4 / 32
交友
しおりを挟む「えーでは、出席は終わったので軽く先生の自己紹介をさせてもらいます」
魔導具を器用に扱い、手を使わずに文字を書いていく。
モロン・ディラー(?)
白髪、メガネ
年寄りと言えば年寄りだが、若いと思えば普通に若く見える。
魔導研究家の権威である。
「まぁこれくらいか。次は君たちの自己紹介をしてもらおうか。黒組ともなれば名の知れた者ばかりだがね」
席順に自己紹介が始まった。
「アーフェリア・ミネーリですわ、みなさまとは学友です。気軽にアーフェとお呼びください」
「メェルアー・オレンズ。わたしがすきなものはシスター・マナリスのパンです」
「エンリアル・オローだ。オロー大国?王国どっちだった?あ、王国の第三王子です。さっきのアーフェと同じで気軽にエンリアルで」
着々と自己紹介が進んでいった。
「皆さんありがとうございました。それでは、これから6年間に渡り何を学ぶか教えていきます」
一年-実演・筆記
二年-実演・筆記・研究
三年-実演・筆記・探索
四年-実演・筆記・探索
五年-実演・筆記・就活
六年-論文
「大雑把に書きますと、こんな流れです。皆さんに必要な一年時の内容を重点的に話していきます」
実演を交えた基礎学習から。
まずは前期休校週間前に行われるクラス対抗戦に向けた訓練。
前期休校週間が終わった後からは後期休校週間に向けた、基礎能力向上訓練。
後期休校週間が終わった後からは昇級試験への対策訓練。
「と言った具合です。まぁ進み具合やその年の気候などに応じて変わるからその辺は留意しておくこと」
「メェルアーはちゃんとメモを取りまして?」
「うん、げいじゅつてき」
メェルアーの手帳には変な生き物が描かれていた。
「おぉ可愛いな、トカゲか?」
「ちがう、ドラゴリューデラ」
「今日はこの後クラスごとに学校探検なんて楽しい事をするので、順番が来るまで交流を深めてください」
先生が教室を出るといろんな席に人が固まり始めた。
ここも例外ではない。
「エンリアル様はどこの寮ですか!」
「同じ寮だろが」
「オロー式の剣術教えてください」
「良いけどまず名乗れよなー」
「アーフェリア様の好きな食べ物は!」
「好き嫌いはしませんのよ」
「アーフェリア様の同室はどなたですの?もし過ごしにくかったら」
「過去1番過ごしやすいですわ」
ざわざわと人が集まる。
公爵令嬢と第三王子がいれば当然のことだろう。
ちらほらとメェルアーに刺さる言葉も飛んでくるが、特に気に留める様子もない。
「なんか浮いてるきがする」
人混みをすり抜けて上の方へ登って行く。
「ふぅ、くうきが悪い」
「お前も孤児院上がりだろ?あんな奴らと組まずにこっちこいよ」
後ろにも人が集まっていた。
ガラの悪い四人組。
「たしかマーリス君とミューちゃんとリリアナちゃんとヒュース君だったね」
「よく覚えてラァ」
このクラスにいるということはこの不良も適正やらが全体的に高い傾向である。
「わたしはいい、それにあんな奴らじゃない。ともだち」
「そうかよ」
窓を開けて空気を浴びる。
「(あれから"10"年、わたしのいない天界は大丈夫かな)」
俗にいう女神の声というものは転移者に対して特別処置で行われる物。
一から始めれる転生者は、天界からもこちらからも接触する手立てはない。
「(電子遊戯式に確立したG-46あたりの世界でしたら電子郵便でやり取りできたのですが)」
記憶が蘇り始めた頃から定期的に女神像へ礼拝を行ってみたが不可能だった。
「(転移者の特権というものも今の所わかりません、女神権限が失われた今、確認する方法はないですね)」
思考を段々とこちらに戻して行く。
「よっと」
窓を閉めて教室の隅、1番上の1番角側に一人で座る少女の元へ向かった。
「それ"勇者冒険譚"だよね?わたしもすきだよ」
シスター・マナリスに無理言って用意させた勇者の実録本。
そのシリーズの中でも割と最近になって翻訳されたものである。
「そ、そうです?!」
「わたしもよんかんまでよんだ」
「ちょうど盛り上がるところだね。あ、ごめんなさいその…」
アラミシア・カナール(13)
桃色髪、琥珀色の瞳。
スタイルよく、メガネを外せば容姿もかなり良いだろう(メェルアーの勝手な予想)
「アラミシアちゃんと仲良くしたいなって」
「え、あっこんなわたしでよければ」
内気なのか、突然すぎて理解が追いつかないのかあたふたとしている。
「わたしはきがるにメェルアーと呼んで」
「わ、私もアラミシアで大丈夫です」
「おもしろい本がみつかったらまた話にくる。アラミシアも見つかったらおしえて」
質問者だらけだった前の席もだいぶ減ったようで、メェルアーは落ち着いて席に着いた。
「メェルアーどこいってたのよ」
「ともだちつくり、わたしはひとりつくった」
「やったじゃないか。俺とアーフェリアは質問攻めに媚び諂いで、まともな交友は難しそうだな」
「そればかりは同意見ですわね」
「しっかしなぁ、第三王子と公爵だぜ?絡んだところでなんの益もないぞ」
「子供なんてみんなおやをみてそだつ」
「そうですわね。親が親なら子も子ですわ、寄ってきたのはパーティーなどで毎度擦り寄ってくる者ばかり」
「なら私がともだちをつくって紹介しよう」
「メェルアーと先に仲良くなった子であれば確かに、ですがもう私たちが同じ席に居るということは周知の事実」
「まー大丈夫でしょ。俺ら目当てでメェルアーちゃんに近付いても、この能天気さについて行こうとはならない」
「確かにそうですわね」
「わたしわるくいわれている?」
ポカンと首を傾げるメェルアー。
二人はおかしそうにその様子を笑った。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
フィライン・エデン Ⅲ
夜市彼乃
ファンタジー
黒幕・ガオンとの死闘の末、平穏を取り戻した雷奈たち。
いまだ残る謎を抱えながらも、光丘中学校の生徒・朝季たちと知り合った彼女らは、ボランティアとしてオープンスクールフェスティバルに携わることに。
しかし、そこに不穏な影が忍び寄り……。
希兵隊VS学院、本物VS偽者、流清家VS風中家。
そして再び迫りくる世界の危機の果て、「彼女」の正体が明かされる。
急展開の第三部、始動!
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる