10 / 13
ピューロ村での騒動
第9話
しおりを挟む心優しきオーガ達と離れてから三時間が経ち、少し辺りも暗くなってきた。すると、目の前には少し大きめの村が現れた。回りを石壁で覆ってあり、要塞のようだ。
「ここが…ピューロ村?なんか予想以上にゴツくて立派で大きいんだけど…」
「正真正銘のピューロ村ですよ?ここは凶魔の森に近い分、村が襲われやすいので守りが頑丈にしてあるんです。」
「もはや規模が街に近い気がするんだけど?」
「だって、クランチに行くためには必ずこの村を通りますから。発展くらいしますよ。」
大きな村に感動していると、村の入り口の見張り役に声をかけられた。
「ようこそ!ピューロ村へ!他の国とかクランチにくらべりゃあ全然だけどよぉ!ゆっくりしてってくれよな!」
「あ、ありがとう…」
「美味しい店ってありますか?」
おい、食いしん坊キャラじゃなかったろお前。気が早いぞ。すると、門番が何かに気付く。
「ん?銀髪のお嬢ちゃんもしかして魔族か?」
まずい…これはまずい…まさかこの村も魔族はダメとか言うのか?それだったら今すぐ逃げないといけなくなる…
「はい…魔族…です…」
「ほえ~魔族が村に来るなんて久しぶりだな!この村はクランチ国の領土だ!魔族だからって差別するようなヤツはいない!安心してゆっくりしてけや!まあ、それでも心無いヤツもいるだろう…残念ながらな…そういうときは俺に言え!門番のこのモーガンがガツンと言ってやんよ!」
「あ、ありがとうございます。そんな言って貰えて嬉しいです♪」
「平和なんだな~」
「それがクランチ国の売りよ!とりあえず二人とも腹減ってんだろ?この道を真っ直ぐ行った大通りにリラっちの宿ってとこがあっから、そこで飯でも食え!そんじゃ俺は警備に戻るな!」
と、まくしたててムキムキの熱い門番は戻っていった。もう夕方というのに、詳しく説明してくれるとは、少し暑苦しい人だったが、確実にいい人なんだろう。
「にしてもリラっちの宿か…どこだ?」
「あ、あれじゃないですか?」
リリィに引っ張られてそっちを見ると…
『リラっちの宿!ご飯もやってるぜ!』
とでかでかと書かれた看板があった。たくさんの人が入っていて人気のようだ。
とりあえず入ってみることにした。
「へいらっしゃい。私が館主のリラだよ。お客さん。宿泊かい?ご飯かい?両方かい?」
「あ、両方でお願いします。えーと、」
「すまんねぇ、今宿泊だと一部屋しか空いてないんだわな…」
「あ、じゃあその部屋でお願いします。」
「リリィ!?一部屋もヤバイけど俺金無いよ!?」
「私がお金持ってますよ?」
「夜ご飯と宿泊、銅貨2枚になるよ。」
「どうぞ。」
「あいよ、ごゆっくりね~。ご飯は今運ぶから向こうの机に行ってなー。」
赤い髪の年は25くら…ゲフンゲフン、の綺麗な女の人が1人で宿を経営してるのは流石に驚きだな。
「今一瞬私達の周りに殺気とんできたんですけど、ライさん失礼な事でも考えてました?」
「ちょっと…リラさんの年…」
ガスウウウウッ!
俺の座って手を置いているテーブルの人差し指と親指の間に包丁がジャストフィットしてた。
ほんとにあの人ただの宿の女将か?
「おまたせぃ!ゲルドラのステーキとデスマッシュのサラダ二人前だよ!」
と、リラさんが美味しそうな料理を持ってきた。肉汁したたるステーキと白いドレッシングのかかった紫色のサラダだ。
「にしてもゲルドラとデスマッシュってなんだ?鑑定!」
『猛追牛ゲルドラ』
凶魔の森最深部に大量に生息する牛。
一体一体が強く、その突進は馬車であろうと吹き飛ばす。
『劇毒茸デスマッシュ』
凶魔の森最深部に生えているキノコのモンスター。毒が強く、近くに寄ると身体がだんだん蝕まれる。遠くから根の部分を切り飛ばすと毒が消え、美味しいキノコとなる。
「ヒェッ……」
「どうしました?顔色悪いですよ?ライさん。」
「いや、なんでもない。冷める前にいただこう。」
「そうですね。とてもお腹すいてきました!」
「いただきます!」
「いただきます?なんですかソレ?」
「こっちでは無いのか…ご飯を食べるときにいただきますって言って食べ物に感謝するんだ。」
「そうなんですね~なら私も」
『いただきます!』
やべぇ…なんだこれ…あんな殺意みなぎる説明からは想像すらできないほど美味いぞ…俺の鑑定ミスったか?いや、でもそんなこと関係ないくらい美味いな。ブランド牛越えてるんじゃね?リリィなんて涙流しながら食べてるぞ?
