28 / 125
28 観察って……私は実験動物か何かかしら!?
しおりを挟む結婚式を終えてすぐの事。
アーデルハイドは新たな事業を始めることにした。
「新しい船を作ります!」
「なんだ?漁船か?」
「違います。漁船は欲しいけど」
「欲しいんだな」
現在、島で取れる魚は島の周りで取れる魚が多かった。
もっと船を作って沢山の魚を効率よく採りたい所だが、一番の目的は違う。
「私達はこれまで領地拡大に貢献してきました」
「まぁ…」
「でも、まだ足りません!島の住民が食べていくだけの食料を確保していても…生活の質を向上する為に必要なものは沢山あります!」
力説をするアーデルハイドに頷く。
確かに食料は十分あるが、平和ならまだいいが、万一の事がある。
「物資を届ける船が一日二回とは心もたないし、親方達が船を増やしてくれてますが…やっぱり大きくて頑丈な船が欲しいです」
「例えば?」
「国内だけでなく他国も渡れるような船。海賊船にも負けないような装備付きで荷物と宿泊付きが望ましいですね」
前世の知識もフル活用して貿易をして、船による輸入も考えようと思った。
「だが、国産に拘っていただろ?」
「ええ、肉魚を長期保存する方法はあります。問題は果物に野菜です」
果物や野菜を輸入する時は決まって消毒液をかけてばい菌を消毒しなくてはならない。
菌が国から国へと移る可能性があるからだ。
「私は果物に薬品は使いたくありません!でも、輸入するには必要です」
「そればら、どうするんだ?魔石で凍結させるか?」
「そんなバンバン使う程ありません。魔石を買うお金があるなら、他に使います」
魔石は貴重で、値段も高い。
野菜を魔石で凍結するだけの量を手に入れるにはどれだけ費用が必要になるか。
「島では診療所すらないわ。万一の時の事を考えれば死活問題よ」
「ああ…」
「後、文字の読み書きできる人も少ない。特に女性」
何処の国でも同じで、特に辺境地に住む女性は幼少期から家の手伝いをして嫁に行けば家事と育児に農業の手伝いをして読み書きを学ぶこともない。
「女性の地位が低いのは、環境もあると思うの。本来なら男性よりも女性の方が柔軟で臨機応変に対応できるわ」
「確かに…」
男は仕事だけしているが女は育児に家事に、夫の世話までしている。
フレディーは男尊女卑の考えは全くない。
ケニスワールが、かかあ天下だったのもあるが、女性だからと言って下に見たりしなかった。
「この島はまだいいわ。でも、他所は違う。フレディーのように、内助の功をしてくれる男性はあまりいないの」
「ナイジョ?俺は男だぞ」
「違うわ、俗語よ。身内を陰で支えてくれる素敵な事よ。大黒柱を支える重要な役目を持つ人よ」
簡単に説明すると、理解するフレディーは何時も察しが良かった。
しかし、本当にその役目をできているのかと思う時があるのだが。
「私がここまでトントン拍子で上手くいっているのはフレディーのおかげよ」
「え?」
「私が今、すっごく幸せなのはフレディーのおかげ」
時折自信がないフレディーだったが、そん不安はすぐに吹き飛ばされた。
「そっ…そうか。俺はナイジョノコウができているんだな」
「ええ、貴方は誰よりも内助の功を果たしているわ。でも、そんな男性は稀なのよね」
貴族時代を思い出すと余計に思う。
妻を道具にしか思ってない男は多く、元両親は恋愛結婚であるが、互いに助け合って支えあって生きているのかと聞かれればそうではない。
今は侯爵家の恩恵と、ランフォード家の優秀な使用人のおかげでなんとかなっているだけだ。
もし彼らが解雇されたらどうなるか。
不幸になった時こそ、夫婦の絆が試されることになる。
とは言え、アーデルハイドにとって既に他人事だった。
祖国でどうなろうとも知った事ではない。
既に切り捨てていた。
0
お気に入りに追加
1,332
あなたにおすすめの小説

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

母の中で私の価値はゼロのまま、家の恥にしかならないと養子に出され、それを鵜呑みにした父に縁を切られたおかげで幸せになれました
珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたケイトリン・オールドリッチ。跡継ぎの兄と母に似ている妹。その2人が何をしても母は怒ることをしなかった。
なのに母に似ていないという理由で、ケイトリンは理不尽な目にあい続けていた。そんな日々に嫌気がさしたケイトリンは、兄妹を超えるために頑張るようになっていくのだが……。
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる