10 / 32
新世代
しおりを挟む
この週はこの国にとって、世界にとっての重大ニュースいくつも発表された。
"副属性に区分される二属性の適性は、魔王と勇者それぞれどちらに近いかを表す"
"魔王滅亡後、新魔王正帝式完"
"国立魔術学校生徒内、勇者代替見つかる"
"王宮関係者語る。勇者の実情"
市政に出回る情報はこの程度であったが、コレが波乱を巻き起こした。
「勇者を一目見ようって学校の外が騒がしいってことね」
「うん、まったくめいわくなえいゆーもいたものだ」
少し誇らしげなメェルアーにアーフェリアはお前が言うなと言う顔をする。
色々あった数日前が嘘のように明るい教室。
担任はここ数十年の記憶を失っていた為、故郷へ送還。
モーヤン家は直接的関係が見つかった為、除名及び処刑。
新しい先生として寮長が担任になったクラスは一段と騒がしい。
「お前達、今日は待ちに待った実技の時間だ。各自着替えて中庭に集合」
「メェルアーどうされますの?」
「どうって、ゆうしゃ?」
「えぇ、最初は型ですが練習内容が進めば実践に入りますわ」
「うちのクラスにそんなつっかかるやからはそんざいしない」
「幸いなのは血気盛んな男子と別ということですわね」
運動着に着替えて外へ出た二人。
「君たちを担当するムリアスだ。気軽にムリアス先生と呼んでくれ」
男子と女子で教官が違う。
どちらかを担任が受け持ち、もう片方も専門の先生が携わるはず。
黄色い声をあげる女子達とは裏腹に嫌そうな顔をするメェルアー。
「僕は確かにオロー大国の人間だが、教えるのはオルスト式だ」
オルスト式とオロー式では初手の構えから違う。
盾を使う前提のオロー式では片手剣メインに、小回りの効いた立ち回りとガード前提の捨て身な技。
オルスト式は両手持ちの構えや片手持ちの構えが混雑し、ガードではなくパリングメインとなっている。
「まずは基礎の型から。四日間で百通り叩き込んだ後、軽い弾き合い。私への打ち込み、最後は生徒同士だ」
列に並び声掛けをしながら型を練習していく。
型は基本系守りから始まる。
初日守り。二日目に流し、三日目攻撃、四日目に複合とのこと。
「メェルアー軸がズレてますわ」
「けんにがて」
ムリアス同様に注目を集めるメェルアー。
前回の一件は一部を除き全ての情報を開示している。
学内や関係者の皆に名前が広まっているが、外に出ても問題はない。
一週間後に国王より正式発表が決まっているからだ。
「あれが勇者ですって、笑えますわ」
「剣を振るうというより剣に振られてますね」
ヒソヒソと話し声が聞こえる。
「だいじょうぶアーフェ。型は丸暗記してきたから」
「そう、ならいいのですが。寮に帰ってからもお勉強ですわね」
「うぐっ」
「君達。喋るためにここに居るのかい?多少の私語は許すが、出来ない人間に教えるでもなく笑うことは騎士道に反するぞ」
ムリアスの言葉には従順なようだ。
「10、11、12!もうだめ、たいりょくつきた」
「だいぶ様になりましたわね。休憩時間に少し食い込んでしまいましたが」
「たいじゅつまでならうとわたしのからだは持たない」
「メェルアーちゃんなら大丈夫だよ。はいお水」
アラミシアが水入りのコップをメェルアーに渡してきた。
「かんしゃ」
「あなたは確かカナール家の」
アーフェリアがアラミシアに気付き声を掛けた。
「アラミシアとお呼びください、アーフェリアさん」
少し距離を感じる応答に気不味い顔を浮かべるアーフェリア。
「えっと、ふたりともなかわるい?」
「初対面ですよ、わたしなんか公爵様はおろか伯爵様すらおめにかかれません」
「えぇアラミシアさんよろしくお願いしますわ」
「あらためてしょうかいする。私の友達1号のアーフェと3号のアラミシア」
「今したばかりですわ?!」
「あらためてよろしくね」
「そうだアラミシア、ついに原本をしいれた」
「えっ!私自由行動の日に都内全域を捜したけど見つからなかったよ」
「ふふふ、くろいるーとさ」
「ワークメリー商会にあやまりなさい。正規ルートですわ」
「ワークメリー商会の露店ですか、さすがに一人で入るのは恥ずかしかったのでいってなかったです」
「こんどいく?」
「えぇ行きましょう!アーフェリアさんはどうされますか?」
「私はいいですわ」
若干のモヤモヤを抱えたまま休憩時間は終わってしまった。
「君達もだいぶ見違えたね。もちろんお世辞なんて言わない、本心だとも」
ムリアスは歩きながらそれぞれに指摘を入れていく。
「オレンズ君はもし時間があるなら基礎体力からやるといい。剣の動きを見れば理解しているのは一目瞭然、しかし身体がそれについていっていない」
「こんなの解放したらよゆー」
「その解放をする為にもしっかりと鍛えておけ。一の器に千の物は入らない」
その言葉にメェルアーは言い覚えがあった。
