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玖賀の存在
心臓の音
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藤は陰陽寮で言葉を学んだ。ある程度は読み書きできる。
「ふうん、昔はエレベーターが動いてたそうだけど、今は動いてないんだって」
藤は上を見上げた。十二階まで階段を使って上らないと頂上からの景色が見えない。八階に休憩所があるらしいが、道のりは長そうだった。
「途中、絵が飾ってあって上るのが楽しいな」
玖賀は絵に興味があるようだった。煉瓦の隙間から見える景色の変わり様を楽しんでいる。玖賀が絵や外に興味があって助かった。玖賀のペースについていけそうだ。
階段の途中には、外国の物品販売店が並んでいた。ガラスのよくわからない物がたくさんあり、玖賀が触って壊しやしないか不安になる。
「玖賀、さすがにコレは買えないからな」
藤がこそり、と玖賀に耳打ちをする。陰陽寮からの支給は多少の贅沢ができる程度だ。散財できるほど持ち合わせていない。
「そうか」
玖賀は残念そうに店を後にした。目に入らないようにしているのか、絵や外の風景を見ながら階段を上っていく。壁面に飾られていた絵が写真へと変わった。花街の芸者達の写真だ。題名に『東京百美人』と書かれている。
「四階か、八階の休憩所の半分まで来たな」
藤は写真を見ながら玖賀に声をかけた。
「ああ、藤。体力は平気か?」
玖賀は何かを思い出したかのように振り返る。
「珍しく心配してくれるんだな」
藤は玖賀の隣に並んだ。東京観光の名所と言っても、グルグルと階段を上るのは物好きらしい。頂上から下りてくる人は少なかった。
騒がしいのは外だけで、案外ここは静かで落ち着く。それに、玖賀とはぐれる心配もない。
「ああ、少し走っただけで心臓の音が五月蠅いからな。今は聞こえず、変な感じだ」
玖賀は耳をすませた。だが、いつもと感覚が違うらしく首を傾げる。
「……そんな音まで聞こえてんのかよ」
藤は顔を赤らめる。心臓の音で心配されるのは恥ずかしい。
「ふうん、昔はエレベーターが動いてたそうだけど、今は動いてないんだって」
藤は上を見上げた。十二階まで階段を使って上らないと頂上からの景色が見えない。八階に休憩所があるらしいが、道のりは長そうだった。
「途中、絵が飾ってあって上るのが楽しいな」
玖賀は絵に興味があるようだった。煉瓦の隙間から見える景色の変わり様を楽しんでいる。玖賀が絵や外に興味があって助かった。玖賀のペースについていけそうだ。
階段の途中には、外国の物品販売店が並んでいた。ガラスのよくわからない物がたくさんあり、玖賀が触って壊しやしないか不安になる。
「玖賀、さすがにコレは買えないからな」
藤がこそり、と玖賀に耳打ちをする。陰陽寮からの支給は多少の贅沢ができる程度だ。散財できるほど持ち合わせていない。
「そうか」
玖賀は残念そうに店を後にした。目に入らないようにしているのか、絵や外の風景を見ながら階段を上っていく。壁面に飾られていた絵が写真へと変わった。花街の芸者達の写真だ。題名に『東京百美人』と書かれている。
「四階か、八階の休憩所の半分まで来たな」
藤は写真を見ながら玖賀に声をかけた。
「ああ、藤。体力は平気か?」
玖賀は何かを思い出したかのように振り返る。
「珍しく心配してくれるんだな」
藤は玖賀の隣に並んだ。東京観光の名所と言っても、グルグルと階段を上るのは物好きらしい。頂上から下りてくる人は少なかった。
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「ああ、少し走っただけで心臓の音が五月蠅いからな。今は聞こえず、変な感じだ」
玖賀は耳をすませた。だが、いつもと感覚が違うらしく首を傾げる。
「……そんな音まで聞こえてんのかよ」
藤は顔を赤らめる。心臓の音で心配されるのは恥ずかしい。
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