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第1章 残酷な伝統薬
私利私欲
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母は料理がへただった。それでも一生懸命に作ろうと頑張ってキャラ弁に挑戦していたことを思い出す。おいしい、とは言えなかったけど大好きだった。
***
十月はベッドの上で目を覚ました。
「ここは……」
十月はまぶたを擦り、周囲を見渡す。忍び込んだ屋敷の一室だろうか、一階の雰囲気と造りが似ていた。枕元に置いてあるランプが小さく灯っている。十月が意識を失っている間に、どこかへ行ってしまったのか、ライオン獣人の姿は見えなかった。
「ん?」
十月は壁に貼られたポスターを見つける。ランプを手にし、壁へと近づいた。近寄ってみれば二匹のライオンのライオンが額をすり合わせて寄り添う写真だった。それを見た瞬間、目の奥がじわりと涙で滲んでくる。思わず十月はライオンのポスターに手を置いた。それだけでは足りず、額をポスターに押しつける。
「はあ……」
留学先のホストファミリーには見捨てられたことを思い出す。学校には行かせてもらえず、日々タダ働きをさせられる毎日だった。来たばかりの異国人をそう簡単に受け入れてはくれない。ホストファミリーには当たり外れがあると聞かされていたが、ここで運のツキを使い果たしたらしい。
「もう、大丈夫なのか」
古びたドアが開く音がし、ライオン獣人が中に入ってくる。ランプの灯りを照らせば、純白の毛並みが浮かび上がった。
「白い……」
改めて見ると感動した。十月はアルビノを見ることが初めてだった。
「あ、すみません」
十月は口を噤む。悪意はないが、気を悪くしたかもしれない。
「別に気にしていない」
ライオン獣人は十月の謝罪を気にもとめずに返事をする。
だが、とある違和感があった。
「どうして、俺の話している日本語が分かるんだ?」
セリスロピィは日本語が通じない。基本は英語だが、獣人が話すベスティア語が存在する。十月はベスティア語を学びに留学した。だが、ホストファミリーとの意思疎通もかなり難しかった。ある程度、単語を覚えてきてはいるがそこまで流ちょうには話せない。
「昔、学んだ」
レベリオはそれ以上話さなかった。
「そうなんだ……助かったな。ベスティア語はまだ慣れてなくて」
十月は安心する。言語が通じるだけでも有り難かった。
「このポスターに書いてある文字は何て読むんですか?」
十月はポスターに書かれた文字を指さした。絵のような文字だが、癖が強く意味を理解することができなかった。
「金のためにライオンを殺すな」
ライオン獣人の言葉を聞いて、十月の心臓が締め付けられる。息をするのも忘れていた。
***
十月はベッドの上で目を覚ました。
「ここは……」
十月はまぶたを擦り、周囲を見渡す。忍び込んだ屋敷の一室だろうか、一階の雰囲気と造りが似ていた。枕元に置いてあるランプが小さく灯っている。十月が意識を失っている間に、どこかへ行ってしまったのか、ライオン獣人の姿は見えなかった。
「ん?」
十月は壁に貼られたポスターを見つける。ランプを手にし、壁へと近づいた。近寄ってみれば二匹のライオンのライオンが額をすり合わせて寄り添う写真だった。それを見た瞬間、目の奥がじわりと涙で滲んでくる。思わず十月はライオンのポスターに手を置いた。それだけでは足りず、額をポスターに押しつける。
「はあ……」
留学先のホストファミリーには見捨てられたことを思い出す。学校には行かせてもらえず、日々タダ働きをさせられる毎日だった。来たばかりの異国人をそう簡単に受け入れてはくれない。ホストファミリーには当たり外れがあると聞かされていたが、ここで運のツキを使い果たしたらしい。
「もう、大丈夫なのか」
古びたドアが開く音がし、ライオン獣人が中に入ってくる。ランプの灯りを照らせば、純白の毛並みが浮かび上がった。
「白い……」
改めて見ると感動した。十月はアルビノを見ることが初めてだった。
「あ、すみません」
十月は口を噤む。悪意はないが、気を悪くしたかもしれない。
「別に気にしていない」
ライオン獣人は十月の謝罪を気にもとめずに返事をする。
だが、とある違和感があった。
「どうして、俺の話している日本語が分かるんだ?」
セリスロピィは日本語が通じない。基本は英語だが、獣人が話すベスティア語が存在する。十月はベスティア語を学びに留学した。だが、ホストファミリーとの意思疎通もかなり難しかった。ある程度、単語を覚えてきてはいるがそこまで流ちょうには話せない。
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「そうなんだ……助かったな。ベスティア語はまだ慣れてなくて」
十月は安心する。言語が通じるだけでも有り難かった。
「このポスターに書いてある文字は何て読むんですか?」
十月はポスターに書かれた文字を指さした。絵のような文字だが、癖が強く意味を理解することができなかった。
「金のためにライオンを殺すな」
ライオン獣人の言葉を聞いて、十月の心臓が締め付けられる。息をするのも忘れていた。
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