドはなにも言わない。
あくまでもこれは、俺の寝言だからだ。
「昨日の晩に、少し話したよね、俺のこと。だけど、まだ話してないことがあってさ」
怖い。
けれど、ロイドには知っておいてもらいたかった。古傷だらけのこの男の身体に、俺からの傷をひとつだけで良いからつけてやりたかったと言ったほうが良いかもしれない。
ロイドは嫌がるだろうか。
だけど、気持ちはもう抑えられなかった。
誰かからこんなに優しくされたのは、初めてだったから。
「俺、十年くらい前に、自殺しようとしたことがあるんだ」
「っ」
隣で、本当に小さくだが、息を呑む音が聞こえた。
しかし俺は構わず続ける。独り言を。寝言を。
「昨日も話した通り、俺はいたって普通の人間だよ。普通の家庭に生まれて、普通に義務教育を終えて、高校に通って、大学を出て、就職した。だけどこの『普通』ってのが、両親にあらかじめ用意されていたもので、俺自身が選択したものは、なにひとつない」
天才児でもなんでもないのに、昔から上等過ぎる教育を受けてきた。
中学校までは、家から通える範囲で一番評判の良い学校を。
高校は、県内で一番学力の高いところを受験しろと言われ、それ以外を選ぶというなら高校進学は諦めろと言われた。
「それでも、高校に入学するまでは俺だってそれを疑問に思うこともなく、当たり前のように受け入れていたんだ。これがおかしいことなんだって気づいたのは、文理選択をしなきゃならなかった高一の秋くらいのことでさ」
担任から文理選択の話が出た際、俺はこれまで通りに両親に相談した。否、あれは相談ではなくお伺いを立てていたのだと、今になって思うけれど。
貴方方の息子さんはどういった進路を選択すれば、貴方方の評判が上がりますか?
そういうお伺い。
「周りの友達が、将来はこういう職業に就きたいから文系とか、理数科目が得意だから理系とか、自分の意思で進路選択していることに、俺はすごく驚いた。それまでずっと、進路っていうのは親の指示に従うだけのものだと思ってたから」
だから、俺はこのときに自覚してしまった。
自分がいかに空っぽであったかということを。
自分がいかに精神的奴隷であったかということを。
中学時代の彼女に「あんたといてもつまんない」と言われて別れたことを、ふと思い出す。
「そのときの文理選択は、結局親の言う通りにしたけど。でもこれがきっかけで、俺にも個性ってものが欲しいと思ってしまった」
そもそもが求めるような代物でないということは、すぐに気がついた。
あれらは求めて手に入れるものではなく、周囲の環境によって自然と身に着くものなのだから。
それでも、求めずにはいられなかった。
空っぽのままの人生は、嫌だった。
「ある日、なんとなく観ていたテレビで、日常的に女装している人の特集をやってたんだ。インタビュアーは『どうして女装するんですか?』とか『どれくらいの頻度で女装を?』とか、とにかく『男が女の格好をするなんて非常識にもほどがある。なにを考えてそんなことをするのか』って考えを前提にインタビューしてた。だけどその人は笑顔で『それが僕の個性だからです』って答えていて、俺、それが格好良いと思ったんだ。綺麗な恰好をしている男の人を、格好良いって。俺もあんな風になりたいって、そう思った」
それは個性の一例であって、俺の個性ではない。
頭では理解していたが、そのさまを真似せずにはいられなかった。
女装をすればなにか個性を見い出すことができるかもしれないと思うと、かつて経験したことのないほど期待で胸が高鳴るのを感じた。
「化粧道具とかウィッグとか洋服は、全部ネットで買ったんだ。最初のうちは自分の部屋でいろいろやって、自信がついてからは知り合いなんて一人もいないような遠い場所まで女装道具一式を持って出かけて、トイレで着替えて街を散策してみたりした。誰も俺が女装している奴だなんて思ってなかっただろうし、何回かはナンパされたりもした」
女装することが個性かどうかはわからない。
けれど、親に言われた通りのことしかしてこなかった俺にとって、この行為はスリルに満ちていて、それだけでも十二分に楽しかった。
「でも、そんなの長くは続かなくて。高三の秋くらいだったかなぁ、午前上がりの日があったから、学校から帰ってきてから部屋でメイクの研究をしてたんだけど、メイク落としを切らしちゃってたのを忘れてて。仕方ないから母親のを借りようと思ってリビングに行ったら、丁度帰って来た母親とはち合わせて、それで、女装がバレちゃったんだ」
――なに、してるの?
