2 / 32
第1話 啓示
1-2
しおりを挟む
ミズハと一緒に街に出ると、彼女は俺の腕にしがみついてきた。
「こっちへ来てください」
そして俺を引っ張って行く。しばらく歩くと古びた建物が見えてきた。どうやらここが目的地らしい。建物の入口には看板があり、『幸福の会』と書かれている。
「ここは宗教団体なのかい?」
俺が訊ねると、彼女は答える。
「はい……そうです」
……マジかよ? 宗教とか面倒くさいなぁ……。俺はげんなりとするが、しかし弱みを見せるわけにもいかないので平静を装った。
「ここに用事があるのかい?」
「はい、そうなんです」
「ちなみに何のために来たんだい?」
「入信するために来たんですよ。もちろん京太さんも入信してくれますよね?」
……おい、ちょっと待ってくれ。俺は勧誘するために呼び出されたのか?冗談じゃない。そんなものに入るつもりはないぜ。
俺は彼女に言った。
「悪いけど、そういうのに興味はないんだよ。帰らせて貰うね」
「えっ? ちょ、ちょっと、どこへ行くのですか?」
「帰るんだよ。それじゃあね」
そう言って立ち去ろうとすると、彼女が俺の前に回り込んできた。
「駄目です! 絶対に逃がしませんから!」
なんなんだよこの女は…… 俺は苛立つが、彼女は真剣な表情をしている。
「私はどうしても幸せになりたいのです! ですから、どうか……!」
……どうやら引き下がる気は無さそうだな。仕方がない。適当に相手をしてやるか……
「……はぁ。分かったよ。それなら入るから、早く案内してくれないか?」
「はい! 分かりました!!」
彼女は嬉しそうに言う。それから俺たちは建物の中に入り、奥の部屋へと通された。部屋の中には数人の男女がいる。おそらく信者だろう。部屋の中を見回していると、1人の女性が近づいてきた。年齢は20代後半くらいだろうか。彼女は上品な雰囲気をまとっている。
「初めまして。私が教祖を務めています『ユナリア・アンデルセン』と申します。本日はお越しいただき誠にありがとうございます。貴方が京太さんですね?」
「えっと……そうです。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いしますね。ところで京太さんは、どのような悩みをお持ちなのでしょうか?」
「いえ、特にありません」
俺は即答する。
「ふふふ、隠しても無駄ですよ。私は相手の心を読むことができますから」
……え!? マジで!? 俺は驚く。この人は読心のスキルを持っているようだ。これでは誤魔化す事はできないだろう。
「実は……、勇者なのに勇者パーティーを追放されたのがトラウマになって、人間不信に陥っちゃったんです……」
俺は仕方なく正直に話すことにした。すると教祖様は笑顔を浮かべる。
「まあまあ、それは大変ですね……」
「それで自信喪失しちゃって……今はもう生きる意味が無いというか……とにかく人生を諦めかけているんです」
「なるほど……それは辛いでしょうねぇ」
「でしたら……私が力になりましょうか?」
「えっ!? ほ、本当ですか!?」
俺は驚いて声を上げる。まさかこんな展開になるとは思わなかった。
「もちろんです。私を信じてください。きっと良い結果をもたらして差し上げますよ」
彼女は慈愛に満ちた笑みを浮かべながら言う。俺は感動していた。なんて素晴らしい人なんだ!
「ありがとうございます! 是非ともお願いします!」
「はい、任せてください。まずはあなたが今やるべきことを教えますね」
「やるべきこと……ですか?」
「そうです。あなたの魂には大きな傷が付いています。このままだと永遠に癒えることはありません。なので、その問題を解決しなくてはならないのです」
「魂の傷ですか?」
「はい。でも安心してください。その方法はすでに分かっています。その方法は―――」
「こっちへ来てください」
そして俺を引っ張って行く。しばらく歩くと古びた建物が見えてきた。どうやらここが目的地らしい。建物の入口には看板があり、『幸福の会』と書かれている。
「ここは宗教団体なのかい?」
俺が訊ねると、彼女は答える。
「はい……そうです」
……マジかよ? 宗教とか面倒くさいなぁ……。俺はげんなりとするが、しかし弱みを見せるわけにもいかないので平静を装った。
「ここに用事があるのかい?」
「はい、そうなんです」
「ちなみに何のために来たんだい?」
「入信するために来たんですよ。もちろん京太さんも入信してくれますよね?」
……おい、ちょっと待ってくれ。俺は勧誘するために呼び出されたのか?冗談じゃない。そんなものに入るつもりはないぜ。
俺は彼女に言った。
「悪いけど、そういうのに興味はないんだよ。帰らせて貰うね」
「えっ? ちょ、ちょっと、どこへ行くのですか?」
「帰るんだよ。それじゃあね」
そう言って立ち去ろうとすると、彼女が俺の前に回り込んできた。
「駄目です! 絶対に逃がしませんから!」
なんなんだよこの女は…… 俺は苛立つが、彼女は真剣な表情をしている。
「私はどうしても幸せになりたいのです! ですから、どうか……!」
……どうやら引き下がる気は無さそうだな。仕方がない。適当に相手をしてやるか……
「……はぁ。分かったよ。それなら入るから、早く案内してくれないか?」
「はい! 分かりました!!」
彼女は嬉しそうに言う。それから俺たちは建物の中に入り、奥の部屋へと通された。部屋の中には数人の男女がいる。おそらく信者だろう。部屋の中を見回していると、1人の女性が近づいてきた。年齢は20代後半くらいだろうか。彼女は上品な雰囲気をまとっている。
「初めまして。私が教祖を務めています『ユナリア・アンデルセン』と申します。本日はお越しいただき誠にありがとうございます。貴方が京太さんですね?」
「えっと……そうです。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いしますね。ところで京太さんは、どのような悩みをお持ちなのでしょうか?」
「いえ、特にありません」
俺は即答する。
「ふふふ、隠しても無駄ですよ。私は相手の心を読むことができますから」
……え!? マジで!? 俺は驚く。この人は読心のスキルを持っているようだ。これでは誤魔化す事はできないだろう。
「実は……、勇者なのに勇者パーティーを追放されたのがトラウマになって、人間不信に陥っちゃったんです……」
俺は仕方なく正直に話すことにした。すると教祖様は笑顔を浮かべる。
「まあまあ、それは大変ですね……」
「それで自信喪失しちゃって……今はもう生きる意味が無いというか……とにかく人生を諦めかけているんです」
「なるほど……それは辛いでしょうねぇ」
「でしたら……私が力になりましょうか?」
「えっ!? ほ、本当ですか!?」
俺は驚いて声を上げる。まさかこんな展開になるとは思わなかった。
「もちろんです。私を信じてください。きっと良い結果をもたらして差し上げますよ」
彼女は慈愛に満ちた笑みを浮かべながら言う。俺は感動していた。なんて素晴らしい人なんだ!
「ありがとうございます! 是非ともお願いします!」
「はい、任せてください。まずはあなたが今やるべきことを教えますね」
「やるべきこと……ですか?」
「そうです。あなたの魂には大きな傷が付いています。このままだと永遠に癒えることはありません。なので、その問題を解決しなくてはならないのです」
「魂の傷ですか?」
「はい。でも安心してください。その方法はすでに分かっています。その方法は―――」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
193
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる