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第1話 休憩
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俺は疑問を抱きながらも、黙って彼について行った。
------
しばらく歩いて辿り着いた先は、とある部屋の前であった。その扉の上には『社長室』と書かれたプレートがある。
「えっ? ここって……」
俺は予想外の場所に戸惑い、思わず足を止める。するとカグラが俺の手を引き、無理やり中へと押し込んだ。
「痛い! もう少し優しく……」
「悪いな。さあ入れよ、お前を待ってる人がいるぜ?」
「はぁ……」
意味深な笑みを浮かべながら、カグラがそう言ってくる。一体誰なのかと思いつつ、部屋の中に一歩踏み入れた。
「失礼します……」
「やぁ、待っていたよ。佐藤京太くん」
するとそこには、白髪の男性がいた。年齢は50代くらいで、スーツを着ている。
「あの……あなたは?」
「おっと、自己紹介がまだだったね。私はこの会社の社長の、アルデバラン・ローウェルという者だよ」
「えぇー!?」
まさかの社長登場に、驚きの声を上げる。そんな俺を見て、カグラが笑い声を上げた。
「ハハッ! 驚いているようだな」
「そりゃ驚くだろ! 休憩だと思ってたのに、いきなり社長に会うことになるんだもん!」
「そう怒るなって。ほら、これやるから機嫌直せ」
そう言いながら、彼は俺の前に缶コーヒーを差し出す。それを受け取って中身を見ると、どうやらブラックコーヒーのようだった。
「……いただきます」
俺は不貞腐れながら、プルタブを開ける。そして一気に飲み干すと、口の中に広がる苦味に耐えながら言った。
「ふぅ……それで、どうしてこんなところに呼んだんですか?」
ローウェルさんに尋ねると、彼は笑顔のまま答えた。
「君に話したいことがあったんだ」
「俺に?」
「ああ。実はね、君に赴任先を用意しておいたんだ。だから今日はそのことについて、話をしようと思ったんだよ」
「赴任先のこと……」
「うん。ちなみにその場所は、ここから10億光年離れた場所にある恒星だよ」
「はあっ!? 10億光年!?」
俺は驚きすぎて、思わず大声を出してしまう。しかしすぐに冷静になり、恐る恐る尋ねた。
「でも俺ってアルバイトですけど、アルバイトにも赴任なんてあるんですか?」
「もちろんだとも。我が社は正規も非正規も関係ない」
「へぇ、そうなんですか」
「それに君は、とても優秀らしいじゃないか。カグラからも報告を受けているよ」
「カグラ先輩から……」
俺は嬉しさのあまり頬を緩める。カグラ先輩は俺の憧れの先輩だし、褒められるとやっぱり嬉しいものだ。
「それでどうだい? 行ってくれるかな?」
「はい、行きます」
俺は迷わず即答した。
「おお、良かった……断られたらどうしようかと思っていたところだ」
「断るわけないですよ! むしろ行かせてください!」
「ありがとう。では詳しい話はまた後でするとして……とりあえず、今日はもう帰りなさい」
「分かりました」
こうして俺は新たな赴任先に期待しながら、家に帰ることになった。
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しばらく歩いて辿り着いた先は、とある部屋の前であった。その扉の上には『社長室』と書かれたプレートがある。
「えっ? ここって……」
俺は予想外の場所に戸惑い、思わず足を止める。するとカグラが俺の手を引き、無理やり中へと押し込んだ。
「痛い! もう少し優しく……」
「悪いな。さあ入れよ、お前を待ってる人がいるぜ?」
「はぁ……」
意味深な笑みを浮かべながら、カグラがそう言ってくる。一体誰なのかと思いつつ、部屋の中に一歩踏み入れた。
「失礼します……」
「やぁ、待っていたよ。佐藤京太くん」
するとそこには、白髪の男性がいた。年齢は50代くらいで、スーツを着ている。
「あの……あなたは?」
「おっと、自己紹介がまだだったね。私はこの会社の社長の、アルデバラン・ローウェルという者だよ」
「えぇー!?」
まさかの社長登場に、驚きの声を上げる。そんな俺を見て、カグラが笑い声を上げた。
「ハハッ! 驚いているようだな」
「そりゃ驚くだろ! 休憩だと思ってたのに、いきなり社長に会うことになるんだもん!」
「そう怒るなって。ほら、これやるから機嫌直せ」
そう言いながら、彼は俺の前に缶コーヒーを差し出す。それを受け取って中身を見ると、どうやらブラックコーヒーのようだった。
「……いただきます」
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「ふぅ……それで、どうしてこんなところに呼んだんですか?」
ローウェルさんに尋ねると、彼は笑顔のまま答えた。
「君に話したいことがあったんだ」
「俺に?」
「ああ。実はね、君に赴任先を用意しておいたんだ。だから今日はそのことについて、話をしようと思ったんだよ」
「赴任先のこと……」
「うん。ちなみにその場所は、ここから10億光年離れた場所にある恒星だよ」
「はあっ!? 10億光年!?」
俺は驚きすぎて、思わず大声を出してしまう。しかしすぐに冷静になり、恐る恐る尋ねた。
「でも俺ってアルバイトですけど、アルバイトにも赴任なんてあるんですか?」
「もちろんだとも。我が社は正規も非正規も関係ない」
「へぇ、そうなんですか」
「それに君は、とても優秀らしいじゃないか。カグラからも報告を受けているよ」
「カグラ先輩から……」
俺は嬉しさのあまり頬を緩める。カグラ先輩は俺の憧れの先輩だし、褒められるとやっぱり嬉しいものだ。
「それでどうだい? 行ってくれるかな?」
「はい、行きます」
俺は迷わず即答した。
「おお、良かった……断られたらどうしようかと思っていたところだ」
「断るわけないですよ! むしろ行かせてください!」
「ありがとう。では詳しい話はまた後でするとして……とりあえず、今日はもう帰りなさい」
「分かりました」
こうして俺は新たな赴任先に期待しながら、家に帰ることになった。
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