地球から10億光年離れた恒星でアルバイトを始めた結果

ひぽぽたます

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第1話 休憩

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ここはとある星系にある惑星、アルデバラン。その衛星軌道上に、『スペース・ラブ』社が所有する宇宙ステーションがある。そしてこのステーションには、様々な星の生命体が働いている。

「おーい! そっちの作業終わったか?」

「はい、今終わりました!」

「そうか、ご苦労さん」

「いえいえ、仕事ですから……」

『スペース・ラブ』社は、主に宇宙旅行の斡旋を業務としている会社だ。

「それじゃあ、次の指示が来るまで休憩しててくれ」

「はい、ありがとうございます!」

ある者は船内の製造ラインで宇宙船を作り、またある者は宇宙船の整備をする。中には、他の部署へ手伝いに行く者もいる。

「ふぅ……今日も忙しいなぁ」

そんな彼らを見ながら、俺は1人呟いた。俺の名前は、佐藤京太。どこにでも居るような平凡な男さ。俺は現在、『スペース・ラブ』社でアルバイトをしている。まだ入ったばかりだが、それなりに楽しくやっているよ。

「それにしても、みんなよく働くなぁ……」

周りを見ると、皆真剣な表情で仕事をしている。その姿はとても格好良くて、とても輝いて見えた。俺も早く一人前になって、あんな風になりたいと思う。しかし、中々上手くいかないものだ……

「どうしたの? 京太くん」

俺がボーっとしていたら、隣の席に座っている女性が話しかけてきた。彼女は、同じ職場で働く女性だ。名前は、メイラというらしい。彼女は俺より3歳上の先輩であり、とても美人なお姉さんだ。俺とはあまり接点が無いのだが、こうして時々話しかけてくれる。

「いえ、何でもないですよ」

「そう? なら良いんだけどね」

彼女はそう言うと、自分の机に戻っていった。その後ろ姿を見て、思わずドキッとする。

(やっぱり綺麗だよなぁ……)

彼女の後ろ姿に見惚れながら、心の中で呟く。彼女と初めて会った時、あまりの美しさに一目惚れしてしまったのだ。それからというもの、彼女を見る度に胸がドキドキしてしまう。

「おい、何をやってるんだ?」

すると突然、背後から声をかけられた。振り返るとそこには、見慣れた先輩の姿があった。彼は俺の教育係でもあるため、いつも一緒に行動している。彼の名前は、カグラと言う。顔立ちは整っていてイケメンだし、性格も良い。なので社内の女性達からはモテていて、ファンクラブもあるという噂を聞いたことがある。

「いや、別に何もしてませんけど……」

「本当か? なんか怪しいぞ」

「ホントだってば!」

彼の疑いの目から逃れるように、慌てて否定する。まあ確かに少しだけ彼女に見惚れていたけど、決して変なことを考えていた訳じゃない。

「それより、そっちの仕事は終わったのか?」

「はい、ちょうど今終わったところです」

「そうか、お疲れ様」

カグラはそう言いながら、俺の頭をポンッと撫でてくる。俺は子供扱いされているようで恥ずかしかったが、同時に嬉しくもあった。

「それで次は、何の仕事をすればいいんですか?」

「そうだなぁ……とりあえず、休憩してこい」

「えっ!? いやまだ仕事が残ってますし……」

「大丈夫だ、あとは他の奴に任せればいい」

「そういう訳にはいきませんよ! ちゃんと最後までやり遂げないと……」

俺が必死に訴えかけると、彼は呆れた様子で溜息をつく。そしてそのまま立ち上がり、俺の腕を掴んだ。

「そんなこと言わずに、休憩してこいよ」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

俺は引きずられるようにして、部屋の外へと連れていかれる。周りの人達が何事かという目を向ける中、俺は彼に抗議をした。

「なんで急に、休憩なんてさせるんだよ!?」「お前の顔を見りゃ分かるよ。働きすぎだ」

「いや、でも……」

「良いから休め。これは命令だ」

「うぐっ……分かりましたよ」

俺は渋々、彼の言葉に従うことにした。まあ正直言って、さっきから眠気が凄くて限界だったしね。

「よし、それじゃあ行くぞ。ついて来い」

「どこに行くつもりなんですか?」

「それは行ってみてのお楽しみだ」

「はあ……」

一体何処に連れていく気なのか疑問だったが、今は大人しく従うことにしよう。そう思いながら、俺は彼と一緒に部屋を出たのであった。
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