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69 ……それ全部食べ終わってから言う!?
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「…………はぁ」
「ため息か? 幸せ逃げるぜー」
「いいえ、適度なため息は血流を促し、自律神経のバランスを整え、リラックス出来る効果があるんだ。その考え方は間違っていると思うよ」
「正論の暴力やめろ……たくっ、そんなんだから立花にも振られるんじゃねえの?」
うっ…………! 今の僕には効果抜群の一言。前野くん改めシローくんは、友人になってからも僕に容赦がない。
そこが彼のいい所だと思うし僕は好ましいと思っているけれど。……今みたいに弱っている時はもう少し優しくして欲しいよ。
「で? 今度はなんだよ。もう新学期だってのに、まさか、まだ夏休み前のことを引きずってるわけじゃねえよな?」
「さすがに僕もそこまで粘着質じゃないよ」
「どーだか。お前この前だって俺が言ったこと一語一句違わず覚えてて、根に持ってたじゃんか」
「失礼な、記憶力がいいと言って欲しいね」
「はいはい」
僕は正確に記憶を保持しているだけで、別にいつまでも恨んで忘れないでいるわけじゃないんだ!
だからそんな陰湿な表現で僕の唯一の長所を貶すのはよして欲しい。ネガティブキャンペーンもいいところだよ。
「じゃあ今回はなんだよ、どうせ原因は立花だろ?」
「……そうだけど。僕だって、彼女以外のことで悩んだりもするさ」
「へー、例えば?」
「……えーっと、そうだなあ」
突然のシローくんからの無茶振りに、僕は頭をフル回転させ最近の出来事を思い出す。あ、そういえば……! すぐさま思いついたことをシローくんに伝える。
「最近、瑠璃の感情の起伏がおかしいとか」
「元々感情表現豊かな子だろ?」
……そんな僕を過保護な兄を見るような目で見るのはやめてくれよ。瑠璃は確かに可愛いし大事だけど、僕はそんなに過保護じゃないはずだ。
「いや、確かにそうなんだけどね。……それにしても、最近の瑠璃はおかしいんだ。キラキラした瞳で僕を見つめて、何か言いたそうにしているかと思えば、悲しそうに落ち込んで項垂れていたり」
「……ふーん? 他には?」
「え、他?」
どうやら瑠璃の話は彼の中では悩み事に認定されなかったようで、他の案を催促される。
……正直ぱっと出てこないんだよなあ。でもそれじゃシローくんの言葉を認めることになる。僕が彼女のことばかり思い悩んでいると思われるのは心外だ。必死に記憶から辿る。……瑠璃。ああ、そうだ。
「薫子が兄さんと喧嘩しているのか、顔を見せにこないこととか? まあこれは瑠璃に言われて気づいたんだけどね」
「……ん? 薫子って伊集院薫子か?」
「そうそう。兄さんの婚約者候補で、僕の幼馴染み」
「……真白さんの? おかしいな、俺が聞いた話とはちょっと違うんだけど」
どう聞いたのかわからないけど、噂は所詮噂。きっと根も葉もないんだろう。特に興味もないので一々内容までは聞かない。
「……さっきから聞いてれば、今言ったの全部悩み事つーより心配事だろ。やっぱり、お前が悩むのは立花だけなんだな」
「……いや、そんなことは、」
それでも食い下がる僕にシローくんは「わかったから早く話を聞かせろよ」と言葉を被せる。……僕の話を最後まで聞いてよ!
