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休日2
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2人で足を運んだのはワークメリー商会と書かれた区域。
露店を出す上での責任元である。
「おぉぉ、さいしんさくだらけ」
「本といえばワークメリー商会よ」
古今東西の本を取り揃える商会が独占的に行なっている露売。
ジャンルや読み手層別に区画があるため、見易いと評判。
「こ、これは」
「どうかしまして?」
250万パーパルスと値札の置かれた本。
「"勇者の工場"の原本」
「えっと、どういった内容でして?」
「ゆうしゃが実際に貢献した技術を子ども向けに面白くかいたほん」
「かなりの値段ね」
「それはそう、勇者の書き記した未知の記述が多くある。雁本はその辺が消されている。いわば子供向けじゃない」
「だからこの値段なのですね」
「仮に解明できれば、250万パーパルスなんて日単位で稼げる」
「夢を壊してしまうのは何ですが、それほどの技術なら国が管理しているはずですわ」
「確かにこの国は進んでいる。でも勇者はこのくにだけにいたわけじゃないから、価値のわからない国は平気でゴミとして捨てるかうりさる」
「いつも変な事を言うので本の影響かと思いましたが、しっかりと考えた上でしたのねぇ?!え、何買ってるの」
「おやじ、これわたしの学生証」
「あいよ、二万五千パーパルスを100ヶ月払いね」
「買ってきた」
「買ってきたって、アナタお金はありますの!」
「これからどかんとはいる。よてい?」
王様から貰った勇者活動費仮、生徒会から貰った特別生徒活動費。
合わせて20万パーパルス。
勇者活動費仮は月単位で16万パーパルス(市政下の最低賃金相当)
特別生徒活動費は、学内で起こった事件や事故を解決した生徒に配られる賞与。
1件あたり、度合いに応じて決まる。
今回のような大規模騒動などの相場は1万パーパルス。
それから街を練り歩き、夜となった。
「何とか、門限に間に合いましたわね」
「よかった寮長うるさいから」
「悪かったな、これでも優しい方なんだが」
門をくぐり、食堂へ向かおうとする二人の前に筋肉ダルマが現れた。
「りょ、りょうちょう」
「オスカー寮長こんばんは」
「あぁこんばんは。二人とも手を洗って席につけよー、それからオレンズは先輩泣かせんな」
よくわからないまま手洗い場に行き、冷たい水で手を洗った二人。
「なるほど」
ギャン泣きして腰にしがみつく先輩を見て哀れみの笑みを向けるメェルアー。
「ごめんねー、この子ったら冷めた顔してるようですごい気にしてて」
「学内の高度医療技術で治癒不可な傷、たしかに先輩の反応もわかる気はしますわ」
「ちょっとあつい」
先輩を引き離し席に着くメェルアー。
「メェルアーちゃんと闘ってみたいなんて声が三年でも上がるほど期待値の高い子だよ本当に」
「アイアンベリー先輩?」
「いや何でもないよ。それより食事が配膳されるから大人しく席に着こうリーナ」
引っ張られながら席に座るリーナ・ワードルズ。
「しかしなー、今回引っかかる事だらけだよ。私らの世代でも似たような事件あったものの、休校なんてなかった」
「悲願でも戻りせんよリーナ」
「僕はね、今回の事件は生徒会絡みと見ているんだ」
目を輝かせながら語る姿にアーフェリアはメェルアーを重ねて少し残念な顔をした。
「メェルアー良かったね、主席の風格あるよ」
「わたしはみんなのたよれるリーダーだからね」
自室に戻り、購入品を広げるメェルアーとアーフェリア。
「とりあえずコレはっと」
高速で買ったばかりの本を読み終えてしまうメェルアー。
「大金で買ったのにそんな早く読み終わっていいの?」
「うん。とりあえず読んで、あとでじっくり分解する」
アーフェリアは納得したようだ。
「それより早くあれつけましょ!」
「そうだった。どっちの袋だっけ」
「私の方ですわ」
まだ開いていない袋から香薬を取り出した。
「学校の香薬はものが悪いですから」
香薬は香りのついた油である。
