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第02章 王立魔法科学園

No.39 会食II

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 ユーク王と騎士ピトムニクに案内されて12畳程の部屋に入った。
 部屋の中心にはテーブルが置かれている。ダイニングルームだ。

「大広間にも食事をする場所はあるのだがな、あそこは如何せん広すぎて居心地が悪い。こっちの方が良いだろう?」
 ユーク王は気さくに言った。
「...陛下、もう少し威厳のある話し方をなさって下さい......」
 騎士のピトムニクが呆れたように言う。こちらの姿がユーク王の素なのだろうが、確かに王らしくはない。
 しかし、僕にとってはこちらの方が親しみやすくて良かった。

「もうすぐ使いが料理を持ってくるから、それまで土竜の事を聞いても良いかね?」
 彼はまるで好奇心旺盛な少年のようになって聞いてきた。
 僕はユーク王が「ウォーデンに似ている」と思った。
「ええ、構いません」
「私に届けられた報告書には君達が二人で倒したと書いてあってな、本当なのかね?」
 確かに、まだ齢11歳の少年と少女が土竜を倒したというのはにわかに信じ難い事だな。
 これにはイレーナが答えた。
「私や護衛の方が協力はしましたが、止めを刺したのはアルバートです」
 若干誤解を招きかけない言い方である。

「おお、本当なのかね!土竜というのはやはり強いかね?私は竜を絵や本でしか見たことがなくてな......」

 等と様々な質問をされ、それに答えているうちに料理が運ばれてきた。部屋中に食欲をそそる香りが立ちこめる。

「では、料理を頂こうか。君達も遠慮せずに食べてくれ。
 ほら、ピトムニクも座らんか」
「陛下、私は...」
「いいから、ほれ。鎧など外せ堅苦しいわ」
 ユーク王が部屋の隅に立っていたピトムニクを呼び寄せて半ば無理やりに隣に座らせた。
 なんと言うか、立場や上下関係を気にしない自由な人だな。

「...そう言えば。君たちは学園で特待生らしいじゃないか。どうかね学園での生活は?」

 話の方向が急に変わった。
 そうだ、ガルムだ。ユーク王はガルムの事を知りたいに違いない。会食を提案したのも僕らが「ガルムと同世代の学友」だからだろう。土竜についての話というのは表面上でガルムについての話が本当に聞きたい事なのかもしれない。もちろん憶測に過ぎないのだが。
 なぜこの人が自分の息子を、ガルムを『居ない存在』にしたのかは分からないが、いま彼と接して「ガルムが不要だった」だとか「気に入らなかった」だとか言う理由でそういう事をするような人物ではないと感じた。
 だが、だからこそ余計に謎だった。
 僕は思い切って、さり気なくガルムの話題をふってみる。

「ええ、とても充実しています。特に特待生の友人達とは仲良くしていますね」
「おお、そうか。その友人とはどんな者達かね?」

 (食いついた!)そう思って、更にもう一歩踏み込んで話す。

「特待生は僕とイレーナを除いてあと3人います。
 名前はアンリ、リーフェ、ガルムです。
 アンリは人間族の少女で礼儀も正しく、頼りがいがありますね。魔法も、火・風・土属性が上級魔法まで使えます。
 リーフェは獣人族の少女で誰にでも気さくに話しかけてすぐに仲良くなれます。彼女は全ての属性魔法を中級で扱える万能さで、特に光属性は無詠唱で扱うことが出来る優秀な魔術士です」
「ふむ、その二人については噂で聞いておる。将来は是非、近衛騎士団に入ってもらいたいものだな」
「アンリは近衛騎士団に入ることが夢だと言っておりましたよ。
 ......それで、最後のガルムですが...」
「どうかしたのか?」
 僕が少し言い淀むと、ユーク王が訊ねてくる。平静を装っているが、若干不安そうなのが隠しきれていない。
「彼は、気弱なところはありますが努力家です。魔法の才には恵まれているとは言えませんが、それ以外の勉学は優秀ですし、何より人一倍の向上心があります。きっとこれから伸びるでしょうね」
「ふむ、そこへ更に君達が居る訳だ。今年はどうやら豊作だな、ピトムニク。お前のその座も怪しいかもしれぬぞ」
「...その時は私も更に腕を磨いておきましょうぞ」

 少し、空振りしたか?ユーク王はガルムの事についてあまり触れなかった。僕は更に踏み込んで話す。

「...ですがそのガルムが、今大きな困難に直面しています」
「...どういう事かね?」

 今度はあからさまに反応してきた。

「彼は...平民なのですが、それと魔法の才がまだ伸びていない事が理由で特定の生徒にイジメられています」
「...そうか、それは大変だな......君はそれをどうするつもりかね?」
「彼を強くしてみせ、イジメをした生徒と決闘して勝たせます」
 場の空気が、重いものに変わっていた。ユーク王は勿論の事、ピトムニクまで真剣な眼差しでこちらを見ている。

「君は、その彼を強く出来るというのかね?」
 おそらくユーク王はガルムが魔法の才にあまり恵まれていない事を知っているのだろう。彼の問いには重みがあった。
 しかし、僕は臆することなく言う。

「ええ、強くしてみせますとも。その時には是非、陛下にも決闘をご覧になって欲しいものです」
「......ああ、時間があれば是非見に行こう」

 強くしてみせるさ。
 努力は報われるという事を証明させてやるとも。
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