異世界転生したらΩでした！

さようなら。

　橋の上から飛び降りた。別にその橋は自殺の名所でもなかったし、ただの橋だった。遠くに川が見えるけど、この高さで死ねるかどうかはわからない。

　とにかく、つらい現実から逃げたかった。ごおおおおと風を切る音がする。浮遊感はなく、ただ落ちていた。バンジーなんか一生飛べないと思ってたけど、いざとなったら飛べるもんだな。ただ、このバンジーは一方通行だけど。

『殺すつもりは無かった』

　あいつの言葉が頭にこびりつく。僕はあいつの後を追うように懺悔をした。あいつを人殺しにしたのは僕です。僕が悪いんです。神様、どうかあいつを許して下さい。

　身体が地面に落ちたのだろうか？　目の前がぐにゃり、と曲がった感じがした。

＊＊＊

　僕は天国に行けたのだろうか。風が気持ちよく流れていて暖かい。草がそよそよとしていて、顔をくすぐってくる。勢い余って鼻に入りそうだ。鼻がムズムズしてきて、思いっきりくしゃみをした。

　地面に手をついて身体を起こせば、木の葉がザアッと風に吹かれる音がする。

「ここは……」

　一面、草原だった。所々に木々が生えている。

「虫いそう」

　僕は立ち上がった。あれ？　ハダシだ。それに爪が何ヶ月も切ってないぐらいに伸びている。おかしい。足首から上が毛むくじゃらだ。これは本当に僕の足だろうか？

「そこまで毛は濃くないんだけどな」

　触ってみようと手を伸ばせば、腕も同じように毛むくじゃらだった。手は爪が伸びているけど、普通だ。じゃあ顔は？　手のひらで顔を触ってみた。よかった。何も生えていない。