ホロボロイド

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私とウサちゃんの出会い

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『第72回ホロボロイドバトル優勝はー!!』プツンとテレビの切れる音が鳴る。
私、根尾(ねお)兎乃(とのり)はこの祖父母のせいでホロボロイドバトルに参加できない。
テレビを切るとリモコンをまたどこかにやってしまうのだ。
「アキオを、アキオを殺したロボットを!」言い切れないほどに怒りを吐き出す祖父の顔を見ているとまるでこちらが悪いことをしたような気分になる。
それにホロボロイドが悪さをした訳ではない。父親が死んだ理由はホログラムとして安全利用出来るようになる前の。
日本名:騒がしさを破る耳飾りで戦う機械対戦
というとてもダサい名前のものだ。
耳飾りがヘルメットに変わり、機械を纏う事で戦う一風変わった競技。
そこからロボットを外部操作し箱庭の中で戦わせる競技に変わり、今はホログラム。電子演算の中で戦うのが当たり前になった。
「今はホログラムで安全だし、昔みたいにそこらで暴れるようなものじゃないもん!」だから言い返してしまう。
祖父だって亡き子が残した1人孫に口出しはしたくないんだろうとはわかるが、高校生の多感な私からしたら今だからこそ何も言わずにやらせて欲しいと願うのだ。
また家から出てしまった。雨が降る外は畳が敷かれてエアコンのの効いた部屋とは違い蒸し蒸しとしていた。
「だって、クラスみんなもやってるもん」雨が降るしきる公園で私は1人泣いていた。雨に隠れて泣いていた。
ホロボロイドバトルに必要なイヤホンは親の形見が残っている。あとはホロットと言われるホログラムバトル専用のイヤホンで操作可能なロボットだけだ。
ブランコに乗って揺られていると手摺りが雨に濡れて錆びた鉄の香りが嫌々しく手にうつる。
なんとなく着けたくなったイヤホンを耳につけた。音声案内と目元まで伸びた透明な板に操作画面が現れる。顔の半分を目の全体を覆う程に変形をしたイヤホン。
「根尾兎乃17歳、操作機体無し」問いかけるとAI音声が無機質に応答を始めた「音声認識開始、登録No.2である兎乃さんですね。私への---」反応がおかしい。
雨に濡れたから?いや防水機能の無い電子機器は2043年に販売禁止されている。
「兎乃、兎乃!兎乃兎乃!」イヤホンから幼稚な声が聞こえる。
この専用イヤホンが鳴る理由は未登録者が未登録機体と登録しようとするとき。しかしその音は無機質な音声で伝えられる。
「こんな事は初めてだ、野良機体?」目の前にいたのは兎型ロボット、ホロボロイドは両手に乗るサイズだがこのホロボロイドは少し小さい。
片手サイズでしかも動物型のホロボロイド、相当稀有である。
「兎乃!兎乃」私の名前を連呼しながらぴょんぴょんと跳ねる小型のホロボロイド。
「機体強制登録完了。生産工場不明、コアトリプル」勝手に登録が完了してしまった。まだイヤホンからは音声が漏れている。
「いや、ちょっと。え、こーゆー感じなの?」私は焦っても仕方ないと頬を叩き落ち着いた。「名前はないのね、あんたどこの子?」
頭を撫でるとキュピーと機械音が鳴った。機体の後ろには大抵登録情報が全て書いてあるはずだが何も書いていなかった。
「なんでだろ~」くるくると回していたらイヤホンから音声が聞こえた「私の名前を登録してください」音声は先ほどと違い無機質だった
「名前か…ウサちゃん?安直じゃつまらないな。ウサコ、ウサミ?うーちゃん、んー」「名前の設定が完了しました。私はウサちゃんです」
くるっくるっと回転するウサちゃんを肩に乗せてブランコに乗り直した私は雨に打たれていた。
「兎乃!雨濡れる大丈夫じゃない」ウサちゃんが心配して声を掛けるけど私には通じない。今の状態が私には心地よいのだ。
「兎乃隠れる」ウサちゃんが突然私の胸元へ隠れた。イヤホンが変形して元の小さいサイズに戻ってしまった。
「え、なんで」そう思っていたのも束の間、スーツの男たちがやってきたのだ。
「いたか?」「いやこっちにはいない。レーダーも効かない」「早く探せ!あれが他所に漏れたら」私の下にもスーツを着た男達がやってきた。見るからに凶悪な顔をしている
「ひっ、な、なんですか」「おいそこのあんた、耳に付けてんのホロボロイド用イヤホンか?」目が怖い。もう逃げたい。泣きたい、そんな気持ちを抑えてブランコから降りた
「これ、は音楽聴いてます」ホロ粒子が空中に散布し音楽アプリのUIが映し出された「若いのは最近こんなのをきいているのか。ってすまんな止めて」
スーツ男たちは去っていった。どうやらお目当てのものはなかったみたい。
「兎乃ごめんね巻き込んじゃった」ウサちゃんはそう言い残してスリープモードに移行してしまった。家に連れて帰るとバレてしまう。だけど登録したからには破棄できない
祖父母にバレたら怒られるけど持ち帰るしかない。ポケットにウサちゃんを隠して家の方へ向かった。
家のまでは寂しそうな顔をした祖母が傘を持って立っているのみた。目が合うととても心苦しい
「兎乃、家に戻りなさい。おじいちゃんも悪かったといっているわ」祖母の差し出した傘の中はとても心地よいものだった
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