一瞬、ほんの一瞬だがムリアスに仕掛けていてた。
「っと、まだ慣れてないのに先生を一本取るのは無理だぞ」
切先が喉元に止まる。
ムリアスの指がメェルアーの喉を押さえていなければズブリと入っていただろう。
「うむ、残念」
「あなた!なにしているのですか」
「気にすることはないミネーリ君。先生を出し抜こうと攻撃する生徒は年間山ほどいる」
「これはかるいすきんしっぷ。(なんでいまのことばにはんのうしたのかわからない…)」
表情を変えずにアーフェリアへ指導を行い、次の生徒のところへ行った。
ムリアスは国王に自らがメェルアーに指導したいと申し出た。
それは棄却されたが、一部変更され叶った。
それが剣術と体術それから魔術である。
「なにが一本取るのは無理だぞだ」
用が出来たと一時抜け出した廊下の壁に手を付き冷や汗を流す。
「あれは喉が破けても私を刺していた。向こうが自制しただけのこと、はっはは!面白いぞ、やはり王位争いなんて捨ててメェルアー・オレンズを手に入れるのが最高に楽しいのではないか?」
狂気とも言えるその笑いを見るものは居なかった。
"副属性に区分される二属性の適性は、魔王と勇者それぞれどちらに近いかを表す"
"魔王滅亡後、新魔王正帝式完"
"国立魔術学校生徒内、勇者代替見つかる"
"王宮関係者語る。勇者の実情"
市政に出回る情報はこの程度であったが、コレが波乱を巻き起こした。
「勇者を一目見ようって学校の外が騒がしいってことね」
「うん、まったくめいわくなえいゆーもいたものだ」
少し誇らしげなメェルアーにアーフェリアはお前が言うなと言う顔をする。
色々あった数日前が嘘のように明るい教室。
担任はここ数十年の記憶を失っていた為、故郷へ送還。
モーヤン家は直接的関係が見つかった為、除名及び処刑。
新しい先生として寮長が担任になったクラスは一段と騒がしい。
「お前達、今日は待ちに待った実技の時間だ。各自着替えて中庭に集合」
「メェルアーどうされますの?」
「どうって、ゆうしゃ?」
「えぇ、最初は型ですが練習内容が進めば実践に入りますわ」
「うちのクラスにそんなつっかかるやからはそんざいしない」
「幸いなのは血気盛んな男子と別ということですわね」
運動着に着替えて外へ出た二人。
「君たちを担当するムリアスだ。気軽にムリアス先生と呼んでくれ」
男子と女子で教官が違う。
どちらかを担任が受け持ち、もう片方も専門の先生が携わるはず。
黄色い声をあげる女子達とは裏腹に嫌そうな顔をするメェルアー。
「僕は確かにオロー大国の人間だが、教えるのはオルスト式だ」
オルスト式とオロー式では初手の構えから違う。
盾を使う前提のオロー式では片手剣メインに、小回りの効いた立ち回りとガード前提の捨て身な技。
オルスト式は両手持ちの構えや片手持ちの構えが混雑し、ガードではなくパリングメインとなっている。
「まずは基礎の型から。四日間で百通り叩き込んだ後、軽い弾き合い。私への打ち込み、最後は生徒同士だ」
列に並び声掛けをしながら型を練習していく。
型は基本系守りから始まる。
初日守り。二日目に流し、三日目攻撃、四日目に複合とのこと。
「メェルアー軸がズレてますわ」
「けんにがて」
ムリアス同様に注目を集めるメェルアー。
前回の一件は一部を除き全ての情報を開示している。
学内や関係者の皆に名前が広まっているが、外に出ても問題はない。
一週間後に国王より正式発表が決まっているからだ。
「あれが勇者ですって、笑えますわ」
「剣を振るうというより剣に振られてますね」
ヒソヒソと話し声が聞こえる。
「だいじょうぶアーフェ。型は丸暗記してきたから」
「そう、ならいいのですが。寮に帰ってからもお勉強ですわね」
「うぐっ」
「君達。喋るためにここに居るのかい?多少の私語は許すが、出来ない人間に教えるでもなく笑うことは騎士道に反するぞ」
ムリアスの言葉には従順なようだ。
「10、11、12!もうだめ、たいりょくつきた」
「だいぶ様になりましたわね。休憩時間に少し食い込んでしまいましたが」
「たいじゅつまでならうとわたしのからだは持たない」
「メェルアーちゃんなら大丈夫だよ。はいお水」
アラミシアが水入りのコップをメェルアーに渡してきた。
「かんしゃ」
「あなたは確かカナール家の」
アーフェリアがアラミシアに気付き声を掛けた。
「アラミシアとお呼びください、アーフェリアさん」
少し距離を感じる応答に気不味い顔を浮かべるアーフェリア。
「えっと、ふたりともなかわるい?」
「初対面ですよ、わたしなんか公爵様はおろか伯爵様すらおめにかかれません」
「えぇアラミシアさんよろしくお願いしますわ」
「あらためてしょうかいする。私の友達1号のアーフェと3号のアラミシア」
「今したばかりですわ?!」
「あらためてよろしくね」
「そうだアラミシア、ついに原本をしいれた」