話は数日前に遡る。
***
「お姉様! 青葉お兄様と仲直りしたというのは本当ですか!?」
「仲直り……? というほど、元々親しくもなかったけどね。久しぶりに口論にならずに話せたってだけよ」
それでも、私はすごく嬉しかったんだけどね。
数日前。例のごとく私はお父様の付き添いでパーティーに参加した時のことだ。
挨拶しなければいけない最低限の人にだけ挨拶をして、子どもということもあって早々に解放して貰った私が毎回向かうのはスイーツコーナー。
今日は道が混雑していて来るのが遅れたのでもう人気のケーキはないかもしれないと足早に目的地へ目指す。
けれども、どうかまだ残っていますようにという私の願いは呆気なく散り、ケーキはほとんどなくなっていた。……幸いにもフルーツはまだ充実しているが。
ここの会社の製造しているケーキすごい好きだったんだけどなあ~……。
店舗で売っているケーキならまた買えば食べられるかもしれないが、ここの社長さんはパーティーの度に新商品の試作品を出し、減るのが早かったり好評だったものを新商品として出すので有名なお方だ。
選ばれた新商品は数ヶ月後にお目にかかれるかもしれないが(それでも数ヶ月待たねば食べられない)、選ばれなかったケーキ達とは永遠の別れになる。
だからこのパーティーだけは毎回楽しみにしてたんだけどなあ……瑠璃ちゃんにも今日のパーティーが楽しみだと話していたくらいにはね。……はあ、と諦めかけた瞬間だった。
「……よかった、やっと会えた」
「一条くん!?」
「やあ、立花雅さん。これ、運ぶの手伝って貰えないかな?」
両手いっぱいにケーキを持った『一条青葉』に話しかけられたのは。
***
「……本当に、いいんですか? わたくしひとりで全て頂いちゃって」
「うん、僕は甘いもの苦手だしね。あ、でもこのコーヒーゼリーは気になるかも」
「わたくしコーヒーは苦手ですのでどうぞ召し上がってください」
「そう? じゃあ遠慮なく」
元々あなたが取ってくれたものですしね。どうぞどうぞ。
甘い物苦手なこの人が両手いっぱいにケーキを抱えて現れた時には驚いたけれど。今日瑠璃ちゃんに私がこのパーティーに参加すると聞いていたのに、いつまで経ってもスイーツコーナーに来ないから、何かあったのだろうと先に全てのケーキを取ってくれていたのだ。
意外と気の利く男だな、さっすがあの乙女ゲームのメインキャラ『一条青葉』。
キャッチコピーなんだったっけ?
ああ、『錆び付いた心を溶かすのは、アナタの愛』だ。全然錆び付いてなんかないよ、青葉。錆一つないキラキラな心ですよ。さっきから後光が差してるように見えるもん、私には。仏様かな?
「君の好みを知っていればよかったんだけどね。よくわからなかったからとりあえず全ての種類給仕さんに頼んで取ってもらったんだ。……そしたらこんなにたくさんになっちゃったんだけど」
「……一条くんっ!!」
今日の彼は、仏様に見えたり神様に見えたりする。どうしたのいきなり。こんなふうに優しくされると、逆に怖いんだけど。……ケーキに罪はないから頂くけどね?
「……美味しいですか?」
「ええ、とっても! ありがとうございます、一条くん!」
「……じゃあ、この前僕が言ったこと、許してくれるかな?」
……この前? 紫芋のタルトを食べながら彼の言葉の真意を探る。この前って、あの青葉からの呼び出しよね、多分。
「あれは完全に僕の失言だった。許して欲しいんだ」
そう言って申し訳なさそうにする青葉を見て、私は彼の言っている失言とやらを思い出す。
『どうせ君のことだから誘ってくれるパートナーもいないだろうと思って。そんな君のこと、笑い飛ばそうと思ったからだよ』
……思い出したら結構酷いこと言われてるな、私!?
なんか少し腹が立ってきたな。……でも、ケーキ美味しいし。
いやいや、それ以外にも今まで嫌味たくさん言われてきたしなあ。可愛げないとか糖分過多とか。……まあ、今回これらを食べられるのも彼のおかげだし。
「わたくしも、あの時は赤也のことを言われて感情的になりすぎましたわ。すみませんでした」
「いや、そんな、許して貰えるなら僕はそれでいいんだ」
私、委員長と話してる時に思ったんだけど。青葉にとって私が女性でないということは、今までの嫌味の応酬も彼にとっては助言のつもりだったのかもしれないなって。
……そう思うと、そうとしか思えなくなるから不思議だ。
だって、前野くんの時も、青葉って悪気はなく失礼というかデリカシーがないというか……。うん、元々そういう人だって知ってたのに、ムキになって毎回怒ったりして……私も幼稚ね。
「実は、あれからわたくしも考えたんですよ。一条くんの言うことは、……悔しいけれど一理あるなって」
こういう機会に、積極的に出会いを求めていかないから私ってダメなのよね。本当、青葉の言う通りよね。
当日パートナーのいない殿方に勇気を出して話しかけてみようかな、なんて生ぬるい積極性ではダメ。もっと積極性出して行かなきゃ!
