次元鍵

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センサリア

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夢は人をダメにする。希望は時に絶望へと変化する。

私がそうだ、地球からの救援隊が来ないまま六年が経過した。

また1人、また1人死んでいく中で私だけは冷静であろうとした。

「センサリアご飯見つけたよ。うぅ寒い」

凍える吹雪の中、民族移動用大型運搬機の残骸に籠る日々。

「カチカチだからゆっくり溶かさないと」

20区画からなる大型運搬機で残ったのは2区画だけ。
無人星に落下した事が不幸であったが、幸いだったのかもしれない。

星は生物が住めないものと、生物を食うものの二つに主に分かれています。

ここは生物を食う星のようです。定期的に落下してくる機械や、見たことのない異星人達。
特質的な重力が原因と語る遭難者もいました。

「ほら、火をつけたから鍋に入れるよ」

異星人や人間など総勢23人で生活しているこの6年間。
かつては救援が来るだろうと信じていましたが、いつしかその夢は消え、この星から脱出できる可能性も希望もなくなっていました

感受性豊かな私には、相手の心情が自分のもののように感じられてしまいます。
この中で脱出に希望を持つ人なんて1人もいないと。

「ねぇねぇセンサリア、この前聞こえるって教えてくれた音はまだ聞こえる?」

異星人のルャンヴォが声を掛けてきた。ドラグシア星の青年らしいが二足歩行のトカゲにしか見えない。

知能がとても高いそうで、私が言語を理解する前に向こう側がこちらの言語を修得していた。

「うん聞こえるよ、でも耳を澄まさないと聞こえない」

「昨日一回だけ救難信号を飛ばせたから、後世に生きる術を伝えられるかも」

「そうだね。進化した世界だからこそ、対策が必要になるのは進化が進みすぎた時、今の私たちのような状況になったときだね」

助かるなんて微塵も思っていない。彼らドラグシアは民の為に命を全うする事が一番美徳と考えるらしい。

私には理解し難い。きっと一番大切な時期をこの絶望で過ごしたから。

「食事も摂って体があったまってきたから次は私が見てくるよ」

「気を付けてねー」「新しい不時着物がAQNOyエリアに落ちてたからそこら辺がいいかも」

「あそこか、分かった」

AQNOyは私が乗ってきた物だ。墜落前に崩壊してロゴのついた大きな壁面だけ飛んでいき、突き刺さっている場所。

「また音がする、話し声……極限状況で幻覚をみだしたか?」

最近多い。あの日かと思ったこともあったが、ここの生活に慣れてから一度も無い。

それに臭いも変化した。この凍てつく風を対策する為にスカーフを巻き、口元を覆っているのにわかる臭い。

「人間の持つ環境適応能力なのか、はたまたとち狂ったのか」

墜落していたのは地球の船。

「中は人けなしのよう、アドラスシューべ出番だよ」

布に巻かれた金属棒が形を変える。
握り方によって記憶形状のような変化を見せる異星人の道具。

バールのような形を作り扉をこじ開けた。

「死んで間もないように見えるけど、空中で死んだね」

若い少女8体と操縦士1体、アシスタントと見られる男性1体の計10体。

荷物ハッチの中は着替えやら日用品が多かった。

「悪いとは思わないよ。私達が食して糧にするから」

人1体と荷物数点を近くの金属板に乗せて、扉を閉めた。

「アドラスシューべ、紐」

板に紐を通して引き摺る。もう慣れたものだ。

最初は同じ不時着して死んだ仲間達、両親、異星人、いろんなものを食べて生き延びてきた。