「えっ!私自由行動の日に都内全域を捜したけど見つからなかったよ」
「ふふふ、くろいるーとさ」
「ワークメリー商会にあやまりなさい。正規ルートですわ」
「ワークメリー商会の露店ですか、さすがに一人で入るのは恥ずかしかったのでいってなかったです」
「こんどいく?」
「えぇ行きましょう!アーフェリアさんはどうされますか?」
「私はいいですわ」
若干のモヤモヤを抱えたまま休憩時間は終わってしまった。
「君達もだいぶ見違えたね。もちろんお世辞なんて言わない、本心だとも」
ムリアスは歩きながらそれぞれに指摘を入れていく。
「オレンズ君はもし時間があるなら基礎体力からやるといい。剣の動きを見れば理解しているのは一目瞭然、しかし身体がそれについていっていない」
「こんなの解放したらよゆー」
「その解放をする為にもしっかりと鍛えておけ。一の器に千の物は入らない」
その言葉にメェルアーは言い覚えがあった。
一瞬、ほんの一瞬だがムリアスに仕掛けていてた。
「っと、まだ慣れてないのに先生を一本取るのは無理だぞ」
切先が喉元に止まる。
ムリアスの指がメェルアーの喉を押さえていなければズブリと入っていただろう。
「うむ、残念」
「あなた!なにしているのですか」
「気にすることはないミネーリ君。先生を出し抜こうと攻撃する生徒は年間山ほどいる」
「これはかるいすきんしっぷ。(なんでいまのことばにはんのうしたのかわからない…)」
表情を変えずにアーフェリアへ指導を行い、次の生徒のところへ行った。
ムリアスは国王に自らがメェルアーに指導したいと申し出た。
それは棄却されたが、一部変更され叶った。
それが剣術と体術それから魔術である。
「なにが一本取るのは無理だぞだ」
用が出来たと一時抜け出した廊下の壁に手を付き冷や汗を流す。
「あれは喉が破けても私を刺していた。向こうが自制しただけのこと、はっはは!面白いぞ、やはり王位争いなんて捨ててメェルアー・オレンズを手に入れるのが最高に楽しいのではないか?」
狂気とも言えるその笑いを見るものは居なかった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ
トール
恋愛
会社帰り、駅までの道程を歩いていたはずの北野 雅(36)は、いつの間にか森の中に佇んでいた。困惑して家に帰りたいと願った雅の前に現れたのはなんと実家を模した家で!?
自身が願った事が現実になる能力を手に入れた雅が望んだのは冒険ではなく、“森に引きこもって生きる! ”だった。
果たして雅は独りで生きていけるのか!?
実は神様になっていたズボラ女と、それに巻き込まれる人々(神々)とのドタバタラブ? コメディ。
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています
今日も聖女は拳をふるう
こう7
ファンタジー
この世界オーロラルでは、12歳になると各国の各町にある教会で洗礼式が行われる。
その際、神様から聖女の称号を承ると、どんな傷も病気もあっという間に直す回復魔法を習得出来る。
そんな称号を手に入れたのは、小さな小さな村に住んでいる1人の女の子だった。
女の子はふと思う、「どんだけ怪我しても治るなら、いくらでも強い敵に突貫出来る!」。
これは、男勝りの脳筋少女アリスの物語。
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
神様のミスで女に転生したようです
結城はる
ファンタジー
34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。
いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。
目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。
美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい
死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。
気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。
ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。
え……。
神様、私女になってるんですけどーーーー!!!
小説家になろうでも掲載しています。
URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」
家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる