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第02章 王立魔法科学園

No.26 入学

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 アンリやリーフェが戻ってきた。リーフェは凄くワクワクした様子だし、アンリも興奮を抑えられないような様子だった。

「で、では。ご指導のほどよろしくお願いしますわ!」
 アンリが前のめり気味に言った。
「では、二人はどのような魔法が使えますか?」
 イレーナが訊ねる。2人はすぐさま答えた。
わたくしは光と闇属性は苦手ですけれど、火と風属性は上級まで扱えますのよ!」
わたしはどの属性も中級までしか扱えないけど光属性が得意かな!苦手な属性はないよ!」
 成程、アンリは一長一短な感じでリーフェは万能か。しかし、入学する頃から中級魔法が1つ扱えられれば上等とウォーデンが言っていたので二人共素晴らしい人材なのだとわかる。

 ......そして同時に、僕とイレーナが異常な事も痛感させられた。

「そうですか。私とアルは全属性で上級魔法が扱えます」
「「「な...」」」

 そう、僕達は既に全属性の上級魔法を扱えるようになっている。しかも、すべて無詠唱で発動可能だ。

「やはりお二人は偉大な人物になると思いますわ...」
「つまり、二人に魔術を教われば私も強くなれるかも!って事だね!」
「...凄いね......」
 三者三様の反応をされてしまう。しかしまあ、この程度の事なら隠す必要をあるまい。羨望の眼差しというのは居心地の良いものではないが。
「じゃあ、早速!何時もどんな訓練をしてるのか教えて欲しいな!」
 リーフェが先ほどのアンリ以上に前のめりになって言った。頭の獣耳けものみみがピクピクさせ、後ろの尻尾はフリフリ振られている。感情がわかり易いな。

 とは言っても、僕達の魔法訓練は普通だった。魔力の放出を何度もして、魔法を使って、威力を調整して、魔力枯渇のギリギリまで魔力を使う。その後は休憩をして終わりだ。
「魔力をこんなにギリギリまで使うのは、久々だけど...それ以外は普通だね」
「毎日続ければ変わるに違いありませんわ」
「...僕はすぐに魔力が無くなっちゃうから、出来ることが少ないね...」

 魔力を大量に使ってしまうと、目眩や失神までいかなくとも頭がボーッとしてしまう。しかしこれも毎日の様にしていれば耐性がついてくる。僕達はイレーナの母親であるアイナさんに毎日させられていたからもう慣れっこだ。思い返せば、あれもスパルタだったのだろうな。

「じゃあ、僕達は芝生の所で武術の訓練をして来るから3人は中で休んでいてくれて良いよ」
 僕は植木の木陰で休憩している3人に言った。
「武術?今から武術の訓練をするの?私も一緒にやっていい!?私、体力には自信あるんだよ!」
 リーフェが飛び上がって言った。また尻尾を振っている。本当に元気な少女だ。
「剣術か柔術の経験は?」
「ないよ!けど2人がやってるなら私もしないと強くなれないかもしれないし!」
「そういう事なら、私もやりますわよ...!」
「ぼ、僕は....遠慮しておくよ...」
「何言ってるの、男の子ならやらないと!」
「え、あ、あわ!」
 リーフェの言葉にアンリが立ち上がり、遠慮しようとしたガルムをリーフェは腕を引っ張って無理やり立たせた。ガルムは女々しい声を上げる。
「ぼ、僕は...!」
「はい、じゃあ始めてください、先生!」
 リーフェはガルムを若干無視して僕達に言った。
「では、まずは柔術の基礎からしましょうか...」
 柔術の訓練は1時間ほどで終わった。3人はリーフェ以外ヘロヘロだ。彼女はまだまだ元気な様子であるが。
「じゃあ、疲れてるようだし。これ位にして寮戻ろうか」


 一度、一緒に辛い経験をした者は仲良くなれると言うが僕達はあっという間に打ち解けた。これはリーフェのおかげでもあるだろう。


     ◇◆◇◆◇


 次の日。入試の日より少し少ない程度の人が学園にはいた。男は執事服のような服装、女は長いワンピースでどちらも黒を貴重とした気品あるデザインである。学園の制服だ。当然、僕もその中にいる。
 今日は新入生の入学式だ。学園にある広場に300人程の生徒が学年順に並び、その前方には教師陣が立っている。何人か見覚えのある顔があるが、殆どは初めて見る者ばかりであった。
 前の中心にある壇上に男が上がった。厳かな顔つきで頭には少し白髪しらがの見える初老の学長、ウォーデンだ。
 彼は壇上から僕達を見渡すと、声を張り上げて言った。
「数多くの同じ志を持った者の中から選ばれた諸君。入学おめでとう。
 合格の通知が来た時はどう感じただろうか。諸手を挙げて喜んだか、或いは当然だと思ったか。
 どうであれ諸君らは今、魔道士としての開始地点に立っている。ここは他の場所よりも遥かに難易度は高い。しかしその中でお互いが切磋琢磨し合い、己を鍛え上げることで初めて真の強さを得られるだろう。
 決して怠らず、かと言って張り詰めすぎないよう、己を理解して生活するように。
 以上!」

 新入生のみでなく後方の在校生からも拍手があがる。

 さあ、学園生活の始まりだ。
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