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ピューロ村での騒動

第9話

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心優しきオーガ達と離れてから三時間が経ち、少し辺りも暗くなってきた。すると、目の前には少し大きめの村が現れた。回りを石壁で覆ってあり、要塞のようだ。

「ここが…ピューロ村?なんか予想以上にゴツくて立派で大きいんだけど…」
「正真正銘のピューロ村ですよ?ここは凶魔の森に近い分、村が襲われやすいので守りが頑丈にしてあるんです。」
「もはや規模が街に近い気がするんだけど?」
「だって、クランチに行くためには必ずこの村を通りますから。発展くらいしますよ。」

大きな村に感動していると、村の入り口の見張り役に声をかけられた。

「ようこそ!ピューロ村へ!他の国とかクランチにくらべりゃあ全然だけどよぉ!ゆっくりしてってくれよな!」
「あ、ありがとう…」
「美味しい店ってありますか?」

おい、食いしん坊キャラじゃなかったろお前。気が早いぞ。すると、門番が何かに気付く。

「ん?銀髪のお嬢ちゃんもしかして魔族か?」

まずい…これはまずい…まさかこの村も魔族はダメとか言うのか?それだったら今すぐ逃げないといけなくなる…

「はい…魔族…です…」
「ほえ~魔族が村に来るなんて久しぶりだな!この村はクランチ国の領土だ!魔族だからって差別するようなヤツはいない!安心してゆっくりしてけや!まあ、それでも心無いヤツもいるだろう…残念ながらな…そういうときは俺に言え!門番のこのモーガンがガツンと言ってやんよ!」
「あ、ありがとうございます。そんな言って貰えて嬉しいです♪」
「平和なんだな~」
「それがクランチ国の売りよ!とりあえず二人とも腹減ってんだろ?この道を真っ直ぐ行った大通りにリラっちの宿ってとこがあっから、そこで飯でも食え!そんじゃ俺は警備に戻るな!」

と、まくしたててムキムキの熱い門番は戻っていった。もう夕方というのに、詳しく説明してくれるとは、少し暑苦しい人だったが、確実にいい人なんだろう。

「にしてもリラっちの宿か…どこだ?」
「あ、あれじゃないですか?」

リリィに引っ張られてそっちを見ると…
『リラっちの宿!ご飯もやってるぜ!』
とでかでかと書かれた看板があった。たくさんの人が入っていて人気のようだ。
とりあえず入ってみることにした。

「へいらっしゃい。私が館主のリラだよ。お客さん。宿泊かい?ご飯かい?両方かい?」
「あ、両方でお願いします。えーと、」
「すまんねぇ、今宿泊だと一部屋しか空いてないんだわな…」
「あ、じゃあその部屋でお願いします。」
「リリィ!?一部屋もヤバイけど俺金無いよ!?」
「私がお金持ってますよ?」
「夜ご飯と宿泊、銅貨2枚になるよ。」
「どうぞ。」
「あいよ、ごゆっくりね~。ご飯は今運ぶから向こうの机に行ってなー。」

赤い髪の年は25くら…ゲフンゲフン、の綺麗な女の人が1人で宿を経営してるのは流石に驚きだな。

「今一瞬私達の周りに殺気とんできたんですけど、ライさん失礼な事でも考えてました?」
「ちょっと…リラさんの年…」

ガスウウウウッ!
俺の座って手を置いているテーブルの人差し指と親指の間に包丁がジャストフィットしてた。
ほんとにあの人ただの宿の女将か?

「おまたせぃ!ゲルドラのステーキとデスマッシュのサラダ二人前だよ!」

と、リラさんが美味しそうな料理を持ってきた。肉汁したたるステーキと白いドレッシングのかかった紫色のサラダだ。

「にしてもゲルドラとデスマッシュってなんだ?鑑定!」

『猛追牛ゲルドラ』
凶魔の森最深部に大量に生息する牛。
一体一体が強く、その突進は馬車であろうと吹き飛ばす。

『劇毒茸デスマッシュ』
凶魔の森最深部に生えているキノコのモンスター。毒が強く、近くに寄ると身体がだんだん蝕まれる。遠くから根の部分を切り飛ばすと毒が消え、美味しいキノコとなる。


「ヒェッ……」
「どうしました?顔色悪いですよ?ライさん。」
「いや、なんでもない。冷める前にいただこう。」
「そうですね。とてもお腹すいてきました!」
「いただきます!」
「いただきます?なんですかソレ?」
「こっちでは無いのか…ご飯を食べるときにいただきますって言って食べ物に感謝するんだ。」
「そうなんですね~なら私も」
『いただきます!』

やべぇ…なんだこれ…あんな殺意みなぎる説明からは想像すらできないほど美味いぞ…俺の鑑定ミスったか?いや、でもそんなこと関係ないくらい美味いな。ブランド牛越えてるんじゃね?リリィなんて涙流しながら食べてるぞ?

そんなこんなを考えているうちにご飯を食べ終わった。

「食べた後はごちそうさまって言うんだ。」
「興味深いですね~では、」
『ごちそうさまでした!』

「ちょっとお散歩してきます。お肉食べた後にすぐに寝たら今より太っちゃいますしね。」
「そうか?今も全然細いと思うけど?」
「皆そう言うから甘い囁きにそそのかされるんですよ…その手には乗りません!行ってきます!」

と言うとリリィは宿を出ていってしまった。

「長くても一時間くらいで帰ってこいよ~!」
「分かってますよ~!」

とは言ったものの、俺もやることがないし、リリィが1人で出歩くのも心配だ…俺もゴブリンの素材の換金がてら、夜の村を散歩するとしようかな…
「にしても、あいつは何処に行ったんだ?」

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