アルビノ崇拝物語

弓葉

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第1章 残酷な伝統薬

生きる目的

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「わしは密猟者など私利私欲に飢えたやつらを取り締まっている」

 非公式だけどな、とライオン獣人は付け加えた。アルビノということもあり、あまり派手な行動はできないそうだ。

「そうなんだ……」

 十月はライオン獣人とポスターを交互に見た。そこであることを思いつく。もし、犯人を捕まえて表彰でもされれば堂々と日本に帰国できる。これは唯一神様に与えられた最後のチャンスではないのか。

「なぁ、俺もその……手伝いとかできないか?」

 食い気味に十月はライオン獣人に詰め寄った。与えられたチャンスを逃したくはない。

「金とか出ないぞ。命を狙われることもあるし、働くだけ損だ」

 レベリオはあまりいい顔をしなかった。グルル、と小さく唸っている。間近で聞く獣の唸り声に十月はゾクリと身震いをした。

「金とかいいんだ。代わりにベスティア語と衣食住を提供してほしい」

 頼む、と十月は頭を下げた。意思疎通ができる獣人を手放したくはない。ライオン獣人はスマホなどの連絡手段を持っていなさそうだし、ここで別れてしまえば一生会える気がしない。

「言っておくが料理はしないぞ。それに器用じゃないし、命の保証もできない」

 ライオン獣人は拒絶するかのように首をふる。だが、十月も引き下がらなかった。

「構わない。もう、俺は死んだようなもんだから」

 十月はもう一度頭を下げた。ライオン獣人は頭を抱えてため息をつく。

「……本当に頑固な人種だな」

 あきれたようにライオン獣人は言った。

「じゃあ……」

 十月は顔を上げてライオン獣人を期待した目で見つめた。

「獣人にもできることと、できないことがある。それを手伝ってもらう、いいな」

 ライオン獣人は大きく鼻を鳴らした。

「ああ、わかった。俺は十月、あんたは?」

「レベリオだ」

 レベリオは手をグーにして十月に向けた。十月は首を傾げる。

「拳を合わせるんだ」

 レベリオはグーのポーズのまま動かない。十月は手を握りしめ、レベリオの拳と合わせた。

「これからよろしくな。十月」

「ああ、よろしく」

 こうして、十月はレベリオと行動を共にするようになる。
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