香水のせいにすればいい

弓葉

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香りで風景を描く

絶対日帰り主義

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「香水斗……?」

「あのさぁ、俺、他人の匂い苦手なんだよね」

 香水斗は苦手と言いながら、首筋の匂いを嗅いでくる。その行動の矛盾に戸惑いながら、僕は香水斗の身体を押し返した。それでも分厚い胸板はびくともしない。

「だから、地方に出張行く時は絶対日帰り主義だし」

 香水斗は強引に僕の鎖骨から首筋にかけて舐めた。ふと、目が合い、キスをされるのかと口を強張らせれば鼻でフッと笑われる。期待してしまったことが恥ずかしくて顔を背ければ、顎に手を添えられた。

「ちゃんと、俺の話聞いてよ」

 香水斗の眉が少し下がる。だけど、僕はまともに話しを聞ける状態じゃない。

「話できる状況じゃないだろ……」

 口をすぼめて言い返せば、服の上から強弱をつけて乳首を摘ままれる。もどかしい快楽に身体がビクビクと反応した。直接、触れよ、とは言えなくて拒否するフリをして、着ていた服をまくしあげてしまう。

「えっろ……」

 香水斗は躊躇うことなく、僕の乳首を咥えた。舌先で弄られ、舌から伝わる熱が僕の乳首を敏感にさせていく。すぐに、疼いて硬くなっていた。

 なにがエロいのか、とは聞かない。聞こえないフリをしているが、顔は真っ赤に染まっているだろう。とにかく、顔が熱い。
 
「んぁっ……」

 わざと立てられる舌の音に合わせて動いてしまう。
 
「お前以外と同室なんてありえない」

 香水斗の言葉で一気に体温が上がった。香水斗の手が僕の手に触れる。同じぐらい熱かった。香水斗は僕の手を握ることなく、下半身へと移動する。

「それって……」

 もっと甘い言葉を聞きたかった。大人になればなるほど、そういう言葉は聞こえなくなってしまう。傍にいるのは当たり前で、お互いの気持ちはわかっている前提で、言葉にするのはダサいという風潮。

「今日は、これ以上言わない。言ってほしかったら啓明から言えよ」

 香水斗は僕の陰茎を下着越しにやわやわともみ始めた。

「ちょっ……落ち着けって……お風呂入ったばっかだし……下着の替えが……ぁああ!」

 先走りが下着を濡らしてしまう。下着が濡れてしまえば、どうでもよくなってしまった。そうやって理由をつけて、理性を取り払う。昔は欲望に忠実だったのに。

「下着ぐらいコンビニで売ってるだろ」

 香水斗は僕の精液で濡れた指を見せつける。暗くて見えなくても、下着はしっとりと濡れているだろう。僕は諦めて下着を脱いだ。

「香水斗のお金で買えよ。汚したのはお前なんだから……」

 口元を手で隠して照れ隠し。香水斗は僕の手を掴み、隠した唇にキスをした。

「買うよ。その代わり絶対穿けよ」

 ふにふに、と後孔をつついていた香水斗の指先が一本ゆっくりと入り込んできた。香水斗の指がぬめっているのは、僕の精液だ。するする、と後孔を抜き差ししている。

 あと、二、三度強めにしごいてくれたら軽くイけそうだったのに。どうして、と香水斗を睨めば香水斗も僕を見ていた。口元が笑っている。

「今の顔、超かわいかった」

 見られていたことが恥ずかしくて、手近にあった枕をつかんだ。だけど、つかんでいた枕を取り上げられてしまう。

「手はこっち」

 やり場のなくなった手は香水斗の背中に回された。照れ臭さを感じながら汗で湿った背中に縋り付く。顔を見られないように、香水斗の肩に額を押しつけた。

「いれるよ」

 香水斗の問いかけに小さく頷く。身体は仕事で疲れているはずなのに、香水斗の陰茎を包み込むように受け入れた。

 香水斗の体温を感じて、陰茎がさらに上を向いた。密着したことで繋がりも深くなり、香水斗の陰茎がさらに奥深くへ進んでいく。もうパンパンで入りきらないと思った先にまで、香水斗の陰茎は進んで行った。

「え、……あ、あぁっ……」

「触ってみろよ、めちゃくちゃ熱い」

 香水斗は僕の手を掴み、硬くなった陰茎に触らせる。触れさせられた自分の陰茎の熱さに手を引っ込めたくなった。

「ほら、熱いだろ」

 香水斗の手が僕の手に覆いかぶさる。節ばった長い指が逃がしてくれない。手のひらから、ぷるぷると打ち震えている陰茎の熱さが伝わってくる。一人でしている時とは違う。中には香水斗の陰茎が入っている。

 意識をすれば、下腹部に力が入ってしまった。香水斗の陰茎を中で感じつつ、香水斗が小さく息を漏らす。その吐息が耳にかかった瞬間、びゅるるっと吐精してしまった。手のひらに熱い精液が飛んでくる。そして、お腹の中も熱くなったような気がした。

「同時だったな」
 
 ふにゃり、と香水斗はゆるんだ笑顔を見せる。珍しい表情に、胸の鼓動が速くなった。
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