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1.【急募】コスプレイヤーを拾った場合の対処法
僕らはみんなお年頃(34)
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状況的に警察には病院の方から通報してくれるとのことだった。
とりあえず、オレ達は病院内で待たされることになった。何かの事件に巻き込まれた可能性が高いからだそうだ。仕方ないとはいえ、こんな夜に子どもを連れてきているので早く帰してほしかったがそれは無理だろう。せめて、五日香だけでも帰してくれないだろうか。
「このまま事件性がなければ児童養護施設に預けられるみたい」
手持ち無沙汰の五日香が色々調べていたみたいだ。事件性はない。
「あの子、未成年だったのか」
ヨーロッパ系の白い肌で明らかに日本人ではないと思っていたけど、そのあまりにも整った顔立ちでは年齢もわからなかった。実際オレはもっと大人なのかと思っていた。
「アナタ、見る目ないもんね」
「オレと結婚しといてお前が言う?」
「本当よね」
オレ達はお互いの顔を見つめてなんとなく笑い合う。お互い疲れ切って酷い顔だったけど、こんなふうに笑うのも久しぶりだった気がする。
オレ達が結婚したのはもう5年も前か。
いわゆる職場結婚。今では五日香は違う職場に復職したけど、彼女とは元同僚だった。その時はお互い別に気にもしていなかったのにな。運命ってばずいぶん悪戯好きだよな。
まあ、順調に年を取っていれば子どももできるし、筋トレも億劫になってくるし、五日香は太る。
大人ってのはそんなもんよ。
「大人びてはいたけど16歳くらいでしょ、あの子。しかも、ぱっと見明らかに外国人でしょ? 密入国者の第二世代じゃないかしら」
「そうなると、どうなんだ?」
「身元がわかったら家族と一緒に強制送還じゃないかな」
ああ、そういうのテレビで見たことあるな。言葉もわからない何の思いれもない外国に連れていかれるやつ。
まあ、あんなきわどいコスプレしたままあんなところで倒れていたんだ。家出してパパ活してたらきっとろくでもない男にでも引っかかって着の身着のまま逃げてきた、とかそんなところだろう。何も知らないオレなんかが家庭環境をどうこう言いたくはないけど、何か良くない事情があの子にもあったのかもな。
こういうとき、助けたオレらには何もできない、っていうのは少し寂しい。
訳アリの少女のことを何も手助けできない。というか、むしろ非難されるのはこっちか。でも、そんなことより、なんかせっかく助けたのにそんな家庭に戻されてしまうのか、というなんともいえない無力感の方が勝ってしまっていた。
「なあ、五日香は帰った方がいいんじゃないか?」
「もうちょっと待ってみるわ、説明下手なアナタだけじゃその場で逮捕されかねないし」
「助かります」
結局、その日は警察はやってこなくて、しかも何の連絡もなくて、オレと五日香は日本における警察と教育と税金と物価上昇への不平不満をねちねち漏らしつつ。
寝心地の悪いソファーで少し不機嫌そうに眠る子ども達が落っこちないようにしながら病院で眠れぬ夜を過ごしたのだった。
とりあえず、オレ達は病院内で待たされることになった。何かの事件に巻き込まれた可能性が高いからだそうだ。仕方ないとはいえ、こんな夜に子どもを連れてきているので早く帰してほしかったがそれは無理だろう。せめて、五日香だけでも帰してくれないだろうか。
「このまま事件性がなければ児童養護施設に預けられるみたい」
手持ち無沙汰の五日香が色々調べていたみたいだ。事件性はない。
「あの子、未成年だったのか」
ヨーロッパ系の白い肌で明らかに日本人ではないと思っていたけど、そのあまりにも整った顔立ちでは年齢もわからなかった。実際オレはもっと大人なのかと思っていた。
「アナタ、見る目ないもんね」
「オレと結婚しといてお前が言う?」
「本当よね」
オレ達はお互いの顔を見つめてなんとなく笑い合う。お互い疲れ切って酷い顔だったけど、こんなふうに笑うのも久しぶりだった気がする。
オレ達が結婚したのはもう5年も前か。
いわゆる職場結婚。今では五日香は違う職場に復職したけど、彼女とは元同僚だった。その時はお互い別に気にもしていなかったのにな。運命ってばずいぶん悪戯好きだよな。
まあ、順調に年を取っていれば子どももできるし、筋トレも億劫になってくるし、五日香は太る。
大人ってのはそんなもんよ。
「大人びてはいたけど16歳くらいでしょ、あの子。しかも、ぱっと見明らかに外国人でしょ? 密入国者の第二世代じゃないかしら」
「そうなると、どうなんだ?」
「身元がわかったら家族と一緒に強制送還じゃないかな」
ああ、そういうのテレビで見たことあるな。言葉もわからない何の思いれもない外国に連れていかれるやつ。
まあ、あんなきわどいコスプレしたままあんなところで倒れていたんだ。家出してパパ活してたらきっとろくでもない男にでも引っかかって着の身着のまま逃げてきた、とかそんなところだろう。何も知らないオレなんかが家庭環境をどうこう言いたくはないけど、何か良くない事情があの子にもあったのかもな。
こういうとき、助けたオレらには何もできない、っていうのは少し寂しい。
訳アリの少女のことを何も手助けできない。というか、むしろ非難されるのはこっちか。でも、そんなことより、なんかせっかく助けたのにそんな家庭に戻されてしまうのか、というなんともいえない無力感の方が勝ってしまっていた。
「なあ、五日香は帰った方がいいんじゃないか?」
「もうちょっと待ってみるわ、説明下手なアナタだけじゃその場で逮捕されかねないし」
「助かります」
結局、その日は警察はやってこなくて、しかも何の連絡もなくて、オレと五日香は日本における警察と教育と税金と物価上昇への不平不満をねちねち漏らしつつ。
寝心地の悪いソファーで少し不機嫌そうに眠る子ども達が落っこちないようにしながら病院で眠れぬ夜を過ごしたのだった。
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