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イメリア
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森の木々が風で激しくうねる。でも私達が囲っている木は微動だにしない。
私たちと言っても目の前にいる9人は知らない人。
深刻な顔をしているが、私には伝わる感情は平穏そのもの。
『改めて私はソラノ。次元鍵のリーダー。能力は空時共振者よ』
一際目立つ青い髪の女性がそんなことを高らかに宣言した。
『何を改ってんだリーダー』
チャラい男が聞き返した。どうやら予定外のことだった。
『まぁいいだろ。リーダーの決意だ。俺らも名乗ろうぜ、次元鍵副リーダーのクロノスだ。能力はクロノス』
みな、なぜか名前を宣言した後、能力と称してまた名前を宣言している。
私も同じようにやらなきゃ。
『次元鍵のイメリアです、能力はイメリア』
順次自己紹介が行われていく。
『これで最後にできるなら最後にしたいからさ、初心に帰ったような緊張感で挑むよ』
『この世界もダメだったけど、活路はしっかり見えたんだろ?』
『うん。だけどごめんねみんな、特にイメリア』
突然話をふられて咄嗟に答える。
『うんうん、次の世界でも私なら見つけれるしまた逢えるから!』
次の世界?何を言っているのか自分がわからない。
「んん、また夢?最近はリアルな夢ばっか見る」
でも、一人称な夢は久々に見た。
「おはようママ」
「おはようイメリア、ほら涎拭いて。ミルクでよかった?」
「うん砂糖多めでお願いね」
椅子に腰掛けて朝ごはんを食べる。
味はいつも通りだけど飽きない美味しさがある。
「いつもに増してポーッとしてるけどまだ夢現かしら」
「最近自分から意識が抜けて気付いたら夢見てるって話したでしょ?今日は自分視点で夢を見てたからなんか違和感あって」
「あらそれはいいことじゃないの?どんな夢だったのかしら」
「それがね大勢の人たちと約束をする夢だったわ」
「いい傾向ね、きっとあなたが大きな目標に立ち向かうことを示しているわ」
「そうだといいな……私を理解してくれる人が現れると」
ご飯を食べ終えたので歯磨きを始めた。その間にママが髪を整えてくれる。
「あんたの髪ってどれだけ乱雑でも絡まらないわよね。透明で幻想的……あとはやっぱり友達よね、高嶺の花って思われているせいで出来ないのは可哀想だわ」
「ママ大丈夫、今日頑張ってみる。早くママに友達紹介したいから」
透明とも取れる幻想的なドレスを纏い外へ出た。
「イメリアちゃんおはよう、今日も元気そうだね」
「はい、おはようございます皆山さん。今からお出かけですか?」
「そうなのよ、孫が調子悪くしてね。バスに乗って病院の方までいくことにしたの」
「それはまぁ、お大事にとお伝えください」
「優しいねぇ、今度うちの孫を紹介するよ。6歳になったばかりだがね!はっはは!」
「それでは、私は学校がありますので。皆山さんも体調管理は気をつけてくださいね」
皆山さんと朝挨拶するだけで私は良い気持ちになれる。
彼女は何を話しても聞いてくれる。私の数少ない友人と言える。
ママに初めて紹介した時はびっくりしてたけど、たまに和食をママに教える仲になってるし。
「運転手さん交通カードでお願いします」
「はいよ。ちょっと待ってね、切り替え切り替え」
ピッ!とタッチ音が鳴り清算が済んだ。
「よいしょっと。今日はこれでも見ましょうか」
いつも通りParallel Line Storyを開いて、友達の作り方と検索。
スクロールしていくと沢山あった。視聴数が一番高い物で、ラブッと指数の高い動画を選択した。
メモ帳を取り出して動画の内容を逐一メモしていく。
「次はサクラドオリ、サクラドオリ。28番さんと29番さん降車場です」
「駅から徒歩2分、この間に友人に出来そうな同級生を探すと良い。ですが不可能ですね」
時刻は8時45分。この時間に登校してくるものは先生くらいだが、朝礼で外していることが多い為実質1人である。
『学生番号2A-0145イメリア・スラース、入校許可』
校内に入る為の検査を通り抜けて五階4号室に向かう。
扉に手をかざすと簡易的なサーチが入り、解錠された。
「宇宙の彼方♪輝く星♪未知の領域♪探究の舞台♪知識の泉よ♪満ちる校庭♪誇り高く♪歩む我らが道」
鼻歌に熱を入れながら清掃機械の電源をオンにした。
「|次元通信端末(ディメンド)の充電は良さそうかな。一限目は異星コミュニケーション学ですし予習必須ですね」
私が予習をしている間にどんどん人は揃い、開始時刻の9時半になっていた。
「出席確認不可は武田とミラズンだけだな。授業始めるぞー、今日やるとこはケタルア語という三百光年先のケタルア星で使われている宇宙使用言語率No. 1の言語を前回の続きからやってくぞ」
A: シャランメルカ!エルキアノヴェラカ?