あのときの母の顔は、今でもはっきりと覚えている。
驚愕と絶望。
それと、きっとなにかの冗談だろうという半笑い。
それらが入り混じった、複雑な表情だった。
「学校のイベントで女装するから、その練習。そう言ったら母親は、わかりやすく安心してた。そして、こう続けたんだ――『日色の頭がおかしくなっちゃったかと思って、母さん、びっくりしたじゃない。二度と家でやらないでよね、そんなこと。気持ちが悪い』って。『妙な噂が立ったら、父さんも母さんも恥ずかしくて外に出られなくなっちゃう』とも言ってた」
それで俺はようやく気づけた。
この人達は最初から俺のことなんて見てすらいなかったんだと。
彼らにとって大事なのは、世間からの評価で、俺はその道具でしかない。
道具に意思も個性も必要ない。
そんなものは気持ち悪いから、不必要なのだ。
「考え始めたら、もう止まらなかった。両親がここまで俺を育ててくれたのは、愛情や優しさから生じるものじゃなくて、ただの義務感から生じる心配でしかなかったんだって思うようになった。あの人達の義務感で生かされてることになんの意味があるんだろうって思ったら、もう、止まらなくなった。メンタル弱いなって自分でも思うけど、だけどそれくらい俺には自分ってものを持ってなかったんだ」
この先、俺が自発的にやろうと思ったことは、全部この人達に否定されて潰される。
その漠然としていながらに確定的な未来が、俺を殺すのだ。
なにもかもが馬鹿らしく思えてきて、女装道具は全部捨てた。
ただただ両親の為だけに消費されていく時間に、生きることに、嫌気が差して。
そして。
「このままあの人達の道具でいるのが嫌で、だから、死のうと思った」
指示された通りの大学を受けて合格を決めた、そのあとで。
もう良いかな、と思った。
「七輪と睡眠薬を使って、練炭自殺。決行日は、家に誰も居ない平日の昼間にした。だけど七輪なんて使ったことなかったから、火をつけるのに手こずっちゃって。やっと火が点いて睡眠薬が効いてきたってときに、母親に見つかって未遂に終わったんだ」
その瞬間のことは、記憶が曖昧だけれど。
気がつけば病院へ搬送されていて。
目を覚ました第一声が、あの金切り声だった。
「『死ぬことは迷惑だから、二度とするな。お前には生きる責任がある』って、しこたま怒られた。俺が俺でなくとも困らないけど、あの人達にとって息子が自殺することは、とても困ることなんだ。だから俺は死ねない。ずっとずっと、あの人達の自慢の息子である為に、死ぬことは許されないんだって、そう思ってた」
大学に入学してからも、それは変わらなかった。
そこそこ良い成績を取り続けていれば、その間だけでも俺は人間扱いされるのだとわかっていた。
そうして両親に言われるままに指定の企業にエントリーして、内定を決めた。
ブラック企業だったら、考える暇もないまま馬車馬のように働かせてもらえただろうに、俺の入った会社はそれなりに待遇の良い会社で、毎日のように不必要な個性について悩まされることとなった。
――鵜久森君、私は君の考えが知りたいんだ。
――君にもそろそろ、責任ある立場に立ってもらわないとね。
こんな空っぽの俺に考えを求めたり指示されるなんて、あまりに空虚だと思った。
辞めたい。死にたい。
そんな考えが頭を過りつつ、けれど結局もう一歩の勇気が出ずにずるずると日常を続けていたそんなとき――ロイドと出会ったのだ。
「鵜久森日色に居場所を与えてくれたのは、ロイドが初めてだった。ロイドが初めて、俺という個人を求めてくれた。俺なんかに、優しく接してくれた。それだけで、俺はとっても嬉しかったんだ」
空っぽの人間に、俺だけの役割をくれた。
無個性の人間に、優しく接してくれた。
そしてロイドは、いつか俺に死も与えてくれるのだろう。
「ありがとう、ロイド。本当に、あんたには感謝してる」
次はいつここに来るのかわからない男に、だからこれだけは言っておきたかった。
「でも、ヒイロ、それって――」
ロイドがなにかを言いかけて、俺が咄嗟にその口を塞ごうとした、そのときだった。
「ボスー! 鵜久森様ー!」
と、ベレントさんの声がした。
ぱっと顔を上げると、屋敷のほうから小走りでベレントさんがやって来ていた。その両腕には、冗談みたいに大きなハンバーガーショップの袋が抱えられている。
「ご苦労、ベレント。それで、屋敷の様子は?」
ベレントさんがこちらに着く前にゆっくりと立ち上がっていたロイドは、彼が到着すると労いの言葉をかけた。それを受けたベレントさんはというと、息切れのいの字もない様子で深呼吸するように、はい、とだけ言って話を続ける。
「今朝、カルテーリが発見した個体については抹殺が完了しています。また、清掃業者への依頼はしないということでしたので、今ほどマクブライドが購入してきた燻製式の殺虫剤を屋敷内にまんべんなく散布中です。作戦完了時刻は二時間後の十四時頃を予定しています」
「わかった」
