83 / 111
香りの設計図
入浴剤評価室
しおりを挟む
調香師として働くことになってから、いろんな部屋があることを学んだ。
「入浴剤評価室……?」
僕は香水斗に連れられて入浴剤評価室がある研究所に来た。
「ああ、ここでは調合した香料を粉末に混ぜ込むんだ。実際に使用した時の匂いを評価して、調合と検証を繰り返すんだよ」
機械に香水斗と僕が作ったサンプルを入れる。すると、粉末状になって香料がでてきた。それを商品の仮パッケージに入れて、さらに奥にある部屋に進む。
入浴剤評価室には一般的な浴槽のほか、ホーロー、人工大理石、ステンレス、ヒノキ材の浴槽がずらりと並んでいた。天井についている明かりもそれぞれ違うものが取り付けられていて、蛍光灯と白熱灯とLEDライトがある。
「香水斗、浴槽が違うのはわかるんだけどさ。どうして明かりも違うんだ?」
天井にはいろんな照明が取り付けられていた。
「明かりを切り替えるのは入浴剤の色味や溶け方、香り立ちや持続性など多角的に評価する必要があるんだ」
「匂いだけじゃないんだ……」
匂いを混ぜて作るだけかと思っていたのに、入浴剤となると一気にやることが増えてくる。この際、嫌みを言ってくる藤さんの手も借りたいぐらいだ。そんなことを考えながら僕と香水斗は六据えある浴槽にお湯を入れていった。
「パッケージもリニューアルしないとな。プレゼント用に特別感があるものがほしいって峰岡さんから要望があったらしい」
「パッケージまで……」
入浴剤が家で使用されるシーンを想定して容器から入浴剤をお風呂へ投入していく。やることが多すぎてメモを取らないと頭がパンクしそうになった。
「まぁ、新しい入浴剤は半年かけて作るものだからな。といっても、あっという間に半年は過ぎていくが」
「普通に働いていても半年はあっという間だよ。完成できそうな未来が見えない……」
「だから、少しずつ形にしていくしかないんだよ。調合と検証を繰り返して納得ができたものを見つけに行く。これで食っている以上、半端な仕事はできない」
香水斗は溶けていく入浴剤を見つめていた。
「溶けていくのがちょっと遅いな」
香水斗はお湯に手を入れる。ぐるぐるとお湯をかき混ぜて入浴剤を溶かしていった。
「さあ、志野出番だぞ」
香水斗は僕と浴槽を交互に指さした。
「はい……?」
香水斗が言う僕の出番は、この場で裸になってお湯につかれって意味なのか……?
「入浴剤評価室……?」
僕は香水斗に連れられて入浴剤評価室がある研究所に来た。
「ああ、ここでは調合した香料を粉末に混ぜ込むんだ。実際に使用した時の匂いを評価して、調合と検証を繰り返すんだよ」
機械に香水斗と僕が作ったサンプルを入れる。すると、粉末状になって香料がでてきた。それを商品の仮パッケージに入れて、さらに奥にある部屋に進む。
入浴剤評価室には一般的な浴槽のほか、ホーロー、人工大理石、ステンレス、ヒノキ材の浴槽がずらりと並んでいた。天井についている明かりもそれぞれ違うものが取り付けられていて、蛍光灯と白熱灯とLEDライトがある。
「香水斗、浴槽が違うのはわかるんだけどさ。どうして明かりも違うんだ?」
天井にはいろんな照明が取り付けられていた。
「明かりを切り替えるのは入浴剤の色味や溶け方、香り立ちや持続性など多角的に評価する必要があるんだ」
「匂いだけじゃないんだ……」
匂いを混ぜて作るだけかと思っていたのに、入浴剤となると一気にやることが増えてくる。この際、嫌みを言ってくる藤さんの手も借りたいぐらいだ。そんなことを考えながら僕と香水斗は六据えある浴槽にお湯を入れていった。
「パッケージもリニューアルしないとな。プレゼント用に特別感があるものがほしいって峰岡さんから要望があったらしい」
「パッケージまで……」
入浴剤が家で使用されるシーンを想定して容器から入浴剤をお風呂へ投入していく。やることが多すぎてメモを取らないと頭がパンクしそうになった。
「まぁ、新しい入浴剤は半年かけて作るものだからな。といっても、あっという間に半年は過ぎていくが」
「普通に働いていても半年はあっという間だよ。完成できそうな未来が見えない……」
「だから、少しずつ形にしていくしかないんだよ。調合と検証を繰り返して納得ができたものを見つけに行く。これで食っている以上、半端な仕事はできない」
香水斗は溶けていく入浴剤を見つめていた。
「溶けていくのがちょっと遅いな」
香水斗はお湯に手を入れる。ぐるぐるとお湯をかき混ぜて入浴剤を溶かしていった。
「さあ、志野出番だぞ」
香水斗は僕と浴槽を交互に指さした。
「はい……?」
香水斗が言う僕の出番は、この場で裸になってお湯につかれって意味なのか……?
0
お気に入りに追加
84
あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました

好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
胸キュンシチュの相手はおれじゃないだろ?
一ノ瀬麻紀
BL
今まで好きな人どころか、女の子にも興味をしめさなかった幼馴染の東雲律 (しののめりつ)から、恋愛相談を受けた月島湊 (つきしま みなと)と弟の月島湧 (つきしまゆう)
湊が提案したのは「少女漫画みたいな胸キュンシチュで、あの子のハートをGETしちゃおう作戦!」
なのに、なぜか律は湊の前にばかり現れる。
そして湊のまわりに起こるのは、湊の提案した「胸キュンシチュエーション」
え?ちょっとまって?実践する相手、間違ってないか?
戸惑う湊に打ち明けられた真実とは……。
DKの青春BL✨️
2万弱の短編です。よろしくお願いします。
ノベマさん、エブリスタさんにも投稿しています。


極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる