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第02章 王立魔法科学園
No.23 会食
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王都の謁見通りを進む、とある馬車の中に、異様な光景があった。公爵家のご令嬢が辺境の名誉貴族の息子と同じく辺境に暮らす下級貴族の娘に頭を下げていた。
「どうか、私をお二人の弟子にして下さいませ。私、お二人に師事すれば強くなれると思いますの!」
と、アンリは言う。イレーナが、落ち着いた様子で返事をする。
「アンリ様、私や彼もまだ未熟です。自分達が、実力を完全に発揮できるほど魔術が上達しているとは思っておりません。私達も、貴女様と同様に魔術を磨くために学園へやって来たのですから。
ですから、私達に師事するのではなく仲間として共に技術を上げ、共に切磋琢磨しながら、成長していきましょう。
それに、仮にも貴女様は侯爵家の御令嬢なのです。私達などに頭を下げてはいけません」
そんな事を言いつつも、イレーナの顔には微笑みがあった。我が子を諭す母親のような...そういえば、僕達は前世からの歳を足せば今は30と40.........いや、何も言うまい。僕達は只の11歳の少年と少女だ。うん、そうだとも。
アンリは、イレーナの言葉に感動していた。そして「分かりましたわ」と言ってキリッとした顔に戻る。
イレーナが凛とした雰囲気なら、アンリは豪とした雰囲気だ。やる気と自信に満ち溢れた、活気溢れる彼女は見るものを元気付ける力があるように思える。
「ところで、お二人は何処の出身ですの?」
「僕は、『極西のモアルド』です」
「私は生まれは違いますが育ちはアルと一緒です」
「そんなに遠くからいらしたんですの?
極西モアルドと言えば...
はて...?極西の、モアルド。それにシュティーア...?」
アンリが、急に思案に耽る。どうしたと言うのか。
「つかぬ事をお聞きしますが。アルバート様のお父上はオンス・シュティーア様ではありませんの?」
「よくご存知ですね?その通りです」
「通りで、オンス様といえば...と」
彼女が何か言いかけた所で、馬車が止まった。
『お嬢様。到着いたしました』
扉の向こうから女性の声が聞こえてくる。恐らく先程のメイドだろう。アンリが「分かりましたわ」と返事すると、扉がスッと開く。
アンリは立ち上がりながら言った。
「続きは食事中にしましょうか。私(わたくし)、お腹がすいてしまいましたわ」
僕達は「はい」と返事をして馬車から降りる彼女に続いた。
◇◆◇◆◇
王都中心部、貴族の屋敷が密集している区画には多くの高級店が建ち並ぶ。その内の一件に僕達は入った。中に入ると店員が、個室に案内する。店内には音楽が流れていた、落ち着いた格式ある音楽である。席に着くと、メニューを渡された。見れば、全てコース料理だ。取り敢えずアンリにお勧めを聞いてそれにした。
「....なんと!ではお二人は土竜を倒したのですね!」
食事をしながら、僕達の旅の話をした。土竜討伐の事を話すと、アンリとても興奮した様だった。
「...お二人は剣術などもお使いになられるのですか?」
「短刀はそれなりに、長剣の方は僕には大き過ぎて扱いづらいですね」「格闘術の方は二人共得意です」
「魔法に頼らずともお強そうですわね...」
「...魔術は何時からお習いになさってましたの?」
「何時からだった?」「確か5歳頃からです。もうすぐ7年目ですね」
「5歳!?その頃など私はまだ言葉を覚えていましたわ...」
「...将来の夢など御座いませんの?」
「あまり決まってはおりませんが...あえて言うならレーナと結婚することですかね」「それではもう叶っているようなものではないですか?」
「あら、お熱いですこと!」
「あはは。その為に生まれて来たようなモノですから」「アル、流石に恥ずかしいですよ」
「まあ!浪漫主義ですのね!...」
「...お二人はやっぱり特待生でしたのね。私もウォーデン様にお誘いを受けたのですけれど、まさかお二人が年下だったとは」
「ええ、ですから敬語など堅苦しい言葉遣いはやめてください」
「で、では。私にも普段どうりの口調で接して下さいませ!私、お二人ともっと仲良くしとう御座います!」
「宜しいのでしょうか?」
「ええ、是非に!それに学園は皆が例外なく平等な立場になる場所です。敬語など私には不要ですわ」
「そういう事なら。普段の僕はちょっと口が悪いかもだぞ?」
「あら、普段は男らしいのね?」
「アンリ様、人の恋人を口説くのはやめてくださいね?」
「そんな事、誓ってしませんわ。それに、アンリで良いですわよ?」
「レーナはこれが素なんだ」「呼び方は善処します...」
