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第2話
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俺は畑で野菜を育てている。
「何を育てているんですか?」
ミズハが興味深げに訊ねてきたので、俺はそれに答えた。
「トマトだよ。真っ赤な実をつけて、すごく綺麗なんだ」
「へぇ~、そうなんですね」
「まあ、収穫まではもう少し時間があるんだけどね」
「そうなんですね。ところで、京太さんは農業の経験があるんですか?」
「いや、ほとんど初めてだ。でも、俺には【農作業効率化】というスキルがあるから」
俺のスキルは植物を育てる能力だ。どんな荒れ果てた土地でも一瞬で緑豊かな農園に変えてしまうことができる。しかも、成長促進の効果もあるのですぐに収穫することができるのだ。
「すごい! 便利ですね。私も何か手伝いたいと思っていたのですが……」
「そうだな……、ミズハには野菜の訪問販売をしてもらいたいと思っている」
「訪問販売ですか? それはいったい……」
「ああ、家庭を一軒一軒回って作物を売り歩くんだ。ミズハの宗教勧誘の経験を活かせると思うんだよな」
「な、なるほど……。確かに私の経験が役に立ちそうですね……」
「とりあえず試してみないか?」
「はい、やってみます」
こうして、俺たちは最近収穫した野菜を持って、町へと繰り出した。そして、まずは近くの家を訪ねることにする。
「こんにちは。私はミズハと言います。神に仕える者です。今日はこちらのお宅に野菜の訪問販売に伺いました。どうか神の恵みをお受け取りください」
「えっ? あんたら誰?」
玄関で出迎えてくれた女性が困惑気味に訊ねる。
「実は私たちは『幸福の会』の者でして……」
「そ、そう……。なんか胡散臭いわね……」
女性は怪しむような目つきをしていた。無理もない話だろう。
「いえ、決して怪しい団体ではありません。私は本当に幸せな人生を歩みたいと願う人々の力になりたいと考えているだけです。そして、あなたにもそのチャンスを与えに来たんですよ」
「そう言われてもねぇ……」
「この野菜には特別な力があります。食べればきっと幸せになれるはずですよ?きっとあなたの人生が変わるはずです」
「そうかな? でも、高いんでしょ?」
「いいえ、今なら特別に定価の半額の価格で提供させていただきます」
「えっ?半額?本当!?」
「ええ、もちろんです」
「それじゃあ、買おうかしら……」
「ありがとうございます」
ミズハは丁寧に頭を下げると、籠から取り出したトマトを女性に手渡した。
「はい、どうぞ」
「ありがとう。皮にツヤがあって美味しそうね」
「このトマトには食べた人の運勢を上げる効果があるんです」
「そうなの? へぇ~」
「ぜひ、召し上がってみてください」
「わかったわ。楽しみにしているね」
「では、失礼いたします」
ミズハは再び深く頭を下げて、次の家の方へと向かった。
「……こんな感じで良かったですか?」
ミズハは不安げな表情を浮かべて訊ねてくる。
「うん、一軒目で売れるなんて凄いな」
俺は素直に感心していた。
「そんなことないですよ。半額って言っておけば大体売れますから」
「それでもすごいよ。俺がやったときは全然ダメだったからさ」
「ふふっ、ありがとうございます」
ミズハは嬉しそうな笑みを見せる。
「じゃあ、次はあっちの家に行ってみるか」
「はい」
「何を育てているんですか?」
ミズハが興味深げに訊ねてきたので、俺はそれに答えた。
「トマトだよ。真っ赤な実をつけて、すごく綺麗なんだ」
「へぇ~、そうなんですね」
「まあ、収穫まではもう少し時間があるんだけどね」
「そうなんですね。ところで、京太さんは農業の経験があるんですか?」
「いや、ほとんど初めてだ。でも、俺には【農作業効率化】というスキルがあるから」
俺のスキルは植物を育てる能力だ。どんな荒れ果てた土地でも一瞬で緑豊かな農園に変えてしまうことができる。しかも、成長促進の効果もあるのですぐに収穫することができるのだ。
「すごい! 便利ですね。私も何か手伝いたいと思っていたのですが……」
「そうだな……、ミズハには野菜の訪問販売をしてもらいたいと思っている」
「訪問販売ですか? それはいったい……」
「ああ、家庭を一軒一軒回って作物を売り歩くんだ。ミズハの宗教勧誘の経験を活かせると思うんだよな」
「な、なるほど……。確かに私の経験が役に立ちそうですね……」
「とりあえず試してみないか?」
「はい、やってみます」
こうして、俺たちは最近収穫した野菜を持って、町へと繰り出した。そして、まずは近くの家を訪ねることにする。
「こんにちは。私はミズハと言います。神に仕える者です。今日はこちらのお宅に野菜の訪問販売に伺いました。どうか神の恵みをお受け取りください」
「えっ? あんたら誰?」
玄関で出迎えてくれた女性が困惑気味に訊ねる。
「実は私たちは『幸福の会』の者でして……」
「そ、そう……。なんか胡散臭いわね……」
女性は怪しむような目つきをしていた。無理もない話だろう。
「いえ、決して怪しい団体ではありません。私は本当に幸せな人生を歩みたいと願う人々の力になりたいと考えているだけです。そして、あなたにもそのチャンスを与えに来たんですよ」
「そう言われてもねぇ……」
「この野菜には特別な力があります。食べればきっと幸せになれるはずですよ?きっとあなたの人生が変わるはずです」
「そうかな? でも、高いんでしょ?」
「いいえ、今なら特別に定価の半額の価格で提供させていただきます」
「えっ?半額?本当!?」
「ええ、もちろんです」
「それじゃあ、買おうかしら……」
「ありがとうございます」
ミズハは丁寧に頭を下げると、籠から取り出したトマトを女性に手渡した。
「はい、どうぞ」
「ありがとう。皮にツヤがあって美味しそうね」
「このトマトには食べた人の運勢を上げる効果があるんです」
「そうなの? へぇ~」
「ぜひ、召し上がってみてください」
「わかったわ。楽しみにしているね」
「では、失礼いたします」
ミズハは再び深く頭を下げて、次の家の方へと向かった。
「……こんな感じで良かったですか?」
ミズハは不安げな表情を浮かべて訊ねてくる。
「うん、一軒目で売れるなんて凄いな」
俺は素直に感心していた。
「そんなことないですよ。半額って言っておけば大体売れますから」
「それでもすごいよ。俺がやったときは全然ダメだったからさ」
「ふふっ、ありがとうございます」
ミズハは嬉しそうな笑みを見せる。
「じゃあ、次はあっちの家に行ってみるか」
「はい」
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