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◆拾伍
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「美慶が……選ばれてしまった」
草からの報告に宗近は目に見えて落胆する。
その姿を見て長谷川達は項垂れるしかなかった。
「殿……、お力になれず……面目次第もございませぬ」
「だから……言ったではないか――」
「……」
「だから……。気に入られてしまったら如何すると言ったではないかっ!」
「殿っ!」
「彼奴は儂が大事に大事に育ててきた最愛の子を横から――」
情緒不安定に狼狽する宗近に谷垣が声をあげる。
「殿! 美慶殿のことはもうお忘れくだされ!」
神経を逆撫でする心無い言葉に宗近は目を血走らせて谷垣を睨み、蹴り倒して怒鳴った。
「ふざけるな! 美慶は儂の愛し子じゃ! あんな小童に誰がやるか!」
普段温厚な宗近からは考えられない暴挙であったため、家臣達は一瞬体を強張らせた。
その間に宗近は狂ったように美慶の名を叫び、部屋から飛び出してしまう。
「と、殿っ!」
「美慶ぃぃぃ!」
「殿! お待ちを! 誰か殿をお止めしろ!」
「殿、お考え直しを――!」
向かう先など分かり切っている長谷川達は慌てて宗近の後を追った。
草からの報告に宗近は目に見えて落胆する。
その姿を見て長谷川達は項垂れるしかなかった。
「殿……、お力になれず……面目次第もございませぬ」
「だから……言ったではないか――」
「……」
「だから……。気に入られてしまったら如何すると言ったではないかっ!」
「殿っ!」
「彼奴は儂が大事に大事に育ててきた最愛の子を横から――」
情緒不安定に狼狽する宗近に谷垣が声をあげる。
「殿! 美慶殿のことはもうお忘れくだされ!」
神経を逆撫でする心無い言葉に宗近は目を血走らせて谷垣を睨み、蹴り倒して怒鳴った。
「ふざけるな! 美慶は儂の愛し子じゃ! あんな小童に誰がやるか!」
普段温厚な宗近からは考えられない暴挙であったため、家臣達は一瞬体を強張らせた。
その間に宗近は狂ったように美慶の名を叫び、部屋から飛び出してしまう。
「と、殿っ!」
「美慶ぃぃぃ!」
「殿! お待ちを! 誰か殿をお止めしろ!」
「殿、お考え直しを――!」
向かう先など分かり切っている長谷川達は慌てて宗近の後を追った。
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