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番外編
最も嫌いな日曜日ー香水斗視点ー
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「あーあ、日曜日か」
俺は日曜日がとにかく嫌いだ。社会人には1人も理解してもらえないだろうが、仕事ができないからだ。
自分にとって調香師は天職であり、趣味でもある。そんな休日に何をするかと言えば、最近は志野の家に遊びに行くことぐらいだ。
「なんで、来るんだよ」
志野はいつも通り不機嫌そうな顔で俺を出迎えてくれた。いつだって、志野は笑顔で俺を出迎えてはくれない。まぁ、土曜日も仕事でつい12時間ぶりに駅で別れたばかりだ。
それにしても志野は寝起きだったのか、かなり寝癖が酷い。今の時間は11時過ぎだが、あちこち無造作に跳ねている。綺麗に整えようと手を伸ばせば、思いっきり伸ばした手を弾かれた。
「触んな」
志野の不機嫌そうな顔もまたかわいい。下着が見えそうなほどゆるいスウエット、だぼっとしたパーカー。会社で見るキチンとしたスーツ姿と違って、変な感じだ。見慣れない新鮮さがある。
玄関にお邪魔すれば、所狭しとブランドの運動靴や会社用の革靴が無造作に脱ぎ捨てられていた。
「ち、違うから……香水斗が急にピンポン鳴らすからさぁ……」
志野は俺の視線に気づいたのか、慌てて脱ぎ散らかした靴を揃えていった。全く、普段から揃えておけば苦労などせずに済むのに。ほんとだらしない。
「なぁ、香水斗って僕以外に友達いねぇの?」
志野は汚い玄関を見ている俺を遮るかのように話しかけてきた。そして、ごまかすように脱ぎ散らかした靴を揃えている。
「数ではなく質だろ」
俺にとって男友達はたった1人だけ。それで充分だし、友達が多いことに魅力を感じていない。数ではなく質、それが基本スタイル。
「僕なんか香水斗の質に入らないだろ」
最近の志野はなぜかメンタルがやられている。だから今日は志野のメンタルをなんとかしてあげようと思った。
まぁ、家で過ごすのが嫌なだけだが。
「質に入る」
俺は常に『かけがえのない人間でありたい』いつもそう自分に問いかけながら生きている。志野にとっても『かけがえのない』人間に見えていてほしい。
そんな欲張りな人間だ。
「……そういうお世辞はマジでいいって」
志野は照れ臭そうに笑った。笑ったところを見せたくないのか、口元に手を当てて隠している。
「事実だが?」
俺は志野が口元に当てた手首を握る。そのまま口元から手をはがして、隠していた唇にキスをした。
「な、なにすんだよ……!」
志野はもう片方の自由な手で、また口を隠そうとした。俺はまたその手首を掴む。志野の両手は俺によって拘束された。
「キスをしたくなったから」
俺は志野の唇に舌を忍ばせる。志野の舌と絡まりあえば、少しずつ志野の抵抗は小さくなっていった。俺は志野の手首を掴む力を緩める。
志野は俺の手を振り払うと、俺の腰に手を回した。どうやら少しは機嫌を取り戻したらしい。
「12時間振りだろ」
志野は自分で言った言葉に赤面した。よっぽど、恥ずかしいのか口先を尖らせている。
「こんな日曜日も悪くない」
仕事がない嫌いな日曜日。だけど、志野と甘い時間を過ごせるのならば悪くはない。
俺は日曜日がとにかく嫌いだ。社会人には1人も理解してもらえないだろうが、仕事ができないからだ。
自分にとって調香師は天職であり、趣味でもある。そんな休日に何をするかと言えば、最近は志野の家に遊びに行くことぐらいだ。
「なんで、来るんだよ」
志野はいつも通り不機嫌そうな顔で俺を出迎えてくれた。いつだって、志野は笑顔で俺を出迎えてはくれない。まぁ、土曜日も仕事でつい12時間ぶりに駅で別れたばかりだ。
それにしても志野は寝起きだったのか、かなり寝癖が酷い。今の時間は11時過ぎだが、あちこち無造作に跳ねている。綺麗に整えようと手を伸ばせば、思いっきり伸ばした手を弾かれた。
「触んな」
志野の不機嫌そうな顔もまたかわいい。下着が見えそうなほどゆるいスウエット、だぼっとしたパーカー。会社で見るキチンとしたスーツ姿と違って、変な感じだ。見慣れない新鮮さがある。
玄関にお邪魔すれば、所狭しとブランドの運動靴や会社用の革靴が無造作に脱ぎ捨てられていた。
「ち、違うから……香水斗が急にピンポン鳴らすからさぁ……」
志野は俺の視線に気づいたのか、慌てて脱ぎ散らかした靴を揃えていった。全く、普段から揃えておけば苦労などせずに済むのに。ほんとだらしない。
「なぁ、香水斗って僕以外に友達いねぇの?」
志野は汚い玄関を見ている俺を遮るかのように話しかけてきた。そして、ごまかすように脱ぎ散らかした靴を揃えている。
「数ではなく質だろ」
俺にとって男友達はたった1人だけ。それで充分だし、友達が多いことに魅力を感じていない。数ではなく質、それが基本スタイル。
「僕なんか香水斗の質に入らないだろ」
最近の志野はなぜかメンタルがやられている。だから今日は志野のメンタルをなんとかしてあげようと思った。
まぁ、家で過ごすのが嫌なだけだが。
「質に入る」
俺は常に『かけがえのない人間でありたい』いつもそう自分に問いかけながら生きている。志野にとっても『かけがえのない』人間に見えていてほしい。
そんな欲張りな人間だ。
「……そういうお世辞はマジでいいって」
志野は照れ臭そうに笑った。笑ったところを見せたくないのか、口元に手を当てて隠している。
「事実だが?」
俺は志野が口元に当てた手首を握る。そのまま口元から手をはがして、隠していた唇にキスをした。
「な、なにすんだよ……!」
志野はもう片方の自由な手で、また口を隠そうとした。俺はまたその手首を掴む。志野の両手は俺によって拘束された。
「キスをしたくなったから」
俺は志野の唇に舌を忍ばせる。志野の舌と絡まりあえば、少しずつ志野の抵抗は小さくなっていった。俺は志野の手首を掴む力を緩める。
志野は俺の手を振り払うと、俺の腰に手を回した。どうやら少しは機嫌を取り戻したらしい。
「12時間振りだろ」
志野は自分で言った言葉に赤面した。よっぽど、恥ずかしいのか口先を尖らせている。
「こんな日曜日も悪くない」
仕事がない嫌いな日曜日。だけど、志野と甘い時間を過ごせるのならば悪くはない。
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