B: シャラン、ノヴェラ。エルキアリスカーリノヴェラ。
A: リオノヴェラカタルヴァ?
B: リオノヴェラエルキア。シャランケタルア。
「はい、これをシルヴェーラさん翻訳してください」
「ディメンドに乗ってないからわからないです!」
爆笑に包まれるが、真剣に受けてほしいと思った。
だが真剣に受けている私より、ふざけていてるシルヴェーラさんの方が友達が多いことを考えると、異星語よりもおふざけを理解した方がいいのかな?なんて思う日もある。
「Aさんは、やぁ君は宇宙間で友達を持っている?。Bさんは、やぁ友達よ、私は宇宙に友達を持っているとも!」
「正解ですスラースさん。ではその勢いで例文2も解いてください」
「Aさんは、その友達は星を持っていますか?。Bさんは、将来、友達は星を持つでしょう。私はケタルア語を話したいです」
「正解です。最後のBさんのところは私はケタルア語で話してみたいですと解釈するとより人間味が出るでしょう」
着々と進んでいき、人類が初めて異星人に出会った動画を観たりした。
「最後におさらいです。シャランは挨拶です、メルカは感謝の気持ち、リオヴァンは別れの時に。今日はこの三つを覚えてください。それでは少し早いですが授業を終わります」
先生が教室を出てすぐにチャイムが鳴った。
トイレを済ませて教室に戻る途中、掲示板に合格発表通知が貼られていた。
宇宙瞑想カウンセラー 合格者、2/906
宇宙風景造形アーティスト 合格者、1/1040
宇宙通信技術一級 合格者、30/208
宇宙通信技術二級 合格者、15/43
宇宙通信技術三級 合格者、102/237
宇宙言語プログラマー二級 合格者、63/100
宇宙言語プログラマー三級 合格者、300/405
「異星語言学はまだ発表されてないみたい。心配だなこの結果見てると」
「おやイメリアさんじゃないですか」
「松本先生おはようございます。ちょうど今試験結果の確認をしていました」
「未知領域研究の授業で受けさせた未開探検基礎知識検定をちょうど張るところだったけど、それかな?」
「すみません、異星語言学のほうです。自身がどうしてもなくて」
「君なら大丈夫さ。鈴木先生や四年生の子達とかなり遅くまで勉強してたじゃないか」
「そうですよね!よかったー」
「それに未開探索基礎知識検定の方も満点合格だぞ?就職はギャラクティック・イノベーションズ・インコーポレイテッドか?」
「私にGiiは無理ですよ。就活している四年生方にお話を聞きましたが、CGQSは確実と言われてた先輩方みんな惨敗したそうですし」
宇宙最先端が売りのコスモテック・ダイナミクス
宇宙探索が売りのギャラクティック・イノベーションズ・インコーポレイテッド
量子探査が売りのクァンタム・ネクサス・コーポレーション
宇宙通信が売りのステラーコム・テクノロジーズ
略してCGQSと言われている。
新卒で年収500万SUという超大手企業である。
「落ちた先輩たちから、なんで落ちたか聞いて対策をたてればいけるさ。話してなかったが俺実はステラーコムの社員だったんだぜ?スターユニットを地球に導入する時にかなり手伝ったりしてなぁ」
「SUって昔から世界の通貨と思っていましたけど、かなり最近だったのですね」
「まぁな昔は円とかドルとかややこしくて、それがよかった。けど政府の意向で完全に切替になってみたらこれが便利よ」
「エンって聞いたことあります。今だと資産価値が高くて一エンが200万SUになるとか」
「そうなんだよ。ちなみに先生は切替を知ってたから早めにエンやドルを集めて売り払ったりしてたらクビになったわけさ」
そんな聞きたくもない落ち話と共にチャイムが鳴った。
「みんな席つけよ。今日はケタルア星についてやっていこうと思う。300光年先行ったことあるって人いる?」
ちらほらとしか手が上がらない。それもそう、高いから。
遠いから、環境が違うから、それから移動時の負荷が重いから。
「まぁそうだよな。んじゃ知らない人も多いから一から説明してくぜ」
ケタルア星は希薄な大気を持ち、低酸素状態が特徴的。