そんなこんなを考えているうちにご飯を食べ終わった。
「食べた後はごちそうさまって言うんだ。」
「興味深いですね~では、」
『ごちそうさまでした!』
「ちょっとお散歩してきます。お肉食べた後にすぐに寝たら今より太っちゃいますしね。」
「そうか?今も全然細いと思うけど?」
「皆そう言うから甘い囁きにそそのかされるんですよ…その手には乗りません!行ってきます!」
と言うとリリィは宿を出ていってしまった。
「長くても一時間くらいで帰ってこいよ~!」
「分かってますよ~!」
とは言ったものの、俺もやることがないし、リリィが1人で出歩くのも心配だ…俺もゴブリンの素材の換金がてら、夜の村を散歩するとしようかな…
「にしても、あいつは何処に行ったんだ?」
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれたけれど、勇者じゃなかったアラサーおじさん。暗殺者(アサシン)が見ただけでドン引きするような回復魔法の使い手になっていた
はらくろ
ファンタジー
早乙女 辰馬、31歳独身、土日祭日しっかり休めるホワイトなサラリーマン。
バスで最寄り駅まで十五分、途中、美形な少年と可愛らしい双子の少女の幼馴染みみたいなリア充三人組の学生と毎日エンカウント。
その度に『リア充爆発しろ』と優しく呪う。
事故みたいな衝撃を受けた後、それが『勇者召喚』だと知ったけど、俺はただ『巻き込まれた』だけで勇者でもなんでもなかった。
持っていた魔法が、空間魔法(アイテムボックスみたいなやつ)と、回復魔法、これはワンチャン逆転あるかと尋ねたところ、別に珍しくないと苦笑された。
空間魔法があるなら仕事があるからと、冒険者ギルドに行くように言われ、俺だけ口止め料のようなお金を少々もらって城下町へ。
異世界デビューでせめて、幸せな家庭を作れたらとリア充目指して、安定した生活を手に入れようと、思ってたんだけどね……。
異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!
アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。
->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました!
ーーーー
ヤンキーが勇者として召喚された。
社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。
巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。
そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。
ほのぼのライフを目指してます。
設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。
6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。
最強ドラゴンを生贄に召喚された俺。死霊使いで無双する!?
夢・風魔
ファンタジー
生贄となった生物の一部を吸収し、それを能力とする勇者召喚魔法。霊媒体質の御霊霊路(ミタマレイジ)は生贄となった最強のドラゴンの【残り物】を吸収し、鑑定により【死霊使い】となる。
しかし異世界で死霊使いは不吉とされ――厄介者だ――その一言でレイジは追放される。その背後には生贄となったドラゴンが憑りついていた。
ドラゴンを成仏させるべく、途中で出会った女冒険者ソディアと二人旅に出る。
次々と出会う死霊を仲間に加え(させられ)、どんどん増えていくアンデッド軍団。
アンデッド無双。そして規格外の魔力を持ち、魔法禁止令まで発動されるレイジ。
彼らの珍道中はどうなるのやら……。
*小説家になろうでも投稿しております。
*タイトルの「古代竜」というのをわかりやすく「最強ドラゴン」に変更しました。
ポーション必要ですか?作るので10時間待てますか?
chocopoppo
ファンタジー
松本(35)は会社でうたた寝をした瞬間に異世界転移してしまった。
特別な才能を持っているわけでも、与えられたわけでもない彼は当然戦うことなど出来ないが、彼には持ち前の『単調作業適性』と『社会人適性』のスキル(?)があった。
第二の『社会人』人生を送るため、超資格重視社会で手に職付けようと奮闘する、自称『どこにでもいる』社会人のお話。(Image generation AI : DALL-E3 / Operator & Finisher : chocopoppo)
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
巻き込まれ召喚された上、性別を間違えられたのでそのまま生活することにしました。
蒼霧雪枷
恋愛
勇者として異世界に召喚されチート無双、からのハーレム落ち。ここ最近はそんな話ばっか読んでるきがする引きこもりな俺、18歳。
此度どうやら、件の異世界召喚とやらに"巻き込まれた"らしい。
召喚した彼らは「男の勇者」に用があるらしいので、俺は巻き込まれた一般人だと確信する。
だって俺、一応女だもの。
勿論元の世界に帰れないお約束も聞き、やはり性別を間違われているようなので…
ならば男として新たな人生片道切符を切ってやろうじゃねぇの?
って、ちょっと待て。俺は一般人Aでいいんだ、そんなオマケが実はチート持ってました展開は望んでねぇ!!
ついでに、恋愛フラグも要りません!!!
性別を間違われた男勝りな男装少女が、王弟殿下と友人になり、とある俺様何様騎士様を引っ掻き回し、勇者から全力逃走する話。
──────────
突発的に書きたくなって書いた産物。
会話文の量が極端だったりする。読みにくかったらすみません。
他の小説の更新まだかよこの野郎って方がいたら言ってくださいその通りですごめんなさい。
4/1 お気に入り登録数50突破記念ssを投稿してすぐに100越えるもんだからそっと笑ってる。ありがたい限りです。
4/4 通知先輩が仕事してくれずに感想来てたの知りませんでした(死滅)とても嬉しくて語彙力が消えた。突破記念はもうワケわかんなくなってる。
4/20 無事完結いたしました!気まぐれにオマケを投げることもあるかも知れませんが、ここまでお付き合いくださりありがとうございました!
4/25 オマケ、始めました。え、早い?投稿頻度は少ないからいいかなってさっき思い立ちました。突発的に始めたから、オマケも突発的でいいよね。
21.8/30 完全完結しました。今後更新することはございません。ありがとうございました!
神様との賭けに勝ったので異世界で無双したいと思います。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。
突然足元に魔法陣が現れる。
そして、気付けば神様が異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
もっとスキルが欲しいと欲をかいた悠斗は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―――
※チートな主人公が異世界無双する話です。小説家になろう、ノベルバの方にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる