転生転移を司る女神は転生する

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選抜式2

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蠢く悪の気配に気付く術もなく始まった選抜式。

「最初の一年選抜式はぁぁ!!この乱世に降り立った勇者、一年黒組のメェルアー・オレンズだ!!」

メェルアーの登場にギャラリーが湧く。

「ん、頑張ろう」

「対するはぁ!双剣で俺の横に立つものはいない!一年青組のピープ・アドロスだ!!」

同じ青組と見られる生徒達から歓声が上がる。

「こんなガキ倒してとっとと闘技祭本番も勝ち抜く」

両者が構えたのを合図に、審判が降り立った。

「ルールのおさらいをする。魔術・剣術の両方を使い相手をダウンさせた方が勝ち。使用魔術などの制限については、この空間に貼られた結界により定められている。各自試しながら探るように」

審判の手が上がった、戦闘開始の合図だ。

「いくぞクロスソード!!」

「風の障壁、ファイアスピア、アイスソード」

攻撃をうなる風で受け止め、止まったピープの脚をファイアスピアで固定。

「はぁぁぁ!!!」

アイスソードで斬りつけるメェルアー。

「魔術くらい想定済みだ!!火焔よ程走れ!」

右手に握られた剣から焔が煌めく。

「あいすとふぁいあのあいしょうはさいあく」

加速して後ろへ回り込むメェルアー。

「いまだ!水よ、大気を包め」

巨大な水の塊にメェルアーは閉じ込められる。

「おっと!青組所以水魔術だぁぁ!!黒組にも劣らない魔術適性と操作性を誇る青組ならではの捕縛術!これにはメェルアー選手も中々動けない」

「(呼吸が薄れたお陰で私で闘えますね)」

水球の中で魔術を練る。
ピープは勝ち誇った顔でこちらを見ている。

「俺の特製水球の味はどうだ、中で水が暴れ回って体力を削ぎ、息の無くなるまで捕縛を辞めない無敵の檻!」

「(この手は煽ると逆上して次の手に出る。そこを叩く)」

変顔をして手を振るメェルアー。

「な、試合の途中でおちょくってくるだと!動けない状態だからって何も仕掛けなかっただけだ。水の魔術よ、今槍の形状を持って敵を刺殺しろ!ウォーターランス!」

「ひかりのまじゅつよ」

水球にランスが突き刺さるのとほぼ同時に放たれた光魔術が、水を纏ってピープへと飛んでいく。

「水よ、我を守れ!はぁ、はぁ…あの状態で詠唱だと!」

障壁に魔力を回しすぎたせいかピープの水球は霧散した。

「魔力もうそろそろ尽きるんじゃない?」

メェルアーが剣を構えてピープに斬りかかる。

両者習っている剣術は同じだが、力はピープが上、技もピープが上。

攻撃は確実にピープの方が当てている。

「魔力が尽きても剣がある!これが剣魔闘技祭のいいところだ!」

「両者攻防が鳴り止まない!今年の一年生は初発から熱いぞ!!」

「魔力が切れたら剣も弱くなることを知らないなんて」

強化魔術と認識阻害魔術を同時に発動するメェルアー。

突然上がった腕力と、さっきまで取れていた間合いの取れなさにピープは困惑の顔を浮かべる。

「おかしい、なんで押されているんだ」

「だからいったのに。ただの剣術なら勝ててたかもね」

極限まで強化された剛腕で振るう剣は容易く相手の剣を切り落とした。

「ま、まいりました」

剣を失ったピープは手を上げて降参を申し出た。
魔力が尽きていなければまだ策はあっただろうが、尽きた今はただの子供に過ぎない。

「勝者はぁぁ…メェルアー・オレンズ!!!!」

どっと歓声が上がる。

拍手と歓声の中、控え室へと帰るメェルアー。

「すごかったよメェルアーちゃん!」

「ありがとう、アラミシアが特訓に来てくれたから」

魔力と体力を回復するためのポーションを飲み干すメェルアー。

一日最大五本、服用本数に関わらず次回服用まで五日は置くこと。

制約が多いポーションだが効果は高い。

服用後に一時間ほど仮眠を取ると九割型回復する優れものである。

剣魔闘技祭では選別戦とそれぞれで最大数が手渡される。

これは不戦勝などで上がった人などと対等に戦えるための処置とも言われている。