たまにある輸送品から植物を取り出して育てたりしているうちに、必要な栄養バランスを満たせる程に充実はした。

「七日間は肉ありの生活だね。それに、この荷物に入っている服で布団も増やせるよ。ルャンヴォ君は鱗があるからと言ってたけど、それでも寒そうだし」

そんな帰り道、突然矢に打たれた。

「っ、あぶっな辺な音聞いてなかったら死んでた」

体を逸らしたおかげで肉のない布に刺さった。

「まさか他の生存者がいるのか?交戦的か飢えで暴走しているのか、わからないけどとりあえずアジトにこられても嫌だから」

アドラスシューべと荷物だけ持ってその場を離れた。

「って事があったんだけど」

「ふむ……受け入れ可能体制ではあるから受け入れるの構わんが」

ドラグシア星から来たルャンヴォと同族であり、長老とみんなに呼ばれている人がここでは仕切りをしている。

「矢で撃たれたことを考える、相手は相当危険とみえる」

「そうだよ、ルェンみたいな女の子もいるわけだし」

「でも向こうにも小さい子がいて、その為に動いてるかもしれない」

23人中16人が受け入れようと受け入れが言い決定した。

食糧危機に暴走化するのは良くあることだ。ここでも過去に何度か起きているから同情の方が大きい。

「わかりやすいように旗を立てて食事も置いておこう、手紙と一緒に」

今いる場所は防冷対策に四重の層で守られている。矢が飛んできても安全だし、相手側も食事にありつけると分かれば落ち着くだろう。

「とりあえず私はもっかい拾ってくるよ。1人1体最近達成できてなかったし」

私は反対派だから離れたのもある。矢を撃たれたことには怒りを覚えたりもする。

「お、OeFJ jetエリアにも不時着あるじゃん。アドラスシューべ、よいしょっと」

重苦しい扉を退かすと中は機械だらけだった。
異様な匂いが立ち込めていた。

「ハズレか、ん?なんだこれ」

一度開けた扉を閉めて、一番大きなモニター付近にやってきた。

突然機械が作動し始めた。この寒さで、ここに落ちた時点で、大型機器は七割死ぬ。

「メインシステムか復帰プログラムでも組んでいたのか?自己修復機能があってもかなり厳しいと思うけど」

ChronoGuardianと書かれたシステムが起動を始めた。

「何かの音、危なそ__」

変な音で意識が遠のいた。

『!センサリア、戻れ!』

呼ばれる音に目を開けると6人の知らない人達が立っていた。

『この期に及んでも探索とは好奇心の絶えない奴だな』

知らないはずなのに目の前の男はなぜか名前が出てきた。

『クロノス……』

『とっとと行くぞ、リーダーの待つあの約束の木に』

『わかった、その前にやっぱ長老達に挨拶しにいっていい?』

なぜか2度と会えないような気がした。

『長老達って墓は数次元先の星だろ?リーダーにどやされるぞ』

『え墓って、ちょっと』

『いつものお前らしくちゃんとしろ。そうか、今日が命日だったな……すまんな』

『いったい何があったの』

『次元移動で逃げたせいか記憶が曖昧になってるな、細かく説明してる暇はないから移動中の範囲で語るぞ。お前は招き入れた奴が窃盗団の生き残りと知らずに仲間を殺された、それ以上でも以下でもない。もう振り切っただろ、』

『クロノス厳しくねぇー?』

『あー、ははは。そうだったね忘れてた』

これは悪夢だと割り切る。どこか懐かしい気のする奴らだが、怪しさの方が勝っている。

『みんな揃ったね、それじゃアレ出して。この特殊な素材で出来た鍵はここに置いていくよ。あれに感付かれても困るから』

みんな首に下げた鍵を木に差し込んだ。見様見真似でやってみると簡単に刺さり込んだ。

『改めて私はソラノ。次元鍵のリーダー。能力
はソラノよ』

名前と、また名前の復唱。変わった文化圏?