等と、軽く質問攻めにあっていたが、冗談も交えながら終始明るげな食事となった。最後には砕けた口調で会話するようになったし、彼女が僕達にとって初めての『同年代の友人』となった。
「どうか、私をお二人の弟子にして下さいませ。私、お二人に師事すれば強くなれると思いますの!」
と、アンリは言う。イレーナが、落ち着いた様子で返事をする。
「アンリ様、私や彼もまだ未熟です。自分達が、実力を完全に発揮できるほど魔術が上達しているとは思っておりません。私達も、貴女様と同様に魔術を磨くために学園へやって来たのですから。
ですから、私達に師事するのではなく仲間として共に技術を上げ、共に切磋琢磨しながら、成長していきましょう。
それに、仮にも貴女様は侯爵家の御令嬢なのです。私達などに頭を下げてはいけません」
そんな事を言いつつも、イレーナの顔には微笑みがあった。我が子を諭す母親のような...そういえば、僕達は前世からの歳を足せば今は30と40.........いや、何も言うまい。僕達は只の11歳の少年と少女だ。うん、そうだとも。
アンリは、イレーナの言葉に感動していた。そして「分かりましたわ」と言ってキリッとした顔に戻る。
イレーナが凛とした雰囲気なら、アンリは豪とした雰囲気だ。やる気と自信に満ち溢れた、活気溢れる彼女は見るものを元気付ける力があるように思える。
「ところで、お二人は何処の出身ですの?」
「僕は、『極西のモアルド』です」
「私は生まれは違いますが育ちはアルと一緒です」
「そんなに遠くからいらしたんですの?
極西モアルドと言えば...
はて...?極西の、モアルド。それにシュティーア...?」
アンリが、急に思案に耽る。どうしたと言うのか。
「つかぬ事をお聞きしますが。アルバート様のお父上はオンス・シュティーア様ではありませんの?」
「よくご存知ですね?その通りです」
「通りで、オンス様といえば...と」
彼女が何か言いかけた所で、馬車が止まった。
『お嬢様。到着いたしました』
扉の向こうから女性の声が聞こえてくる。恐らく先程のメイドだろう。アンリが「分かりましたわ」と返事すると、扉がスッと開く。
アンリは立ち上がりながら言った。
「続きは食事中にしましょうか。私(わたくし)、お腹がすいてしまいましたわ」
僕達は「はい」と返事をして馬車から降りる彼女に続いた。
◇◆◇◆◇
王都中心部、貴族の屋敷が密集している区画には多くの高級店が建ち並ぶ。その内の一件に僕達は入った。中に入ると店員が、個室に案内する。店内には音楽が流れていた、落ち着いた格式ある音楽である。席に着くと、メニューを渡された。見れば、全てコース料理だ。取り敢えずアンリにお勧めを聞いてそれにした。
「....なんと!ではお二人は土竜を倒したのですね!」
食事をしながら、僕達の旅の話をした。土竜討伐の事を話すと、アンリとても興奮した様だった。
「...お二人は剣術などもお使いになられるのですか?」
「短刀はそれなりに、長剣の方は僕には大き過ぎて扱いづらいですね」「格闘術の方は二人共得意です」
「魔法に頼らずともお強そうですわね...」
「...魔術は何時からお習いになさってましたの?」
「何時からだった?」「確か5歳頃からです。もうすぐ7年目ですね」
「5歳!?その頃など私はまだ言葉を覚えていましたわ...」
「...将来の夢など御座いませんの?」
「あまり決まってはおりませんが...あえて言うならレーナと結婚することですかね」「それではもう叶っているようなものではないですか?」
「あら、お熱いですこと!」
「あはは。その為に生まれて来たようなモノですから」「アル、流石に恥ずかしいですよ」
「まあ!浪漫主義ですのね!...」
「...お二人はやっぱり特待生でしたのね。私もウォーデン様にお誘いを受けたのですけれど、まさかお二人が年下だったとは」
「ええ、ですから敬語など堅苦しい言葉遣いはやめてください」
「で、では。私にも普段どうりの口調で接して下さいませ!私、お二人ともっと仲良くしとう御座います!」
「宜しいのでしょうか?」
「ええ、是非に!それに学園は皆が例外なく平等な立場になる場所です。敬語など私には不要ですわ」
「そういう事なら。普段の僕はちょっと口が悪いかもだぞ?」
「あら、普段は男らしいのね?」
「アンリ様、人の恋人を口説くのはやめてくださいね?」
「そんな事、誓ってしませんわ。それに、アンリで良いですわよ?」
「レーナはこれが素なんだ」「呼び方は善処します...」
等と、軽く質問攻めにあっていたが、冗談も交えながら終始明るげな食事となった。最後には砕けた口調で会話するようになったし、彼女が僕達にとって初めての『同年代の友人』となった。
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