多様な気体が混在し、硫酸のような激毒が広がる場所もあれば、高濃度の酸素で埋め尽くされている場所もあるらしい。
地表は広大な草原や小さな水域が広がり、高い山脈や峡谷が点在。生物多様性が見られ、植物相も異なるエリアによって変化するという。
場所によっては地球と変わらない環境であると締めくくったが、あくまで観光用に整備しただけとのこと。
「ディメンドに共有してるからって居眠りはすんな。はい、この赤丸で囲った範囲、ケタルア星は低酸素状態というところね。また硫酸の海もあります、これは星の起源で習ったと思うから特には追求しないけど」
元からの有人星でも数少ない、過酷な生存区域を持つ星の一つ。
観光が盛んになってからは規則がしっかりと作られて観光客向けに開放されたエリアと、原住民向けエリアに区分けされている。
「ちなみにケタルア星は書類上、青色とあるが実際は虹色に見える。これは大気の流れや未知の振動エネルギーによる衝突で反応が起きているとされいる。先生も仕事で一度見たことあるけど結構綺麗でぞ」
地球と比較して1.1倍ほど大きいが重力のかかり方や質量はさして変わらないらしい。
「ワォ、そろそろ時間だな。試験結果の張り出ししてるから後で確認しとけよー、左端の振動符号で確認しとけな?」
先生が教室を後にした。早速外に出て掲示板に貼られた試験結果を確認しにいく。
試験結果が張り出されてから一週間以内に振動符号を読み取って申請しないとライセンスが付与されないからだ。
「ディメンドの角で読み取るシステムは昔からずっとなのかな」
なんとなく疑問に思いつつも読み取り結果確認とライセンス申請を行った。
「よしお昼ご飯食べにいかないと昼休みがなくなっちゃう」
結局一日中、学校内を徘徊したが友達を作れずに帰宅することになってしまった。
私たちと言っても目の前にいる9人は知らない人。
深刻な顔をしているが、私には伝わる感情は平穏そのもの。
『改めて私はソラノ。次元鍵のリーダー。能力は空時共振者よ』
一際目立つ青い髪の女性がそんなことを高らかに宣言した。
『何を改ってんだリーダー』
チャラい男が聞き返した。どうやら予定外のことだった。
『まぁいいだろ。リーダーの決意だ。俺らも名乗ろうぜ、次元鍵副リーダーのクロノスだ。能力はクロノス』
みな、なぜか名前を宣言した後、能力と称してまた名前を宣言している。
私も同じようにやらなきゃ。
『次元鍵のイメリアです、能力はイメリア』
順次自己紹介が行われていく。
『これで最後にできるなら最後にしたいからさ、初心に帰ったような緊張感で挑むよ』
『この世界もダメだったけど、活路はしっかり見えたんだろ?』
『うん。だけどごめんねみんな、特にイメリア』
突然話をふられて咄嗟に答える。
『うんうん、次の世界でも私なら見つけれるしまた逢えるから!』
次の世界?何を言っているのか自分がわからない。
「んん、また夢?最近はリアルな夢ばっか見る」
でも、一人称な夢は久々に見た。
「おはようママ」
「おはようイメリア、ほら涎拭いて。ミルクでよかった?」
「うん砂糖多めでお願いね」
椅子に腰掛けて朝ごはんを食べる。
味はいつも通りだけど飽きない美味しさがある。
「いつもに増してポーッとしてるけどまだ夢現かしら」
「最近自分から意識が抜けて気付いたら夢見てるって話したでしょ?今日は自分視点で夢を見てたからなんか違和感あって」
「あらそれはいいことじゃないの?どんな夢だったのかしら」
「それがね大勢の人たちと約束をする夢だったわ」
「いい傾向ね、きっとあなたが大きな目標に立ち向かうことを示しているわ」
「そうだといいな……私を理解してくれる人が現れると」
ご飯を食べ終えたので歯磨きを始めた。その間にママが髪を整えてくれる。
「あんたの髪ってどれだけ乱雑でも絡まらないわよね。透明で幻想的……あとはやっぱり友達よね、高嶺の花って思われているせいで出来ないのは可哀想だわ」
「ママ大丈夫、今日頑張ってみる。早くママに友達紹介したいから」
透明とも取れる幻想的なドレスを纏い外へ出た。
