鬼のセンチネル

弓葉

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鬼のセンチネル

激しいめまい

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 次に藤が目を開けた時、ハイカラな西洋料理店とカフェの道ばただった。過去に戻ったかと思ったが、寂しい匂いはしない。ただ、激しいめまいに襲われた。

「うっ……」

 立っていられず、その場に崩れる。同時に吐き気もした。

 藤は手を押さえながら路地裏に向かって這いつくばりながら移動した。すると、スーツ姿の人が走ってくる。陰陽寮の人間だ。

「どうした? センチネルが近くにいるのか」

 心配よりも道具のような扱いに藤は悲しくなる。

「いえ、何もありません。めまいがしただけです」

 陰陽寮の人間を突き放し、無理して立ち上がった。政府公認と言うのだから、あの男を報告する必要はない。

「陰陽寮で休んでいけ、何かあっては困る」

 藤は迷った。この状態だと玖賀が待つ家には帰れない。少しだけ、陰陽寮で休みたかった。だが、陰陽師がいるということはセンチネルもいるということ。藤は能力で心の内側を探られることが嫌いだった。  

「平気です、そこのカフェで休んでから帰ります」

 藤は陰陽寮を突き放した。

 近くにあったカフェに入る。店内には蓄音機が置かれ、最近はやりのジャズが流れていた。注文を聞きにきた女給じょきゅうに藤はコーヒーを一つ頼んだ。

「ふー」

 藤は宍色の髪の男の話を思い出していた。人間でさえ、空間をねじ曲げる能力を持っている。鬼となればどんな能力を持っているのかわからない。

 能力を使う時だけ、あいつの目は玖賀と同じ赤色だったな。

 鬼の玖賀はいつも赤い目をしている。それは能力を常に解放している状態ではないかと考えた。

「コーヒーをお持ちいたしました」

 藤はカップを持ち、一口飲む。

「帰りたくないな……」    

 玖賀は能力を取り戻すために、藤を抱く。抱かれるために家に帰るのが嫌だった。



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