香水のせいにすればいい

温泉ソムリエ

短時間でも身体は温まる

　湯けむりの立つ、全容の分からない洞窟風呂。そんなところに裸一つで乗り込むのは一人じゃ無理だった。それほど、洞窟風呂は奥に長い作りになっている。

「ここって、手掘りなんだよな？」

　そう聞きたくなるぐらい、洞窟は手掘りかと驚くほどの奥域があった。

「ああ、そうらしいぞ」

　ザバザバ、と香水斗はお湯をかき分けながら洞窟温泉の奥へと進んで行く。洞窟内は薄暗く、足元の状況が分からりづらい場所もあった。

　ふと、昔見た冒険の映画を思い出す。洞窟内を一周した頃には、探検しているような気分になっていた。ここは純粋に洞窟と温泉を楽しむ場所だ。

「香水斗、先あがっとくな……」

　少し頭がぼんやり、としてきた。珍しい洞窟温泉に何時間でも長居をしたかったが、洞窟内はかなり蒸している。体質によるかもしれないが、これ以上の長湯はできなかった。

「少し逆上せてるか？　足下すべるから気を付けろよ」

　香水斗は僕の手を握り、誘導するように脱衣所に案内してくれる。

「ありがと、助かる」

　近くに流れる川のせせらぎを聞きながらの入浴。天然のミストサウナで肌はしっとりと潤い、じんわりと温まるお湯だった。最初はぬるく感じたものの、短時間でも身体は温まる。温泉から出た後でも汗が止まらない。