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最終話
ことわざ
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東京でしか買えない特別な香り。東京発信の香りは、東京を訪れた人しか購入できない仕様になっている。オンラインの配送もしていないため、レア感は通常に比べて満載だ。
文字通りその年限定のフレグランスは都会のトレンドが変わりゆく様子を表現している。この香水を纏えば「どこの香水?」と聞かれる回数が増えるほど、人と被らない自分だけの香水のように思えてくる。
香水ラベルに自分の名前や購入日を刻印できるよう特別なサービスを用意したり、自分だけの一本を楽しめるようになっている。一つ当たりの値段が高いため、手頃に試せるミニボトルも用意した。
今まで出会ってきた人脈のお陰でここまで来ることができた。依頼人と向き合いコツコツと仕事をこなして人脈を作り上げる。ご縁で別の仕事が入ってくることも増えてきた。
「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」
やっと、訪れた閉店時間。小さな個人ショップはとにかく人手が足りない。毎日、やりたいこと、やらなくちゃいけないことが増えていく。
「啓明、お疲れさま」
香水斗は僕を優しく抱きしめる。ブラインドを下ろしてしまえば、二人だけの世界になった。
「Happiness is a perfume,you cannot pour on others without getting a few drops on yourself.」
「それ、どういう意味?」
突然の英語に僕は驚きを隠せない。今度は海外進出でもしようと言うのか。
「ユダヤのことわざで『幸せとは香水のようなもの。他人にふりかければ、おのずと自分にも数滴かかる』という意味なんだ」
「いいことわざだね」
「だろ?」
日中、ふとした拍子に自分の身体から香水の香りがすると香水斗に護られているような安らぎを感じるようになっていた。そして、自然と自信が湧いてくる。僕のなかでは気持ちを切り替えられるスイッチングアイテムとして、そしてフレグランスとして香水はもう手放せない存在になっていた。
学生時代に香水が似合わない、と言われてトラウマになっていた僕とは思えない変化だ。
「啓明、好きだ」
それもこれも、隣にいる香水斗のお陰。
「僕も香水斗のことが好きだよ。香水の素晴らしさを教えてくれてありがとう」
香水斗が与えてくれた幸せを、一生傍で返し続けたい。
文字通りその年限定のフレグランスは都会のトレンドが変わりゆく様子を表現している。この香水を纏えば「どこの香水?」と聞かれる回数が増えるほど、人と被らない自分だけの香水のように思えてくる。
香水ラベルに自分の名前や購入日を刻印できるよう特別なサービスを用意したり、自分だけの一本を楽しめるようになっている。一つ当たりの値段が高いため、手頃に試せるミニボトルも用意した。
今まで出会ってきた人脈のお陰でここまで来ることができた。依頼人と向き合いコツコツと仕事をこなして人脈を作り上げる。ご縁で別の仕事が入ってくることも増えてきた。
「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」
やっと、訪れた閉店時間。小さな個人ショップはとにかく人手が足りない。毎日、やりたいこと、やらなくちゃいけないことが増えていく。
「啓明、お疲れさま」
香水斗は僕を優しく抱きしめる。ブラインドを下ろしてしまえば、二人だけの世界になった。
「Happiness is a perfume,you cannot pour on others without getting a few drops on yourself.」
「それ、どういう意味?」
突然の英語に僕は驚きを隠せない。今度は海外進出でもしようと言うのか。
「ユダヤのことわざで『幸せとは香水のようなもの。他人にふりかければ、おのずと自分にも数滴かかる』という意味なんだ」
「いいことわざだね」
「だろ?」
日中、ふとした拍子に自分の身体から香水の香りがすると香水斗に護られているような安らぎを感じるようになっていた。そして、自然と自信が湧いてくる。僕のなかでは気持ちを切り替えられるスイッチングアイテムとして、そしてフレグランスとして香水はもう手放せない存在になっていた。
学生時代に香水が似合わない、と言われてトラウマになっていた僕とは思えない変化だ。
「啓明、好きだ」
それもこれも、隣にいる香水斗のお陰。
「僕も香水斗のことが好きだよ。香水の素晴らしさを教えてくれてありがとう」
香水斗が与えてくれた幸せを、一生傍で返し続けたい。
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