香水のせいにすればいい

弓葉

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香りの設計図

超えてはいけない一線

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「な、なんだよ……」

 香水斗はジッと僕を見てくる。首筋にかけてなぶるような目線に僕は警戒しつつ後ろに下がった。

「いや、サウナで汗かいてこないか?」

 研究室には簡易的だがサウナがある。サウナストーンにかけて蒸発させるタイプのフレグランスの商品があった。きっと、これも香水斗の発想から生まれたものなんだろう。

「今度は汗を試そうってか?!」

 香水斗の目的がわかっている以上、素直にはなれない。自分の汗が入ったフレグランスがどんな匂いを放つのか興味はあるものの、香水斗のように超えてはいけない一線を越えることができなかった。

「別に商品化するわけでもないし、いいだろ」

 香水斗は気にしない様子だが、僕は気にする。仮にも仕事中だ。

「就業時間中だろ。私用はよくないって」

「志野はまじめだなぁ……」

「これが普通だから」

 僕は香水斗から精液を取り上げる。

「あ」

 香水斗は悲しそうな顔をしたが、これだけはやっぱり見過ごせない。研究所に捨てると香水斗がコッソリ回収しそうだから持って帰ることにした。

「いくら入浴剤に半年かかるって言っても、僕はダラダラと過ごすつもりじゃない。一秒でも早く製品を作り上げるつもりだ」

「それは俺もわかっている。半端なものを出さない」

「だからさ、入浴剤が終わったら提供してやってもいい」

 僕の言葉に香水斗の耳がピクリと動く。ドクドクと心臓がうるさいぐらいに鳴っていた。耳が熱を持って赤くなっているのも嫌でもわかる。
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