「実は赤也だけじゃなく、ひとりで参加する予定のクラスメイトや元クラスメイトのご子息とも踊ろうと思っていて……それに、当日は知らない方からのお誘いも積極的に受けようと思ってるんです!」
実はダンスパーティーが始まる前も4年生は上級生ということもあり、優先的にダンスをしていいのだ。
もちろん、本番に備えて練習するペアも入れば、ペアを組んだはいいけどベストカップルまでは目指してないというペアまで、様々な子息令嬢達がローテンポの曲に合わせて踊る。
去年の感じだと、その間はあまりかしこまらず、皆おしゃべりしながら楽しそうにしているイメージ。
本当はこの時間も去年同様にケーキでも食べてまったりしていようと思ったんだけど。青葉の言葉で目が覚めたわそんなんじゃダメね。
「まあ、誘って頂けたらの話なんですけどね」
「……君ならきっと、たくさんの子息から誘われるよ」
「そうだといいんですけどね。……あ、パートナーのいない、一条くんのご友人の麗氷男子の方とかいらっしゃいませんか? よろしければ紹介してください」
「……うーん、考えておくよ。……ハハ」
……って、青葉もなんか困ってるし!
そうよね。……最初から他力本願じゃ、ダメよね。ひとりの方を見つけたら、私から誘えばいいのよ。人見知りとかしてる場合じゃないわ。
私ったら、もう、こういうところがお父様に消極的だと思われてしまうのね。たまには自分から行動しなくちゃ!
「ところで、ダイエットはよかったの?」
……それ全部食べ終わってから言う!?
悪気はないとわかっていても、やっぱりわざとなんじゃないかと思わざるを得ないタイミングだったので、かなり上がった彼の好感度を少しだけ下げる私なのであった。
「ため息か? 幸せ逃げるぜー」
「いいえ、適度なため息は血流を促し、自律神経のバランスを整え、リラックス出来る効果があるんだ。その考え方は間違っていると思うよ」
「正論の暴力やめろ……たくっ、そんなんだから立花にも振られるんじゃねえの?」
うっ…………! 今の僕には効果抜群の一言。前野くん改めシローくんは、友人になってからも僕に容赦がない。
そこが彼のいい所だと思うし僕は好ましいと思っているけれど。……今みたいに弱っている時はもう少し優しくして欲しいよ。
「で? 今度はなんだよ。もう新学期だってのに、まさか、まだ夏休み前のことを引きずってるわけじゃねえよな?」
「さすがに僕もそこまで粘着質じゃないよ」
「どーだか。お前この前だって俺が言ったこと一語一句違わず覚えてて、根に持ってたじゃんか」
「失礼な、記憶力がいいと言って欲しいね」
「はいはい」
僕は正確に記憶を保持しているだけで、別にいつまでも恨んで忘れないでいるわけじゃないんだ!
