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少年は巻き込まれ系主人公を夢見る……前に生き残れるのか
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「すまない! 今担当者が緊急事態で手が離せない。ちなみに私もだ、すまない!」
「は、はあ」
少し苛立ちを滲ませながらそう言って足早に去っていく管理局職員をさすがに引き留められるはずもなく、オレはポツンと立ち尽くす。
「緊急事態って……」
完全にほのかのことだよな。あいつ、何やってんだ、やらかしすぎだろ。つーか、さっきからタイミング悪すぎやしないか?
モノリスからのナノマシンエレベーターでエントランスまで案内されたはいいけど、もう、帰ってもいいかなあ。あ、でも、自分じゃ降りれないか。
「はあ……」切なく吐息。
このまま待ちぼうけもアホらしいし、要請通り来てはやったんだ、もういいだろ。
(わらわも同感じゃ。時間にルーズなのは嫌いじゃ)
魔剣であるアウラにこの真っ白なだけで殺風景なエントランスが見えているのかわからないけど、至極つまらなさそうな声も相まって、オレもそろそろうんざりしてきた。
何もない空間。
この世界でそれは異質だ。
何もない、なんてあまりにも非効率的な空間の使い方を許容しない。
限りある資源である空間においてはナノ単位、いや、ヨクト単位で何かしらの効果をもたせなければならない。
空気中にすら一切の無駄な隙間なく埋め尽くされる閉塞感。
ほとんど脅迫的なまでに優先される効率化の風潮。
それを無視するかのようなこの真っ白なエントランスにどことなく不安になってしまうのも、それはオレも少なからずこの風潮に乗ってしまっているからかもしれないな。
ま、心の余裕くらいはあってほしいけどね。
確かあの辺だったな、とナノマシンエレベーターの方に振り返ろうとしたその時。
「うおッ!?」
衝撃と振動。反射的に思わず屈む。
建物が激しく揺れる。立っていられず四つん這い。
な、なんだ、何が起きた!?
何もわからないままただその場にいることしかできない。
「だ、大丈夫か、君!」
すると、こんなところにいるのが完全に場違いな男子高校生に声を掛けてくれる優しい人がいた。もうすでにオレの中でこの声の主に対する好感度はMAXだ。完全に良い人だ。
「あ、す、すいません、当局に呼ばれて来たんですけど、……何があったんですか?」
「すまないが僕にも分からない。状況は混乱している。とにかく君は避難した方がいい」
いかにも公務員、といった風情の面白味もないグレーのスーツに銀色の坊主頭の若い職員は、オレに手を貸してくれてゆっくり立ち上がらせてくれた。
緊急事態。
さっき慌ただしく立ち去った職員が言っていたことと関係あるのだろうか。いや、これは完全にあるだろ。今はオレとこの職員しかいないけど少し前には他にも数人の職員が事態の収束のためかばたばたと駆け回っていた。
「出口のエレベーターはこっちだ」
影すらもないこんなにも真っ白な空間だと平衡感覚とか遠近感が狂ってしまうみたいで、意外にもこのエントランスは広くただ真っ白で何もないわけでもないらしかった。
その穏やかな雰囲気と細身のスーツ姿からは意外なほどがっしりとした手にキュンとしながらお兄さんに連れられてエレベーターがあるという場所に向かおうとすると。
「ここはエントランスか」
その不穏な声と共に。
どこからかぞろぞろと集まってきたのは、明らかにここの職員とは違う風情の、そう、テロリスト共だ。ぱっと見で5~6人くらいか。
彼らの服装はまちまちだった。
古い映像で見た軍隊風の服装の者。市民に紛れるためか外殻の衣服を着た者。ボロボロの外套を纏った者。ほとんど上半身裸の者。というよりも、彼らの身体の構造自体が一人一人違うせいで、服装は各々の身体構造に合わせていて彼らの持つ同一規格の物はその銃くらいだった。組織というよりは寄せ集めのチームみたいだ。
「おい、お前ら、両手を上げろ! 変な真似するんじゃないぞ!」
かちゃり、その顔面に緑色の鱗がびっしりと生えた男が携える銃の軽々しい金属音よりも。
その両手のナイフかと見間違えるほど鋭く尖った長い爪の方が銃よりも怖かった。そんなんで突き刺されたら顔なんて一発でぐちゃぐちゃのミンチになってしまうだろう。
幸い、無抵抗で拘束に応じたから殴られはしなかったけど、少しでも抵抗したら実力行使もやぶさかではないただならぬ雰囲気。
「クソッ、ここには扉も部屋もねえじゃねえか、人質なんてめんどくせえな」
今にも噛み殺されそうな剣幕で悪態とともにすぐ足元に唾を吐かれる。真っ白な床にへばりつくその汚れはとても奇異に見えた。
「今は何もしない方がいい、大人しく従おう」
「は、はい」
オレと職員のお兄さんは両手を後ろで縛られて、その辺の隅っこに座らされる。他にも数人の職員らしき人たちが向かいの壁際にいた。
オレだって余計なことして簡単に撃ち殺されるなんて嫌だ。ここは外殻治安維持の中枢ど真ん中だ、きっと必ず助けが来てくれる。
これが正真正銘のやれやれ系最強ハイスペック主人公なら。
やれやれ、どうしてオレばかりがこんな目にばっかりあうんだ。面倒だがオレが無双してあっという間に片付けてしまうしかないか、とか言うんだろうか。バカなのかな?