「イメリアちゃんおはよう、今日も元気そうだね」
「はい、おはようございます皆山さん。今からお出かけですか?」
「そうなのよ、孫が調子悪くしてね。バスに乗って病院の方までいくことにしたの」
「それはまぁ、お大事にとお伝えください」
「優しいねぇ、今度うちの孫を紹介するよ。6歳になったばかりだがね!はっはは!」
「それでは、私は学校がありますので。皆山さんも体調管理は気をつけてくださいね」
皆山さんと朝挨拶するだけで私は良い気持ちになれる。
彼女は何を話しても聞いてくれる。私の数少ない友人と言える。
ママに初めて紹介した時はびっくりしてたけど、たまに和食をママに教える仲になってるし。
「運転手さん交通カードでお願いします」
「はいよ。ちょっと待ってね、切り替え切り替え」
ピッ!とタッチ音が鳴り清算が済んだ。
「よいしょっと。今日はこれでも見ましょうか」
いつも通りParallel Line Storyを開いて、友達の作り方と検索。
スクロールしていくと沢山あった。視聴数が一番高い物で、ラブッと指数の高い動画を選択した。
メモ帳を取り出して動画の内容を逐一メモしていく。
「次はサクラドオリ、サクラドオリ。28番さんと29番さん降車場です」
「駅から徒歩2分、この間に友人に出来そうな同級生を探すと良い。ですが不可能ですね」
時刻は8時45分。この時間に登校してくるものは先生くらいだが、朝礼で外していることが多い為実質1人である。
『学生番号2A-0145イメリア・スラース、入校許可』
校内に入る為の検査を通り抜けて五階4号室に向かう。
扉に手をかざすと簡易的なサーチが入り、解錠された。
「宇宙の彼方♪輝く星♪未知の領域♪探究の舞台♪知識の泉よ♪満ちる校庭♪誇り高く♪歩む我らが道」
鼻歌に熱を入れながら清掃機械の電源をオンにした。
「|次元通信端末(ディメンド)の充電は良さそうかな。一限目は異星コミュニケーション学ですし予習必須ですね」
私が予習をしている間にどんどん人は揃い、開始時刻の9時半になっていた。
「出席確認不可は武田とミラズンだけだな。授業始めるぞー、今日やるとこはケタルア語という三百光年先のケタルア星で使われている宇宙使用言語率No. 1の言語を前回の続きからやってくぞ」
A: シャランメルカ!エルキアノヴェラカ?
B: シャラン、ノヴェラ。エルキアリスカーリノヴェラ。
A: リオノヴェラカタルヴァ?
B: リオノヴェラエルキア。シャランケタルア。
「はい、これをシルヴェーラさん翻訳してください」
「ディメンドに乗ってないからわからないです!」
爆笑に包まれるが、真剣に受けてほしいと思った。
だが真剣に受けている私より、ふざけていてるシルヴェーラさんの方が友達が多いことを考えると、異星語よりもおふざけを理解した方がいいのかな?なんて思う日もある。
「Aさんは、やぁ君は宇宙間で友達を持っている?。Bさんは、やぁ友達よ、私は宇宙に友達を持っているとも!」
「正解ですスラースさん。ではその勢いで例文2も解いてください」
「Aさんは、その友達は星を持っていますか?。Bさんは、将来、友達は星を持つでしょう。私はケタルア語を話したいです」
「正解です。最後のBさんのところは私はケタルア語で話してみたいですと解釈するとより人間味が出るでしょう」
着々と進んでいき、人類が初めて異星人に出会った動画を観たりした。
「最後におさらいです。シャランは挨拶です、メルカは感謝の気持ち、リオヴァンは別れの時に。今日はこの三つを覚えてください。それでは少し早いですが授業を終わります」
先生が教室を出てすぐにチャイムが鳴った。
トイレを済ませて教室に戻る途中、掲示板に合格発表通知が貼られていた。
宇宙瞑想カウンセラー 合格者、2/906
宇宙風景造形アーティスト 合格者、1/1040
宇宙通信技術一級 合格者、30/208
宇宙通信技術二級 合格者、15/43
宇宙通信技術三級 合格者、102/237
宇宙言語プログラマー二級 合格者、63/100
宇宙言語プログラマー三級 合格者、300/405