ベレントさんによる的確且つ簡素な報告を受けて頷くロイドは、紛れもなく上司然としていて、俺に見せていた表情はあくまでもプライベート用のものだったのだと気づく。
「また、殺虫剤散布中につき厨房も使えませんので、昼食はボスのリクエスト通り、ハンバーガーを買ってきました。こちらです」
「ああ、ありがとう」
その大き過ぎる袋は、まさか二人分なのかと戦慄する俺を余所に、ベレントさんは、では、と踵を返すとあっという間に行ってしまった。
ロイドはその頼もしい背中が見えなくなるまで見送ると、にこりと微笑みながらに俺のほうを向く。
「ヒイロ、もう昼食の時間だ。これ、食べよう」
「ああ……、うん」
俺の楽しくもない身の上話を一方的に聞かされた直後に、いつも通り部下に対応し、次に見せた表情はいつも通りのそれだ。その切り替えの早さには流石と言うほかなく、俺のほうが呆気に取られてしまうほどだった。
「なんだか無性にハンバーガーが食べたくなって、ついでに買ってきてもらったんだ。ヒイロ、どれにする?」
そう言って袋から次々に出されるハンバーガー達――その数、実に十個。
「一応訊くけど、ロイドは何個食べるつもり?」
「五個かな」
日本のハンバーガーは小さいから、などと付け足すが、違う、そういう問題じゃない。
「いや、あの、ロイドさん? 俺、ハンバーガーは一個で十分だからね?」
続けざまに出されるポテトの山とLサイズのドリンクを視界の端に捉えながら、注釈する。
「えっ? それだけじゃあ足りないだろ? 遠慮しなくて良いんだよ、ヒイロ」
「遠慮はしてない。頑張っても二個が俺の限界」
「ええ……? 君、本当に男かい……?」
信じられないとでも言いたげな顔つきだったが、それはこっちの台詞である。胃袋宇宙なのかよ。
「もしかして、アメリカの出身?」
どうにかロイドを説得し、俺の分は二個で納得してもらい、揃ってハンバーガーにかぶりついてから、ふとそんなことを思った。母国語は英語なのだろうけれど、見た目は日系だし、公用語が英語の国はアメリカやイギリス以外にも存在するから、俺の中でロイドの国籍はしばし不明のままだったのだ。しかし、これだけの量のハンバーガーを当然のように買って来るのは、先入観もあるが、アメリカ人かなと思ったのである。
「そうだよ」
ロイドはそう頷いて、大きく一口頬張る。
「生まれはミシガン州のデトロイト。でも子供の頃に組織に雇われて、以降はニューヨークだね」
「ふうん」
アメリカの地理関係がいまいちピンと来ない俺は、ロイドの言う地名がただの記号として通り過ぎていく。
「やっぱり向こうのハンバーガーって大きいんだ?」
「これより大きくて厚いかな。でも日本限定メニューも好きなんだ。チキンタツタとか」
話しながら、もう一個目を平らげてしまったらしいロイドは、包み紙を丸めて袋に突っ込むと、流れるように二個目を手に取りかぶりついた。
「実を言うと、今まで日本ってあんまり好きじゃなかったんだ」
と。
相変わらず口いっぱいに頬張りながらではあるが、ロイドは言う。
「食べ物は美味しいけど、仕事があるときだけしか来ないからじっくり味わう時間はなかったし、驚くほど美味しいと思ったこともなかった。それに店に入ると、日系の見た目だから当然のように日本語で話しかけられて、日本語ができないことを伝えると嫌そうな顔をされたこともある。だから、余計に日本語を覚えようとは思わなくなった。何度日本での仕事を受けて日本に来ても、だ」
そう話すさまは、昨晩、古傷にまつわるエピソードを語ってくれたときのように穏やかなそれで、決して俺を責めているわけではないというのはわかっていた。
けれど、知らずのうちに、俺はロイドの嫌がることをさせていたというのが、たまらなく苦しかった。間を繋ぐためにハンバーガーを頬張るが、味がしない。
「だけど、今はそれを後悔してる」
「え?」
「日本で仕事をしていたらヒイロに会えた。ヒイロと日本語で話すのは楽しいし、ヒイロはいろんな言葉を教えてくれる。ヒイロと出会って、僕は日本が、日本語が、好きになれた」
だから、ヒイロ。
二個目を食べ終えたロイドは、くしゃりと包み紙を丸めながら、言う。
「君はもう少し自分に自信を持って良いよ。こんなにも僕に変化を与えてくれた君が、空っぽなわけがないんだから」
「……」
その真っ直ぐな言葉に嘘偽りがないことは明らかだった。
彼は心の底からそう思って、俺に伝えてくれている。
そうであると、わかってしまえる。
ああ、くそ。
どうして俺は、彼の愛人という立場なのだろう。
永久に彼の一番にはなれないという現実が、胸を抉る。
「ヒイロ?」
不思議そうにのぞき込んでくるロイドに目頭に浮かぶ涙は見られまいとして、慌てて目元を袖で拭い、顔を向けた。
「うん。ありがとう」
声は情けなく震えていたけれど、それでも、俺は続けた。
「俺、空っぽじゃなかったんだな。嬉しい」
自覚してはいけないと思っていたけれど、もう、限界だった。
俺は、ロイドのことが好きなんだ。
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