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4.GAME 0.ver.
嘘か真か
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しとりが軽やかに落ちて行った穴はすぐに塞がり、オレはその痕跡をバカみたいに見つめていることしかできなかった。
だからこそ。
「……お前はあいつらの仲間だったのか?」
しとりが一切見向きもせずに置き去りにしたほのかには、これだけは聞いておかなきゃいけなかった。
「違う! わたしは奪われた聖遺物を取り戻したかっただけなの! こんなことになるなんて思わなかった!」
「ほのか、お前を信じてたオレ達がバカだったってことか」
もう何も信じられなかった。
オレがしとりと戦っている間、ほのかはずっと部屋の隅で頭を抱えてうずくまっていただけだった。
現実から目を背けていたのか(ほのかにとっての現実が“どっち”だったのかはわからない)。
失うのが怖かったのか(ほのかにとっての喪失が“どっち”だったのかはわからない)。
とにかく、ほのかは目の前の全てから目を閉ざしていた。
「さすがスパイだ、敵を騙すにはまず味方から、いや、初めからオレ達は味方じゃなかったんだもんな」
さっきまでの戦闘の興奮からなのか、オレの口からは自分でも意図していなかったそんな粗暴な言葉しか出なかった。
でもさ、いつものほのかならすかさず反論するはずだろ。オレ達はそういう仲だったじゃないか。
だけど。
「わたしは……」
ほのかは弱々しくオレを見上げてから背を向けてしまった。ごしごしと乱暴に顔を擦るほのか。
いや、そうじゃないだろ。さっさとバカみたいに反論してくれよ。そうじゃなきゃ、オレ自身がさっき言ってしまったばかりの言葉を後悔してしまうじゃないか。
「わたしはみんなのこと、仲間だって……」
ほのかはこっちを振り返ろうとして、だけど、すぐにそれをやめて部屋の出口へと駆け出してしまった。唯一ほんの少しだけほっとしたのは、ほのかが駆けるその方向がしとりとは違うことだけだった。
その小さな背中を目線だけで追いながら。
オレはその後を追うことがどうしてもできなかった。
さっきまではあんなに動けていたはずなのに、どうしても拭いきれない不信がオレをその場に縛り付けていた。
オレ達を、メグリやアハルギを裏切ったやつを仲間だとはもう思えなかった。(うふふ、甘露、甘露)「……少し黙れよ、アウラ」
そうして、いつまでも立ち尽くしていると。
駆け付けてきた別の管理局支部の職員達の足音が聞こえてきた。
その騒々しい音がオレをこの重苦しい呪縛から解く。オレはこの場から逃げるように砕け散った部屋を後にした。
なんとなくだけど、オレがここにいるのは色々と都合が悪い気がするし、召喚には応じてやったんだ、もういいだろ。
こうして事件は無事解決した。
だけど。
オレの心は重苦しいままだった。
ーーthe Death by degrees……
だからこそ。
「……お前はあいつらの仲間だったのか?」
しとりが一切見向きもせずに置き去りにしたほのかには、これだけは聞いておかなきゃいけなかった。
「違う! わたしは奪われた聖遺物を取り戻したかっただけなの! こんなことになるなんて思わなかった!」
「ほのか、お前を信じてたオレ達がバカだったってことか」
もう何も信じられなかった。
オレがしとりと戦っている間、ほのかはずっと部屋の隅で頭を抱えてうずくまっていただけだった。
現実から目を背けていたのか(ほのかにとっての現実が“どっち”だったのかはわからない)。
失うのが怖かったのか(ほのかにとっての喪失が“どっち”だったのかはわからない)。
とにかく、ほのかは目の前の全てから目を閉ざしていた。
「さすがスパイだ、敵を騙すにはまず味方から、いや、初めからオレ達は味方じゃなかったんだもんな」
さっきまでの戦闘の興奮からなのか、オレの口からは自分でも意図していなかったそんな粗暴な言葉しか出なかった。
でもさ、いつものほのかならすかさず反論するはずだろ。オレ達はそういう仲だったじゃないか。
だけど。
「わたしは……」
ほのかは弱々しくオレを見上げてから背を向けてしまった。ごしごしと乱暴に顔を擦るほのか。
いや、そうじゃないだろ。さっさとバカみたいに反論してくれよ。そうじゃなきゃ、オレ自身がさっき言ってしまったばかりの言葉を後悔してしまうじゃないか。
「わたしはみんなのこと、仲間だって……」
ほのかはこっちを振り返ろうとして、だけど、すぐにそれをやめて部屋の出口へと駆け出してしまった。唯一ほんの少しだけほっとしたのは、ほのかが駆けるその方向がしとりとは違うことだけだった。
その小さな背中を目線だけで追いながら。
オレはその後を追うことがどうしてもできなかった。
さっきまではあんなに動けていたはずなのに、どうしても拭いきれない不信がオレをその場に縛り付けていた。
オレ達を、メグリやアハルギを裏切ったやつを仲間だとはもう思えなかった。(うふふ、甘露、甘露)「……少し黙れよ、アウラ」
そうして、いつまでも立ち尽くしていると。
駆け付けてきた別の管理局支部の職員達の足音が聞こえてきた。
その騒々しい音がオレをこの重苦しい呪縛から解く。オレはこの場から逃げるように砕け散った部屋を後にした。
なんとなくだけど、オレがここにいるのは色々と都合が悪い気がするし、召喚には応じてやったんだ、もういいだろ。
こうして事件は無事解決した。
だけど。
オレの心は重苦しいままだった。
ーーthe Death by degrees……
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