香水のせいにすればいい

弓葉

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香りの設計図

仕事だろ

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「入れよ」

 香水斗はさも当たり前のように湯が張った浴槽を指さした。

「いや、なんでそうなるんだよ」

 僕は乳白色に変わった湯を見る。少し冷えつつあった身体を温めたい気持ちはあったが、なんだか入る気になれなかった。

「なんでって、仕事だろ」

 香水斗は僕の服を脱がせにかかろうとしてきた。

「いやいや、入浴剤を作るのに開発者が入らなくてどうすんだよって言う理論はわかる。わかるけど……」

 香水斗に観察されながら湯船に浸かるのは恥ずかしい……。

「わかるけど、なに? ほらさっさとしないとデーターにならないだろ」

 香水斗は僕を急かしてくる。急かして判断を鈍らせようとしていると警戒するが、本当に仕事かもしれないと僕の頭は戸惑っていた。

「香水斗は入らないのか」

「子どもじゃあるまいし、一人で入れんことはないだろう。怖がらなくても、ここには幽霊は出ないぞ」

「そうじゃなくて……」

 永遠に話がすれ違っていく。噛み合いそうにない会話にギブアップしたのは僕だ。

「あーもうわかったよ。入って感想言えばいいんだろ。語彙力ないってバカにするなよ」

 僕は着ていたスーツを脱ぎ始める。温泉に入った時は香水斗も裸になっていたし、抵抗はなかった。だけど、入浴剤評価室はどこか落ち着かない雰囲気でなんだか慣れない。

 香水斗はリモコンを操作して照明を暗くした。暗くするって言っても豆球の明るさで、うっすらと香水斗の表情が見える。香水斗の視線を感じながら僕は服を全部脱いだ。

 浴槽に入ったお湯がこぼれないように、ゆっくりと足先を入れていく。肌に触れるお湯はいつも以上に優しく感じた。肩まで浸かったところで腕にお湯を這わせていく。最初は肌がなめらかになったような気がしていた。だけど、少しだけ違和感がある。

「なんか、身体が熱いんだけど……」

 まるで、身体がほてっているような。とにかかく身体が熱を持っている。そして乳白色で隠れてはいるが、僕のちんこは勃っていた。
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