アルビノ崇拝物語

弓葉

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第3章 ブラットの尻尾

狙った策略

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「ぶ、ブラットはいますか……?」

 とにかく味方が必要だ。自分のことを知っている獣人の味方がほしい。というか、レベリオは無事だろうか。

「ブラットは別件対応中だ」

 やはり、そう簡単には取り合ってもらえなかった。

「なら、レベリオは?」

 十月は前のめりになって腰を上げる。だが、背後にいた部下に肩を押さえつけられて座らされた。

「レベリオは別の場所にいる。お前はレベリオの良心を利用しようとしていたんだろ」

「違う!」

 別にレベリオの良心を利用としていない。そもそも、初めて出会った時はアルビノの存在を知らなかった。忍び込んだ先の廃墟で偶然出会った。ただそれだけ。

「アルビノの遺体一体には最高で800万円の値段がつく。背後にいるのは決まって金持ちだ。お前は汚いお金で留学しに来た。それ以外に何がある?」

 侮蔑するような目で見下された。もし、十月が帰国していれば犯罪者の息子として向けられるはずだった目線。それを逃げたはずのセリスロピィで味わっている。初めて会う人だからまだ耐え切れたが、友達に向けられると想像しただけで胸が痛くなった。帰国したとしても耐え切れそうもない。

「たしかに、僕は両親のお金で留学しました。だけど、僕はレベリオをどうにかしようと考えていません。本当です。それだけは信じて下さい。僕は関係ありません」

 よく喋るやつほど怪しまれる。頭の中ではわかっていても無実を証明したくて口を開いてしまう。変な冷や汗が止まらない。酷く喉が渇いていた。

「レベリオが父親に見捨てられている苦い過去を持っているのに、これ以上人間を関わらせられるか」

 ダン、とイヌ獣人警官は拳を机の上に叩きつける。あまりにも大きな音にビックリし、十月は肩をすくませた。

「だったら、レベリオ本人に聞いてみて下さい! レベリオは過去に襲われた経験を持っているなら怪しいやつから離れるだろ。怪しいやつと一緒にいるはずがない!」

 とにかく必死だった。両親どころか自分まで刑務所行きなんてごめんだ。

「レベリオはもうダメだ。人間に毒されている」

 イヌ獣人警官は十月の言葉を一向に聞こうとしない。まるで相手にされていないようだ。

「なんだよ、毒なんて言い方」

 話を聞こうともしないイヌ警官獣人に、だんだん十月も腹が立ってくる。いらだち始めていた。

「お前はオメガなんだろ。それ以外に何がある?」

 ニタリ、とイヌ獣人警官は笑った。十月はイヌ獣人警官の笑みを見て、ゾクリと身震いをする。

  いや、違う。十月は会話の違和感に気づく。ここでシロを証明する必要はなかった。これは最初からオメガである十月を狙った策略だ。
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