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第02章 王立魔法科学園
No.47 勝敗
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『始めッ!!!』
やはりと言うべきか、最初に動き出したのは茶色の獣耳。得意の身体能力を生かして左へ右へと動き、アンリの狙いが定まらないように接近する。
しかし、金色の長髪が揺れることは無い。ただジッとその場を動かずにリーフェを迎撃する。
リーフェがアンリを中心として時計回りを始めた。
これは...いつかの模擬戦闘で見た、光属性の...
「させませんわ!」
アンリは右手をリーフェの進行方向にかざし、炎の弾丸を放った。しかもそう、無詠唱である。アンリはこの1、2週間の間に(得意な火属性の一部の魔法のみであるが)無詠唱を出来るようになっていた。
「おっとと」
リーフェは炎の弾丸を華麗なバックステップで回避し、立ち止まった。
僕の魔眼が捉えていた見えない『光の縄』が霧散する。
「バインド・サークルは見飽きましたわよ?」
アンリに言われてリーフェはニヤリと笑った。
「バレちゃったか」
とん、とん、と左右上下に軽やかなステップを踏むリーフェとは対象に、開始地点から殆ど動いていないアンリ。戦い方は正反対でありながらも、やはり予想通り戦況は互角であるように思える。
「今度は、こちらからですわ」
アンリが一節のみの短い詠唱を何度も連ねる。多種多様な魔法がリーフェに襲いかかった。炎、氷柱、岩、鎌鼬...地面を抉り、壁を焦がし、リーフェの服を浅く斬り、確実に彼女を追い詰める。まるで狩りだ。
はたから見ればリーフェは防戦一方、戦況がアンリに傾いて見える。
だが、
「バンっ!」
リーフェの一言で、視界が白に染まった。彼女が得意とする光属性の、初級魔法『閃光』だ。その光は会場全体を襲い、観客席からは悲鳴が上がった。
『うわッ!眩しくて何も見えませんッ!』
実況の声も唸り声をあげた。
普通なら周囲をぼんやり照らす程度の初級魔法も、魔力の出力を上げれば強烈な攻撃魔法へと変貌する。
無詠唱の、前兆なしに襲いかかる光速の攻撃など回避不能。
僕やイレーナは魔眼で魔法の前兆を確認し、腕で目を覆ったが、これを防げるのは魔眼で魔素を認識できるエルフくらい、アンリは近距離でまともに食らって行動不能......のハズだった。
「効きませんわ!」
「あら!?」
なんと、アンリは対応した。
僕やイレーナと同じく手で目を覆って防いだのだ。しかしどうやって?
「貴女の戦い方など知り尽くしてましてよ!」
また炎弾を放ちながら、アンリは今日初めての笑みをその顔に浮かべた。
「シィィッ!」
対してリーフェの方は先程までの笑みを消し、なんとか横に跳んで炎弾を避けた。
彼女の顔をかすめた炎弾が髪をチリチリと焦がす。
「まだまだぁッ!!」
しかし彼女は怯まず、前進する。
5m、4m、3m。二人は互いに攻撃を避け、相殺しながらとうとう手の届く距離まで近づいた。
「「ッーー!!」」
瞬間。
『光の矢』がアンリの足を貫き、
『炎の弾丸』がリーフェを吹き飛ばした。
『...だんだんと視界が元に戻ってまいりました。さて、勝負はどうなっているのでしょうか...おおっと!?』
司会者は観客席から身を乗り出して叫んだ。
『二人とも倒れているゥッ!!私達の目が見えなくなっていた約30秒ほどの間に一体何があったのか!アンリ選手は開始地点から殆ど変わらない位置で倒れ、リーフェ選手は服を焦げさせて大の字に倒れています!
引き分けッ、引き分けですッ!!』
決着はつかず、またいつかの闘いに持ち越された。
やはりと言うべきか、最初に動き出したのは茶色の獣耳。得意の身体能力を生かして左へ右へと動き、アンリの狙いが定まらないように接近する。
しかし、金色の長髪が揺れることは無い。ただジッとその場を動かずにリーフェを迎撃する。
リーフェがアンリを中心として時計回りを始めた。
これは...いつかの模擬戦闘で見た、光属性の...
「させませんわ!」
アンリは右手をリーフェの進行方向にかざし、炎の弾丸を放った。しかもそう、無詠唱である。アンリはこの1、2週間の間に(得意な火属性の一部の魔法のみであるが)無詠唱を出来るようになっていた。
「おっとと」
リーフェは炎の弾丸を華麗なバックステップで回避し、立ち止まった。
僕の魔眼が捉えていた見えない『光の縄』が霧散する。
「バインド・サークルは見飽きましたわよ?」
アンリに言われてリーフェはニヤリと笑った。
「バレちゃったか」
とん、とん、と左右上下に軽やかなステップを踏むリーフェとは対象に、開始地点から殆ど動いていないアンリ。戦い方は正反対でありながらも、やはり予想通り戦況は互角であるように思える。
「今度は、こちらからですわ」
アンリが一節のみの短い詠唱を何度も連ねる。多種多様な魔法がリーフェに襲いかかった。炎、氷柱、岩、鎌鼬...地面を抉り、壁を焦がし、リーフェの服を浅く斬り、確実に彼女を追い詰める。まるで狩りだ。
はたから見ればリーフェは防戦一方、戦況がアンリに傾いて見える。
だが、
「バンっ!」
リーフェの一言で、視界が白に染まった。彼女が得意とする光属性の、初級魔法『閃光』だ。その光は会場全体を襲い、観客席からは悲鳴が上がった。
『うわッ!眩しくて何も見えませんッ!』
実況の声も唸り声をあげた。
普通なら周囲をぼんやり照らす程度の初級魔法も、魔力の出力を上げれば強烈な攻撃魔法へと変貌する。
無詠唱の、前兆なしに襲いかかる光速の攻撃など回避不能。
僕やイレーナは魔眼で魔法の前兆を確認し、腕で目を覆ったが、これを防げるのは魔眼で魔素を認識できるエルフくらい、アンリは近距離でまともに食らって行動不能......のハズだった。
「効きませんわ!」
「あら!?」
なんと、アンリは対応した。
僕やイレーナと同じく手で目を覆って防いだのだ。しかしどうやって?
「貴女の戦い方など知り尽くしてましてよ!」
また炎弾を放ちながら、アンリは今日初めての笑みをその顔に浮かべた。
「シィィッ!」
対してリーフェの方は先程までの笑みを消し、なんとか横に跳んで炎弾を避けた。
彼女の顔をかすめた炎弾が髪をチリチリと焦がす。
「まだまだぁッ!!」
しかし彼女は怯まず、前進する。
5m、4m、3m。二人は互いに攻撃を避け、相殺しながらとうとう手の届く距離まで近づいた。
「「ッーー!!」」
瞬間。
『光の矢』がアンリの足を貫き、
『炎の弾丸』がリーフェを吹き飛ばした。
『...だんだんと視界が元に戻ってまいりました。さて、勝負はどうなっているのでしょうか...おおっと!?』
司会者は観客席から身を乗り出して叫んだ。
『二人とも倒れているゥッ!!私達の目が見えなくなっていた約30秒ほどの間に一体何があったのか!アンリ選手は開始地点から殆ど変わらない位置で倒れ、リーフェ選手は服を焦げさせて大の字に倒れています!
引き分けッ、引き分けですッ!!』
決着はつかず、またいつかの闘いに持ち越された。
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