だからそんな陰湿な表現で僕の唯一の長所を貶すのはよして欲しい。ネガティブキャンペーンもいいところだよ。
「じゃあ今回はなんだよ、どうせ原因は立花だろ?」
「……そうだけど。僕だって、彼女以外のことで悩んだりもするさ」
「へー、例えば?」
「……えーっと、そうだなあ」
突然のシローくんからの無茶振りに、僕は頭をフル回転させ最近の出来事を思い出す。あ、そういえば……! すぐさま思いついたことをシローくんに伝える。
「最近、瑠璃の感情の起伏がおかしいとか」
「元々感情表現豊かな子だろ?」
……そんな僕を過保護な兄を見るような目で見るのはやめてくれよ。瑠璃は確かに可愛いし大事だけど、僕はそんなに過保護じゃないはずだ。
「いや、確かにそうなんだけどね。……それにしても、最近の瑠璃はおかしいんだ。キラキラした瞳で僕を見つめて、何か言いたそうにしているかと思えば、悲しそうに落ち込んで項垂れていたり」
「……ふーん? 他には?」
「え、他?」
どうやら瑠璃の話は彼の中では悩み事に認定されなかったようで、他の案を催促される。
……正直ぱっと出てこないんだよなあ。でもそれじゃシローくんの言葉を認めることになる。僕が彼女のことばかり思い悩んでいると思われるのは心外だ。必死に記憶から辿る。……瑠璃。ああ、そうだ。
「薫子が兄さんと喧嘩しているのか、顔を見せにこないこととか? まあこれは瑠璃に言われて気づいたんだけどね」
「……ん? 薫子って伊集院薫子か?」
「そうそう。兄さんの婚約者候補で、僕の幼馴染み」
「……真白さんの? おかしいな、俺が聞いた話とはちょっと違うんだけど」
どう聞いたのかわからないけど、噂は所詮噂。きっと根も葉もないんだろう。特に興味もないので一々内容までは聞かない。
「……さっきから聞いてれば、今言ったの全部悩み事つーより心配事だろ。やっぱり、お前が悩むのは立花だけなんだな」
「……いや、そんなことは、」
それでも食い下がる僕にシローくんは「わかったから早く話を聞かせろよ」と言葉を被せる。……僕の話を最後まで聞いてよ!
話は数日前に遡る。
***
「お姉様! 青葉お兄様と仲直りしたというのは本当ですか!?」
「仲直り……? というほど、元々親しくもなかったけどね。久しぶりに口論にならずに話せたってだけよ」
それでも、私はすごく嬉しかったんだけどね。
数日前。例のごとく私はお父様の付き添いでパーティーに参加した時のことだ。
挨拶しなければいけない最低限の人にだけ挨拶をして、子どもということもあって早々に解放して貰った私が毎回向かうのはスイーツコーナー。
今日は道が混雑していて来るのが遅れたのでもう人気のケーキはないかもしれないと足早に目的地へ目指す。
けれども、どうかまだ残っていますようにという私の願いは呆気なく散り、ケーキはほとんどなくなっていた。……幸いにもフルーツはまだ充実しているが。
ここの会社の製造しているケーキすごい好きだったんだけどなあ~……。
店舗で売っているケーキならまた買えば食べられるかもしれないが、ここの社長さんはパーティーの度に新商品の試作品を出し、減るのが早かったり好評だったものを新商品として出すので有名なお方だ。
選ばれた新商品は数ヶ月後にお目にかかれるかもしれないが(それでも数ヶ月待たねば食べられない)、選ばれなかったケーキ達とは永遠の別れになる。
だからこのパーティーだけは毎回楽しみにしてたんだけどなあ……瑠璃ちゃんにも今日のパーティーが楽しみだと話していたくらいにはね。……はあ、と諦めかけた瞬間だった。
「……よかった、やっと会えた」
「一条くん!?」
「やあ、立花雅さん。これ、運ぶの手伝って貰えないかな?」
両手いっぱいにケーキを持った『一条青葉』に話しかけられたのは。
***
「……本当に、いいんですか? わたくしひとりで全て頂いちゃって」
「うん、僕は甘いもの苦手だしね。あ、でもこのコーヒーゼリーは気になるかも」
「わたくしコーヒーは苦手ですのでどうぞ召し上がってください」
「そう? じゃあ遠慮なく」
元々あなたが取ってくれたものですしね。どうぞどうぞ。
甘い物苦手なこの人が両手いっぱいにケーキを抱えて現れた時には驚いたけれど。今日瑠璃ちゃんに私がこのパーティーに参加すると聞いていたのに、いつまで経ってもスイーツコーナーに来ないから、何かあったのだろうと先に全てのケーキを取ってくれていたのだ。
意外と気の利く男だな、さっすがあの乙女ゲームのメインキャラ『一条青葉』。
キャッチコピーなんだったっけ?
ああ、『錆び付いた心を溶かすのは、アナタの愛』だ。全然錆び付いてなんかないよ、青葉。錆一つないキラキラな心ですよ。さっきから後光が差してるように見えるもん、私には。仏様かな?
