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2.病院ではお静かに
コスプレ少女は何を語る
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部屋に入り、点滴に繋がれたままベッドで横になる少女を改めて見る。
包帯を頭に巻かれ、顔のいたるところにガーゼが貼り付けられていて、それでもなお。
そのあまりにも整った端正な顔は、その固く結んだ硬質的な表情と相まって美しい彫刻のようだった。ヨーロッパ系の顔立ちだけど、よく見るとそれとも少し違う気もする。ハーフかなんかかな。
シルクのように真っ白な肌に、もはや人間離れ、と言ってもいい大きな赤い瞳はルビーを思わせる。それだけなら先天的に色素を持たないアルビノかと思ったけど、腰まであるつやのある長い髪の色は薄めの茶色、そうだな、ミルクティーみたいな色だったからそうではなさそうだ。どこの国の人だ?
人形のような大きな瞳からどこか可憐で儚げな雰囲気さえ感じる彼女は、しかしながら、患者用のゆったりとした病院服に着替えてなお、シルエットからでもその桁外れのプロポーションははっきりとわかった、つまり、ご立派なお胸のふくらみが。
改めて光の下で見れば見るほど。
まるでおしゃれなファッション雑誌から抜け出してきたかのような圧倒的に凄まじい美しさ。
こんなに綺麗なら実際にモデルなんかしていても良さそうだけど、こんな縁もゆかりもなさそうなド田舎で倒れていたんだから何か事情があったのかなあ。
「この子、日本語話せるんですか?」
遥場さんはオレの質問には答えてくれず、代わりに少女に向かって質問をする。
「何度も同じ質問をしてすいませんが、あなたの“本当の“名前を教えていただけませんか」
「構わない、何度でも教えてやる。わたしの名は、フィリアス、第四魔王殲滅部隊勇者長、フィリアス・アインディール・シルバーバレットラインだ」
あー、なるほど、完全に理解した。これはもうお手上げだ。警察さえも匙を投げるのも頷けた。でも、この少女が嘘を吐いているようにも見えなくて、これは確かに記憶の混乱? とやらを疑ってしまうのも無理はない。
「あー、じゃあ、フィリアスさん? この人のことは知ってますか?」
「知らないな。この人が何か?」
顔に似合わない流暢な日本語、どこか硬質的な口調。それでも、可憐で透明感のある歌うような声の響きが、やはり彼女がまだあどけない少女だと感じさせた。
「もしかしたら事件のショックで記憶が混濁しているかもしれませんね」
おい、そこの若い刑事のひと、事件とか言うんじゃあない! オレは何もしていない! それでもオレはやってない!
「いえ、わたしの記憶は確かです。彼のことは全く知りません」
そうだ、その調子だ! オレを赤の他人だと言ってくれ!
遥場さんと刑事は固い表情で互いの顔を見合わせていたけど、どこかうんざりとしていたような気もしなくもなかった。
包帯を頭に巻かれ、顔のいたるところにガーゼが貼り付けられていて、それでもなお。
そのあまりにも整った端正な顔は、その固く結んだ硬質的な表情と相まって美しい彫刻のようだった。ヨーロッパ系の顔立ちだけど、よく見るとそれとも少し違う気もする。ハーフかなんかかな。
シルクのように真っ白な肌に、もはや人間離れ、と言ってもいい大きな赤い瞳はルビーを思わせる。それだけなら先天的に色素を持たないアルビノかと思ったけど、腰まであるつやのある長い髪の色は薄めの茶色、そうだな、ミルクティーみたいな色だったからそうではなさそうだ。どこの国の人だ?
人形のような大きな瞳からどこか可憐で儚げな雰囲気さえ感じる彼女は、しかしながら、患者用のゆったりとした病院服に着替えてなお、シルエットからでもその桁外れのプロポーションははっきりとわかった、つまり、ご立派なお胸のふくらみが。
改めて光の下で見れば見るほど。
まるでおしゃれなファッション雑誌から抜け出してきたかのような圧倒的に凄まじい美しさ。
こんなに綺麗なら実際にモデルなんかしていても良さそうだけど、こんな縁もゆかりもなさそうなド田舎で倒れていたんだから何か事情があったのかなあ。
「この子、日本語話せるんですか?」
遥場さんはオレの質問には答えてくれず、代わりに少女に向かって質問をする。
「何度も同じ質問をしてすいませんが、あなたの“本当の“名前を教えていただけませんか」
「構わない、何度でも教えてやる。わたしの名は、フィリアス、第四魔王殲滅部隊勇者長、フィリアス・アインディール・シルバーバレットラインだ」
あー、なるほど、完全に理解した。これはもうお手上げだ。警察さえも匙を投げるのも頷けた。でも、この少女が嘘を吐いているようにも見えなくて、これは確かに記憶の混乱? とやらを疑ってしまうのも無理はない。
「あー、じゃあ、フィリアスさん? この人のことは知ってますか?」
「知らないな。この人が何か?」
顔に似合わない流暢な日本語、どこか硬質的な口調。それでも、可憐で透明感のある歌うような声の響きが、やはり彼女がまだあどけない少女だと感じさせた。
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「いえ、わたしの記憶は確かです。彼のことは全く知りません」
そうだ、その調子だ! オレを赤の他人だと言ってくれ!
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