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私は知らないニャ☆

第六話 故郷の味

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冒険者ギルドに戻り、依頼達成を告げ素材カウンターへと向かった。素材カウンターは幸いすいていたので全て提出し無事完了と思いきや

「毎度見ても驚くなぁ。まぁ聖水まみれだが」「とりあえずボア四頭と、追加でオーガ3体!」

周りの冒険者達が騒然とする。それもそのはず、森でオーガが出現しB級下位三位以上が対応に出たのだから。
逃げた冒険者が人間と獣人二人のパーティーも遭遇して私たちを逃す為に奮闘していると報告したせいだ。

「まーだギルマス案件か。俺はしらねぇーぞ」「へへ、勇者パーティーなので」

慣れた手つきでベルを鳴らすカウンターの男。慌てて降りてきたせいか息を切らし、いまだに言葉を出せないギルドマスター。

「っ……ふぅ……、オーガだな見事に」

やり場のない怒りと焦りとその他諸々を押し殺し、勇者を睨みながら状況を聞くギルドマスター。

「確かに逃げたパーティーは潰れた足を完全に治してもらったと言っていたが……その時点でお前達と気付くべきだった」「緊急時だったので、もしギルドマスターに不具合が生じるなら僕が直接謝罪しに行きます」「いや、若いもんにその責は負わせられん。それに感謝はしておるが、わしが一番怖いのは特例が一般化して危険行為に走る冒険者が増える可能性だ」「マーソウデスヨネ」

D下位一位にランク上げとして止まることになった。これは特例ではなく無理やり依頼としてオーガの実態調査(D下位二位相当依頼)を勇者パーティーの未来を見越して依頼していたと言うことにした。

計三件の依頼で最低でもC中位の実力があると判明したが、飛び級を何回も繰り返してはということでこの処置である。

「オールリア達が帰ってきたらびっくりするよね?」「そりゃもう驚くでしょ。いや、バースドールとサナサナなら見越してこの結果でしょうね。カイナルはどう思う?」「そうだね、きっと知っていると思う。向こうも何かやらかしている可能性だってある、僕らが驚かなければいいけど」

街で食材を買い、夜ご飯の仕込みを始める。カイナルとミーヤも手伝おうか?と顔を覗かせたが、今回の功労者2人を煩わせるわけにもいかない。

「小麦粉と水をこねてこねて。もっと強く、もっと強く。マジックシールドがまさか手袋の代わりになるなんて」

毛が食事についても困るのでと思い考えついた結果、マジックシールドを手につけたのだ。
マジックシールドでもちろん台座も作っている。

「叩いて伸ばして、こねてこねて。ティーベルがいたら付与してもらって早く作れるかもしれないけど、料理にそんなの使ってたら大変なことになる」

平く伸ばして包丁でタンタンと斬っていく。鍋の中で煮込まれている食材を見る。

「昆布はあった、味噌……味噌ってない。醤油もない。味付けがない!いや、あるにはあるけど……村で密かに作った大豆系調味料は臭いでみんなやられたし。受け入れられないかも?」

なんちゃって醤油、種麹を取るのに苦戦を強いられたが何とか作れたもの。味は塩が貴重だったのでかなり薄めだが問題はないだろう。

「自然とお肉ベースになるよねー。よーし、ここで投入。どどどーん」

帯状の白いナニカを鍋に入れていく。自然と表面についた小麦粉が溶けてとろみがつき始めたら完成。
村で育てていたツルムラサキを茹でて搾りざく切りにして軽く冷やす。

「よーし完成。あとは鍋に蓋をして。ツムラはれいぞーこー」

魔石に氷属性を付与した物を上に入れることで、箱全体を冷やす昔ながらの冷蔵庫。
魔石の効果は一般家庭なら3日。付与師も魔女もいるので特製の50日である。

「あと空いた時間に、揚げ物つくるか。ニンニクの代わりに野蒜使ってみたけど、まぁいけなくもない味になったわけで」

村では毒物扱いされている食材なので、根こそぎ取ってきても怒られなかった。

「ちょんっと。温度良し!」

実はこの国、頭がおかしいのかというほど油が安い。いや、そもそも油の歴史なんて知らないけど。この文明レベルでコレだけの油を安く使えるなんて。

「その分食材は高いからどっこいどっこい?んー、まー考えても分からないしいっか」

高い安いと言ってもソノノ村では物々交換しかしていなかったので。大臣に頼んで買ってきてもらった量を見て推測している。
油は壺単位、肉は両掌に乗るほどの肉塊が何個か。野菜は籠いっぱい。

「よく分からない葉っぱとかも全部やっちゃえーい!」

4人が帰宅するころにはとんでもない量の食事が完成していた。

「お、何かのパーティーかの?」「いえ!調子乗って作りすぎました!」

見たことのない食事にみんな固まっている。バースドールについては驚愕のあまり固まって動けない。

「えっと故郷の料理でーす!昇進祝いもかねてちょっと頑張りすぎちゃいました」

ミーヤの目が明らかに怖い。そりゃそうだ、臭いでわかる。野蒜含め獣人が本来食べない食材ばかりである。

「お、お前……」「気にしないでください!食べて試しました!」「そうか、」

突っ込むのをやめてみんなでワイワイと食事を開始した。
後で冒険者ギルドに入った四人は階級が上がっていたことを伝えられ、さらに自分たちの解決した問題でD上位一位には収まらないので仮ダンジョンを明日にでも受けなければいけなくなったという。

「これは、うまいぞ!何という食べ物だ」「草の料理もかなり絶品ですよ」「カラアゲです!そっちはツルムラサキです!それから秘伝汁!」

半分くらい聞くのを諦めたのか、美味い美味いと食べ出すバースドール。
他のメンバーも口に合ったようだ。ティーベルだけは頑なに鎧のままだ。

「エールに合うな!このカラァゲというものは」「ありがとうございます!オールリアには私の分もあげちゃいまーす」「いいなオールリアは。僕もコレ気に入ったから作り方を今度教えてください」「いいですよ~」

秘伝汁は少し重かったようだ。小麦粉の凝縮体なのでそれもそうだ。味付けは良かったが、改善点が必要なようす。
ツルムラサキはなんちゃって醤油が効いたのか菜食メインのバースドールがぺろっと平らげた。

「明日からの当番が心配な食事ですね」「ですね」「うむ」

みんなと目が合う。私としては異論なし。

「安心して!私はバリバリ作れます!というか厨房私もらっていいですか?!管轄権!」「ヘイティアがいいなら問題ないが」「やったー!!!」

昔かの偉人が言った気がする。異世界の飯は自分で作れと。
食事を終えて仮ダンジョン攻略の話も終えて布団へ帰宅した。
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