「じゃぁわたしはねる、ふしんしゃがきたら私の髪の毛をひっぱって、このあたまのうえにはえてるやつ」

ぴょこんとアホ毛が出現した。

「う、うん?わかった。出場前になっても起きなかったらひっぱるよ」

「りょうかいした」





「勝者!一年青組のカラバス・ドン・ディーラ!!!」

「勝者!一年黄組のヲートル・ジュピナーザ!!!」

試合はどんどんと進んでいき、第二幕へと移った。

「メェルアーちゃん出番来たよ」

アラミシアがアホ毛を引っ張ると、パッと飛び起きて顔をふるふるとふり機能を開始した。

「うん、あの薬のおかげでばんぜん。わたしがかちあがって勇者のじつりょゆをみせつける」

「噛んでるよメェルアーちゃん。ふふ、楽しみにしてるわ 」

アラミシアから装備を受け取り、会場へ足を運ぶメェルアー。

光溢れる廊下を抜けて、歓声の響き渡る闘技場へと出た。

「あいては、青組のカラバスなんとかか」

「お前か"メー"ルアー・"ウォ"レン"ジ"ってのは」

「訛りが汚くて聞いてられない」

バチバチと睨み合う二人をよそに、開始の合図が送られた。

メェルアーは魔術で生成した剣こと魔剣と、魔術を纏った剣こと魔剣の双刀で斬りかかった。

「読めない動きだがっ!逆にそっちも慣れてないだろ!」

一振りで二本を弾き、一歩踏み込むように突き技を放つカラバス。

「わぁっ、危なかったってて…ぬれた」

切先から放出された氷の槍が体に当たったメェルアー。

「なぜ効いていない!だが、まだまだ隠し玉はあるぜ!!」

カラバスが振るった剣から魔法陣が綺麗に展開されていく。

「水魔術の適性が俺レベルになれば、無詠唱でも魔法陣展開可能なんだよ!!」

メェルアーは魔術を避けずに突撃を試みる。

「わたしはまけない。光の魔術よ、闇の魔術よ、火の魔術よ、水の魔術よ、土の魔術よ、風の魔術よ、雷の魔術よ」

流石の量に気圧されながらも、7属性魔剣を出現させた。

「くそ!くそ!」

剣を振り氷の槍を飛ばすカラバスだが、メェルアーの体に当たるたびに槍は霧散していく。

「さぁ敵をきりころせーせぶんずなんとかー!」

腕、足、首、腹、手、カラバスはズタボロに斬り裂かれるがまだ剣を下ろさない。

「はぁ、はぁ……魔術を無詠唱展開するんだから耐性くらいは上げているんだよ」

確かに斬られたというより擦れただけ。
しかし、光魔術の当たった左手は明らかに出血していた。

「なるほど、ていこうまじゅつ?とやら」

メェルアーは飛び上がり、空中で魔剣を召喚した。

「わがけんは炎となりて、えっとなんだっけ?!あっつ」

だが何かやろうとしていた魔術が不発し魔剣ごと手が燃えたまま地面に落下した。

「試合中に、舐めやがって!はぁぁぁ!!!!」

これを好機と見たカラバスが剣で突撃してきた。

「うげぇっ」

メェルアーの腹を剣が横殴りにし、そのまま転がっていく。

「あぶない、場外になる所だった」

「はぁ?これ剣だぞ、なんで斬れないんだ!」

「かんたん、しんたいきょうか」

「身体強化は一年じゃ教わらないだろ!!」

起きがったばかりのメェルアーに剣が襲いかかる。

「とぉ!やぁ、はぁぁ!!てい!さっ!ふぅ!てい!」

カラバスの腹を思いっきり蹴飛ばしてメェルアーが口を大きく開けた。

魔力が蓄積されていき、五重に重なった魔法陣から白熱の火球が放たれた。

「水の魔力よ、我が力に呼応して肉体を守り抜け!!」

慌てて魔術を展開するカラバス。

白煙が会場を包み、盛り上がっていたはずのギャラリーさえシーンと声を出すのを忘れていた。

「はくえんがじゃまでみえない、魔力……風の魔力よ、我が力に呼応して空を裂け。すとーむかったー!!」

手のひらに作られた風の刃を手裏剣投げのように飛ばすメェルアー。

二手に分かれた風刃が煙を切り裂いた。
煙のはけた先には倒れて動かないカラバスが居た。
闘技場に仕込まれた条件式防衛魔術により、護られてはいるものの、顔が青ざめて全身が細くなっている。

「おっとカラバス選手!魔力切れによる魔術行使ミスでダウン!勝者!メェルアー・オレンズ!!」
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