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◆陸
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美慶が決意を決めた頃、豊稔の旅籠屋の一室は誰もが息を呑むほど、酸鼻たる光景となっていた。
酒盛りでもしていたのか、豪勢な膳が無残に散る中、灯し油の火がゆらゆらと、一室を真っ赤に染め上げているものと混ざりあう杯の酒を、赤黒く照らしている。
「大変なことをしてくださいましたな、漏洩すること無く無事逃げ切れるとでもお思いになられたか……」
「あっあぁ……」
数体の頭のない胴体を前にして、若武者姿の早菜姫は大量の血を浴び、恐怖で声も出ないようだ。
「お父上がお待ちです。城へお戻りください、早菜姫様」
血濡れた刀を下げながら、役人を連れた男は早菜姫を見下ろして溜息を吐いた。
「お連れしろ」
男がそう言うと、惨状に呆然と立ち尽くしていた役人が早菜姫の許へと歩み寄る。
腰を抜かした早菜姫は重く、早々に諦めた役人は彼女を引きずって城へと向かった。
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「あっあぁ……」
数体の頭のない胴体を前にして、若武者姿の早菜姫は大量の血を浴び、恐怖で声も出ないようだ。
「お父上がお待ちです。城へお戻りください、早菜姫様」
血濡れた刀を下げながら、役人を連れた男は早菜姫を見下ろして溜息を吐いた。
「お連れしろ」
男がそう言うと、惨状に呆然と立ち尽くしていた役人が早菜姫の許へと歩み寄る。
腰を抜かした早菜姫は重く、早々に諦めた役人は彼女を引きずって城へと向かった。
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