「異星語言学はまだ発表されてないみたい。心配だなこの結果見てると」
「おやイメリアさんじゃないですか」
「松本先生おはようございます。ちょうど今試験結果の確認をしていました」
「未知領域研究の授業で受けさせた未開探検基礎知識検定をちょうど張るところだったけど、それかな?」
「すみません、異星語言学のほうです。自身がどうしてもなくて」
「君なら大丈夫さ。鈴木先生や四年生の子達とかなり遅くまで勉強してたじゃないか」
「そうですよね!よかったー」
「それに未開探索基礎知識検定の方も満点合格だぞ?就職はギャラクティック・イノベーションズ・インコーポレイテッドか?」
「私にGiiは無理ですよ。就活している四年生方にお話を聞きましたが、CGQSは確実と言われてた先輩方みんな惨敗したそうですし」
宇宙最先端が売りのコスモテック・ダイナミクス
宇宙探索が売りのギャラクティック・イノベーションズ・インコーポレイテッド
量子探査が売りのクァンタム・ネクサス・コーポレーション
宇宙通信が売りのステラーコム・テクノロジーズ
略してCGQSと言われている。
新卒で年収500万SUという超大手企業である。
「落ちた先輩たちから、なんで落ちたか聞いて対策をたてればいけるさ。話してなかったが俺実はステラーコムの社員だったんだぜ?スターユニットを地球に導入する時にかなり手伝ったりしてなぁ」
「SUって昔から世界の通貨と思っていましたけど、かなり最近だったのですね」
「まぁな昔は円とかドルとかややこしくて、それがよかった。けど政府の意向で完全に切替になってみたらこれが便利よ」
「エンって聞いたことあります。今だと資産価値が高くて一エンが200万SUになるとか」
「そうなんだよ。ちなみに先生は切替を知ってたから早めにエンやドルを集めて売り払ったりしてたらクビになったわけさ」
そんな聞きたくもない落ち話と共にチャイムが鳴った。
「みんな席つけよ。今日はケタルア星についてやっていこうと思う。300光年先行ったことあるって人いる?」
ちらほらとしか手が上がらない。それもそう、高いから。
遠いから、環境が違うから、それから移動時の負荷が重いから。
「まぁそうだよな。んじゃ知らない人も多いから一から説明してくぜ」
ケタルア星は希薄な大気を持ち、低酸素状態が特徴的。
多様な気体が混在し、硫酸のような激毒が広がる場所もあれば、高濃度の酸素で埋め尽くされている場所もあるらしい。
地表は広大な草原や小さな水域が広がり、高い山脈や峡谷が点在。生物多様性が見られ、植物相も異なるエリアによって変化するという。
場所によっては地球と変わらない環境であると締めくくったが、あくまで観光用に整備しただけとのこと。
「ディメンドに共有してるからって居眠りはすんな。はい、この赤丸で囲った範囲、ケタルア星は低酸素状態というところね。また硫酸の海もあります、これは星の起源で習ったと思うから特には追求しないけど」
元からの有人星でも数少ない、過酷な生存区域を持つ星の一つ。
観光が盛んになってからは規則がしっかりと作られて観光客向けに開放されたエリアと、原住民向けエリアに区分けされている。
「ちなみにケタルア星は書類上、青色とあるが実際は虹色に見える。これは大気の流れや未知の振動エネルギーによる衝突で反応が起きているとされいる。先生も仕事で一度見たことあるけど結構綺麗でぞ」
地球と比較して1.1倍ほど大きいが重力のかかり方や質量はさして変わらないらしい。
「ワォ、そろそろ時間だな。試験結果の張り出ししてるから後で確認しとけよー、左端の振動符号で確認しとけな?」
先生が教室を後にした。早速外に出て掲示板に貼られた試験結果を確認しにいく。
試験結果が張り出されてから一週間以内に振動符号を読み取って申請しないとライセンスが付与されないからだ。
「ディメンドの角で読み取るシステムは昔からずっとなのかな」
なんとなく疑問に思いつつも読み取り結果確認とライセンス申請を行った。
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