転生転移を司る女神は転生する

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勇者

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メェルアーはまた王宮に連れられていた。

「うげムリアスかいちょう」

勇者お披露目式であるが俗世をろくに知らないメェルアーに変わり
いや国際的面もあるだろう、ムリアスが着任の宣言を行う旨を聞かされたのである。

「オレンズ君、緊張することはない」

いつも通り無表情、まるで誰かの顔を貼り付けたように変化ない。

「きんちょうしてない」

開かれた王宮の庭には入り口の門に至るまで人で埋まっていた。

「このフェンスこえて逃げたらどうなる?」

「3階だぞ!まったく国際案件で必要だと謹慎中ながら来てみたらまたお前か」

「うん、今日が発表式なのきいてない?」

「聞くもなにもないだろ。謹慎中は王命以外外界の情報はいれない、常識だぞ」

「コレばかりは大臣に関心を得る。大抵は謹慎を余暇と勘違いして遊ぶ物だからな」

「ところでこんかいがっこう休んでるけど私大丈夫なの?」

メェルアーが大臣に問いかける。

「その心配は無用だ。勇者に選ばれたと言うことは、前例は無いが扱いは公務とすると決まった」

「なるほど、校務」

「さて世間話はそろそろ終わりにしてお披露目式の開始としよう」

ムリアスが懐中時計をしまい、不可視の魔術を解いた。

「お、おい!あれ」

「オローの第二王子様が勇者なのか?」

誰ともなく声を上げると、波紋のように広がっていった。

「静粛に」

大臣が手を上から下に振ると民衆は騒ぐのを辞めた。

「国立魔術学校の生徒にて、勇者と思われる能力の発現。詳しい調査と本人の意思による名乗りによって本日、この場を借りて御披露目式をすることが決まった。このめでたい式を取り仕切らせてもらうムリアス・オローだ」

背の低いメェルアーの為に台が運ばれてきた。

「過去に魔王を討ち取りし勇ましい力を我が物とせず、世界平和に尽くすと誓われた」

ムリアスの長い話は整っていない支度の補填であったようだ。

「メェルアー・オレンズ、手を振るだけだ。緊張せず普段通りに段に立つんだ」

「あい」

丁度演説が終わったようでムリアスが段へと誘導をした。

「メェルアー・オレンズ!!彼女が勇者である」

歓声が沸き起こる。
しかし批判も飛び交うのは常。

「こんなガキが勇者ってのか!」

「力を見せろよな?第一に王の決定とか言う割に本人いないじゃないか!」

メェルアーは特になにを言うでもなく手を振る。

「王命だと言うに我が国民と来たら…許せん、顔と名前を覚えて後で厳重注意だ」

大臣の方が怒りに満ちているほどだ。

「落ち着いてください、コレは想定内でしょう」

前の勇者御披露目式は魔王全盛期で、被害が多い中の発表であったにも関わらずに石を投げる民衆がいた。
いざ成果を上げれば手のひらをクルリと返す。

「一般的な行動ですよ。勿論怒りは感じますが」

冷静なムリアスだが、握り拳から血が滴る。

そんな中、メェルアーは魔術を構築し始める。

「おいメェルアー・オレンズ!仮にも王宮だぞ、壊すつもりか」

「いやちがう勇者である証明をする」

濃縮された魔力は時に実態をもって見える。

「あれは女神様?」

「確かに文献で見た通りの女神様だ」

『この地に住まう全国民よ、私が選別して力を授けたものに不満があるそうではないか』

この国では女神信仰が一般的である。

それを勝手に型作るのは不敬を通り越して異端者として葬られる事もあるだろう。

だが誰もがそれは本物だと見間違うほどに精巧で、濃縮されている。

『メェルアー・オレンズに力を授けたのは民衆に石を投げさせるためではない。再び世を厄災の渦に陥れようとする魔王への対抗処置である』

浮遊魔術で浮かび上がるメェルアー・オレンズ。

「この場でまだ反論があるならまおうのぶかとみなして最大限に溜めた魔力をはなつ」

『辞めなさい』

まるで偶像の女神がメェルアー・オレンズをいなしたように見せる。

その為に溜まった魔力の分散と浮遊魔術の解除。

そして落下。

ムリアスが辛うじて受け止めて立たせた。

『幼さゆえに危険であることはわかります。ですがドス黒い陰謀に塗れた民に力を渡す事の方が危険です』

そう言い残すとスッと消えた。

結果として民衆の中に入ることとなったが歓迎ムードである。

「勇者の没後、一切姿を見せなかった女神様をお目にかかれるとは」

大臣は感服し、他教徒のムリアスでさえまだ余韻に浸っていた。

「さいん?いいよ」

メェルアーは平常運転で民衆をさばいていった。

王宮で夕食を食べ寮に戻ったメェルアーは魔力切れを起こし倒れ込んだ。

「ちょっと?!御披露目式と聞いていましたがなにがあったのですか」

「ぼうとのちあんつ。かこのゆうしゃのまねをした」

「なんですって?!暴徒って、怪我はしませんでした?」

「女神召喚で魔力空っぽ」

「それでこんなに遅かったのですね」

「王宮のご飯がおいしくてずっとたべてた」

「それは当然ですわ。王宮は名前だけで実際は別荘のようなものですから」

「つまりおーさまの休暇よう」

「そうですわね。普段から安全のために簡素な物ばかり食べているので、長期休暇中はあの場所で一族揃って楽しむのですわ」

「なるほど、いつもあれを食べているのかと思っていた」

「一食あたり2万パーパルスは軽く飛びましてよ。それから新作料理や新しい食材の味についても議論するので、一流料理家の玩具にされているような物ですわ」

「あのシェフがその期間しかしょくじをつくらないのはもったいない」

少し寂しそうに下を向くメェルアー。

「普段は都内で調理していますわ。一食で一万二千パーパルスなので中々入れた物ではありませんが」

「勇者なだけで月々16まんパーパルスはいって半分はアラミシアに、それで残りのななまんのうち半分は礼拝堂に、にまんごせんがつきばらい。月に一回ならたべにいける!」

「計算がめちゃくちゃですし、そんなにお金を使って破産しますわよ!」

「大丈夫、まだつかってない17まんがある」

「寮内とはいえあんまりお金の話もよくありませんのよ!メェルアーは基礎知識から入れ込む必要がありますわね!」
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