肌に塗ることで乾燥を防いだり、体臭を隠すのに使われる。
「うん、いい香りになった」
女神時代は風呂に浸かり1日の穢れを落としていたが、この世界では水浴びや湿った布で体を拭くことあれど、風呂という文化がない。
「それにしても柑橘系だなんて変わってますわね」
「さむいじきはこうきゅうひんだけどシスターが買ってきてくれた。蜜柑の味が忘れられないから」
「そうでしたの」
「うん。アーフェはみかんとかたくさん食べるの?」
「私は食べませんわ。昔食べすぎて手のひらが黄色になってしまいましたのよ」
「それはたいへん。でも体調が悪い時はたべたほうがいい、治る」
「そうですわね。限度を考えて食べることにしましょう」
それぞれ布団に潜る。
「一つ聞きそびれていたのですが、メェルアーは寒い時期どう過ごしていましたの?」
「寝る時はみんなで固まってた。シスターでも薪は高級だからご飯の時しか使わなかった」
「そうでしたの、この都はとても寒い空気が流れる時期があるわ。だからその時用に何か対策をしようとしたのですが」
「アーフェリアはどうしてたの?」
「私はお湯に浸かっていましたわ。叔父様が国交を広げた中に、お湯を使って全身の血液を温める事で寒い時期を凌ぐという文化があったそうで」
「なんと、しかしそんなにお湯をつかうとなるとお金持ちか、魔力量がぼうだいか」
「一応魔術協会の方から、火炎魔術を流用した寝具等は出ていますが安全面も考慮したせいで…この部屋には入りませんわね」
二人部屋にしては大きいが、元々入っているベッドのせいもあって新しい家具を置くには些か問題がある。
「あ、そうだたくさん上に毛布をのせる」
「そんなに沢山毛布を手に入れても今度、暖かい時期に困りますわよ」
「勇者冒険譚を読み漁るしかない、さむいちいきからきたユウシャの話もあるはず」
「見つけたら協力しますわ。魔術協会には伝手がありますの」
「それはたのもしい、それじゃより良い眠りを。"消えろ"」
指先から魔術を放ち、電気を消すメェルアー。
「直接じゃなくて向こうのスイッチで切りなさい。じゃないと不具合が出ますわよ」
「大丈夫、このへやはもうこわれている」
露店を出す上での責任元である。
「おぉぉ、さいしんさくだらけ」
「本といえばワークメリー商会よ」
古今東西の本を取り揃える商会が独占的に行なっている露売。
ジャンルや読み手層別に区画があるため、見易いと評判。
「こ、これは」
「どうかしまして?」
250万パーパルスと値札の置かれた本。
「"勇者の工場"の原本」
「えっと、どういった内容でして?」
「ゆうしゃが実際に貢献した技術を子ども向けに面白くかいたほん」
「かなりの値段ね」
「それはそう、勇者の書き記した未知の記述が多くある。雁本はその辺が消されている。いわば子供向けじゃない」
「だからこの値段なのですね」
「仮に解明できれば、250万パーパルスなんて日単位で稼げる」
「夢を壊してしまうのは何ですが、それほどの技術なら国が管理しているはずですわ」
「確かにこの国は進んでいる。でも勇者はこのくにだけにいたわけじゃないから、価値のわからない国は平気でゴミとして捨てるかうりさる」
「いつも変な事を言うので本の影響かと思いましたが、しっかりと考えた上でしたのねぇ?!え、何買ってるの」
「おやじ、これわたしの学生証」
「あいよ、二万五千パーパルスを100ヶ月払いね」
「買ってきた」
「買ってきたって、アナタお金はありますの!」
「これからどかんとはいる。よてい?」
王様から貰った勇者活動費仮、生徒会から貰った特別生徒活動費。
合わせて20万パーパルス。
勇者活動費仮は月単位で16万パーパルス(市政下の最低賃金相当)
特別生徒活動費は、学内で起こった事件や事故を解決した生徒に配られる賞与。
1件あたり、度合いに応じて決まる。
今回のような大規模騒動などの相場は1万パーパルス。
それから街を練り歩き、夜となった。
「何とか、門限に間に合いましたわね」
「よかった寮長うるさいから」
「悪かったな、これでも優しい方なんだが」
門をくぐり、食堂へ向かおうとする二人の前に筋肉ダルマが現れた。