『何を改ってんだリーダー』

『まぁいいだろ。リーダーの決意だ。俺らも名
乗ろうぜ、次元鍵副リーダーのクロノスだ。能力はクロノス』

どうやらこの次元鍵と言われるグループでは定例のようだ。

順番的に自分の番が来た、何をいうか迷うがとりあえず前の真似をすれば問題はないだろう。

『次元鍵のセンサリアよ。能力はセンサリア』

みんなの自己紹介が終わるとリーダーの目が変わった。

『これで最後にできるなら最後にしたいから
さ、初心に帰ったような緊張感で挑むよ』

決意の目だ。震えも怯えも感じない。

『この世界もダメだったけど、活路はしっかり見えたんだろ?」

『うん。だけどごめんねみんな、特にイメリ
ア』

私の前に自己紹介をした女とリーダーは何かあったようだ。

『うんうん、次の世界でも私なら見つけれるしまた逢えるから!』

そこら辺から夢が曖昧になり、飛んできた黒い球体に潰されたところで目が覚めた。

破損した機械に異様に蒸し暑いこの空間。蒸し暑い感覚は六年ぶりだ。

「私の身に何が……いや特に何もないみたい」

起き上がって服を脱ぐ。いや、脱がなければいけない。汗をかいたまま外に出れば凍死してしまう。

「結局ここはなんの施設なんだ……本がある、しかし読めない言語ときた」

パラパラとめくっていく。目に入った単語だけを脳で書き留め最後のページまで来た。

「勝手に宇宙を管理するアーティファクト?ってことはこの船はそれを積んでたが、何かしらの理由で落ちたというわけかな。でも無人前提なら本があるのはおかしい、かと言って無人にしては広すぎる空間」

現に私1人が寝転がってても窮屈しなかった。さらに適温調節機能が今の状態になる前までは機能していた。

「今の技術を知らないけど、適温調節機能っていったら六年前の時点であと八年後には各家庭に配備可能ですとか言ってたしあり得るのか?」

だがこんなところで道草を食ってる場合ではない。1人増えたのだから余計に食事が必要になる。

「人が乗る前提と考えて、どこに食糧を入れるかだよね」

この手は操縦席が一番上で下の階に居住区域、その下に食糧庫となっている。これはなんかあっても切り離して大丈夫な順番である。

「下の階に降りるための扉はこれかな?アクセス権限とか知らないけど……開ゴマ?」

無反応。昔みた博物館に飾られている童話と書かれた話ではこれで扉が開いたがどうやら違うようだ。

「アドラスシューベ頼んだよ」

バールのような形にして間に差し込む。力を込めてテコの原理で無理やりこじ開けた。

「やっぱ下あるじゃん。くっさ……蝿も飛んでる」

居住区域にも適応機能が付いていたようで、それが仇となり何か腐っていた。食品についてきたのか蝿もたくさん湧いているようだ。

「タンパク源、しかも育ち放題!」

捕まえて食べてみた。口の中に独特な苦味と辺な羽の感触が伝わるが食べれないものじゃない。

「まずいけどうまい。久々の人間以外から取るタンパク!」

ゆっくりとハエを捕まえながら奥へ進んでいく。

開きっぱなしになった扉からは骨が飛び出ていた。

「私の住んでた地域でもよく骨は見たけど、この骨はかなり古いぞ」

色が変色して形も崩れ掛けていた。

「この死体以外にもいると見た、じゃなければハエが大量にいて生存できるはずない。軍のバッチ?グローバル・アーミーの宇宙軍大尉か」

地面には服のかけらや謎の血痕などが散らばっていた。

「これだけ悲惨なのに壁に傷が見られない、死体の年数もまばらだし……実験施設だったのか?」

死体の総数は14体、腐敗度合いからも食べるのは不可能だろう。

グローバル・アーミーとアース・セントリーズの軍階級章を見つけた。どれも尉官ばかり。

「高度そうな機材にたくさんの尉官。これは国際的な、いや星間で行われる闇取引の匂い」

グローバル・アーミーは地球の多国籍軍、アース・セントリーズは宇宙総括本部ラドラ星が地球に置いている軍。

「誰か記録を残していないのかな、日記でも良いし電子記録でも良いから」

死体を持ち上げてどかしたりするが何も出てこない。

「あとは食糧庫と管制室、先に管制室でこの星の座標を見てみるか」

上に戻り、完成室に向かう。この手のものは大抵一番後ろに管制室が付いており、何かあればエンジンごと管制室が逃げれるように作られている。

逆に燃えるけど。

「起動したけど、なにこれ63次元先って……普通は光年じゃないの?」

地球より、63次元----光年----km。計器は見たことのない数値を示していた。
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