「君の好みを知っていればよかったんだけどね。よくわからなかったからとりあえず全ての種類給仕さんに頼んで取ってもらったんだ。……そしたらこんなにたくさんになっちゃったんだけど」
「……一条くんっ!!」
今日の彼は、仏様に見えたり神様に見えたりする。どうしたのいきなり。こんなふうに優しくされると、逆に怖いんだけど。……ケーキに罪はないから頂くけどね?
「……美味しいですか?」
「ええ、とっても! ありがとうございます、一条くん!」
「……じゃあ、この前僕が言ったこと、許してくれるかな?」
……この前? 紫芋のタルトを食べながら彼の言葉の真意を探る。この前って、あの青葉からの呼び出しよね、多分。
「あれは完全に僕の失言だった。許して欲しいんだ」
そう言って申し訳なさそうにする青葉を見て、私は彼の言っている失言とやらを思い出す。
『どうせ君のことだから誘ってくれるパートナーもいないだろうと思って。そんな君のこと、笑い飛ばそうと思ったからだよ』
……思い出したら結構酷いこと言われてるな、私!?
なんか少し腹が立ってきたな。……でも、ケーキ美味しいし。
いやいや、それ以外にも今まで嫌味たくさん言われてきたしなあ。可愛げないとか糖分過多とか。……まあ、今回これらを食べられるのも彼のおかげだし。
「わたくしも、あの時は赤也のことを言われて感情的になりすぎましたわ。すみませんでした」
「いや、そんな、許して貰えるなら僕はそれでいいんだ」
私、委員長と話してる時に思ったんだけど。青葉にとって私が女性でないということは、今までの嫌味の応酬も彼にとっては助言のつもりだったのかもしれないなって。
……そう思うと、そうとしか思えなくなるから不思議だ。
だって、前野くんの時も、青葉って悪気はなく失礼というかデリカシーがないというか……。うん、元々そういう人だって知ってたのに、ムキになって毎回怒ったりして……私も幼稚ね。
「実は、あれからわたくしも考えたんですよ。一条くんの言うことは、……悔しいけれど一理あるなって」
こういう機会に、積極的に出会いを求めていかないから私ってダメなのよね。本当、青葉の言う通りよね。
当日パートナーのいない殿方に勇気を出して話しかけてみようかな、なんて生ぬるい積極性ではダメ。もっと積極性出して行かなきゃ!
「実は赤也だけじゃなく、ひとりで参加する予定のクラスメイトや元クラスメイトのご子息とも踊ろうと思っていて……それに、当日は知らない方からのお誘いも積極的に受けようと思ってるんです!」
実はダンスパーティーが始まる前も4年生は上級生ということもあり、優先的にダンスをしていいのだ。
もちろん、本番に備えて練習するペアも入れば、ペアを組んだはいいけどベストカップルまでは目指してないというペアまで、様々な子息令嬢達がローテンポの曲に合わせて踊る。
去年の感じだと、その間はあまりかしこまらず、皆おしゃべりしながら楽しそうにしているイメージ。
本当はこの時間も去年同様にケーキでも食べてまったりしていようと思ったんだけど。青葉の言葉で目が覚めたわそんなんじゃダメね。
「まあ、誘って頂けたらの話なんですけどね」
「……君ならきっと、たくさんの子息から誘われるよ」
「そうだといいんですけどね。……あ、パートナーのいない、一条くんのご友人の麗氷男子の方とかいらっしゃいませんか? よろしければ紹介してください」
「……うーん、考えておくよ。……ハハ」
……って、青葉もなんか困ってるし!
そうよね。……最初から他力本願じゃ、ダメよね。ひとりの方を見つけたら、私から誘えばいいのよ。人見知りとかしてる場合じゃないわ。
私ったら、もう、こういうところがお父様に消極的だと思われてしまうのね。たまには自分から行動しなくちゃ!
「ところで、ダイエットはよかったの?」
……それ全部食べ終わってから言う!?
悪気はないとわかっていても、やっぱりわざとなんじゃないかと思わざるを得ないタイミングだったので、かなり上がった彼の好感度を少しだけ下げる私なのであった。
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