「りょ、りょうちょう」
「オスカー寮長こんばんは」
「あぁこんばんは。二人とも手を洗って席につけよー、それからオレンズは先輩泣かせんな」
よくわからないまま手洗い場に行き、冷たい水で手を洗った二人。
「なるほど」
ギャン泣きして腰にしがみつく先輩を見て哀れみの笑みを向けるメェルアー。
「ごめんねー、この子ったら冷めた顔してるようですごい気にしてて」
「学内の高度医療技術で治癒不可な傷、たしかに先輩の反応もわかる気はしますわ」
「ちょっとあつい」
先輩を引き離し席に着くメェルアー。
「メェルアーちゃんと闘ってみたいなんて声が三年でも上がるほど期待値の高い子だよ本当に」
「アイアンベリー先輩?」
「いや何でもないよ。それより食事が配膳されるから大人しく席に着こうリーナ」
引っ張られながら席に座るリーナ・ワードルズ。
「しかしなー、今回引っかかる事だらけだよ。私らの世代でも似たような事件あったものの、休校なんてなかった」
「悲願でも戻りせんよリーナ」
「僕はね、今回の事件は生徒会絡みと見ているんだ」
目を輝かせながら語る姿にアーフェリアはメェルアーを重ねて少し残念な顔をした。
「メェルアー良かったね、主席の風格あるよ」
「わたしはみんなのたよれるリーダーだからね」
自室に戻り、購入品を広げるメェルアーとアーフェリア。
「とりあえずコレはっと」
高速で買ったばかりの本を読み終えてしまうメェルアー。
「大金で買ったのにそんな早く読み終わっていいの?」
「うん。とりあえず読んで、あとでじっくり分解する」
アーフェリアは納得したようだ。
「それより早くあれつけましょ!」
「そうだった。どっちの袋だっけ」
「私の方ですわ」
まだ開いていない袋から香薬を取り出した。
「学校の香薬はものが悪いですから」
香薬は香りのついた油である。
肌に塗ることで乾燥を防いだり、体臭を隠すのに使われる。
「うん、いい香りになった」
女神時代は風呂に浸かり1日の穢れを落としていたが、この世界では水浴びや湿った布で体を拭くことあれど、風呂という文化がない。
「それにしても柑橘系だなんて変わってますわね」
「さむいじきはこうきゅうひんだけどシスターが買ってきてくれた。蜜柑の味が忘れられないから」
「そうでしたの」
「うん。アーフェはみかんとかたくさん食べるの?」
「私は食べませんわ。昔食べすぎて手のひらが黄色になってしまいましたのよ」
「それはたいへん。でも体調が悪い時はたべたほうがいい、治る」
「そうですわね。限度を考えて食べることにしましょう」
それぞれ布団に潜る。
「一つ聞きそびれていたのですが、メェルアーは寒い時期どう過ごしていましたの?」
「寝る時はみんなで固まってた。シスターでも薪は高級だからご飯の時しか使わなかった」
「そうでしたの、この都はとても寒い空気が流れる時期があるわ。だからその時用に何か対策をしようとしたのですが」
「アーフェリアはどうしてたの?」
「私はお湯に浸かっていましたわ。叔父様が国交を広げた中に、お湯を使って全身の血液を温める事で寒い時期を凌ぐという文化があったそうで」
「なんと、しかしそんなにお湯をつかうとなるとお金持ちか、魔力量がぼうだいか」
「一応魔術協会の方から、火炎魔術を流用した寝具等は出ていますが安全面も考慮したせいで…この部屋には入りませんわね」
二人部屋にしては大きいが、元々入っているベッドのせいもあって新しい家具を置くには些か問題がある。
「あ、そうだたくさん上に毛布をのせる」
「そんなに沢山毛布を手に入れても今度、暖かい時期に困りますわよ」
「勇者冒険譚を読み漁るしかない、さむいちいきからきたユウシャの話もあるはず」
「見つけたら協力しますわ。魔術協会には伝手がありますの」
「それはたのもしい、それじゃより良い眠りを。"消えろ"」
指先から魔術を放ち、電気を消すメェルアー。
「直接じゃなくて向こうのスイッチで切りなさい。じゃないと不具合が出ますわよ」
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