こんな状況でどうしてイキっていられるんだ。ほぼ完全に丸腰のオレには何もできやしない。あっちは純粋な暴力だぞ。
「そうだ、君の名前は?」
「あ、えっと、ルジネ、です。最近【イマジンコード】で電磁パルス使いを倒した」
「おお! あの魔剣士か! それなら……」
こんなところでオレの対戦を見ていた人に会っても全くさっぱりこれっぽっちも嬉しくなかった。後ろ手に縛られちゃサインもできやしない。
「子どもの君にお願いするのは心苦しいが、ランカー15位である君を見込んで共闘をお願いしたい」
「きょ、共闘? え、何と戦うんですか?」
「もちろん、このテロの実行犯達だ」
この人、穏やかな表情して結構物騒なこと言うな。
「オレらだけでなんとかなりますかね」
「まあ、この場を切り抜けることくらいはできるんじゃないかな」
そして、楽観的でもある。なんだか緊張感がないなあ。いや、まあ、無理もないか。
競争なんて時代遅れで、争うことなんて普通はしない。それこそゲーム中の話だろう。
かくいうオレもテロに巻き込まれるなんてことはどことなく非現実的で、いや、実際あり得ないような展開なんだけど、だけど、それでも身の危険を感じられていない気もしている。
「ファンタズム・セットアップ、害なす枝、レーヴァテイン」
お兄さんの背後、縛られた右手の内で幻想具現化されるは。
(あはは! 害なす枝とな! おい、主、今すぐそやつを叩き折れ、不快じゃ、不快じゃ!)
その刃がぶちぶちと拘束を引き千切る。
あまりにも有名な伝説の宝具。
そう、その圧倒的な知名度と相反するこの詳細不明の武器は【イマジンコード】に必要な想像力とすこぶる相性がいい。
そして、彼が想像したレーヴァテインは無数の木の枝が絡み付いた両刃を持つ剣の形をしていた。アウラがここまで嫌悪するとは、もしかしていい線までいっているんじゃなかろうか。
だけど、その曲がりくねった木の枝は刃にも絡み付いている。これじゃあ剣としての役割は果たせそうにないけど。
「僕の名前は、ノルベルト、不正体のノルベルト。一応ランカーなんだけど、……その様子じゃ知らない、よね?」
「は、はあ、すいません」
ノルベルトと名乗った職員のお兄さんはオレの拘束を解くと、ゆっくりと立ち上がり手を貸してくれた。「あ、ど、どもっす」その手を取ろうとしたとき。
「おい、そこのお前ら何している!」
呑気な会話をしている場合じゃない。ここには
銃を構えていた毛むくじゃらで大柄な獣人がこっちに向かってくる。銃を携えてはいるがすぐにそれを使わないところをみると、どうやら無意識に茶色の長い毛に覆われた岩のような自身の拳の方を信頼しているように思える。
「いや、別に気にしないでくれ。もう人気はアーサーに全部持ってかれてるし」
自嘲気味にそう言うとノルベルトはレーヴァテインの切っ先を獣人に向ける。
その剣は鋭くも、しかし、枝が絡まっていて獣人のたくましい身体など到底貫けなさそうだった。
「外殻の機械頭は大人しくしていろ!」
意味不明な聖遺物を突き付けられてなお突進してくるこの獣人は、もしかしたら【イマジンコード】を知らないのだろうか。それとも、こんなふざけた形状の武器なんて飾りか何かだと思っているのだろうか。
レーヴァテインが徐々に光を帯び、それはすぐに目も眩むほどの莫大な輝きとなる。
「この聖遺物の特性は詳細不明だ。ある時は炎の剣となり、ある時は万物を貫く槍、またある時には魔法弾を発射する杖にもなるのさ」
その光はすぐ近くにいるはずのノルベルトすら見えなくなるほどで、強く閉じたはずの視界すら射抜かんとしている。
「クソッ、目くらましなんかしやがって!」
いよいよ獣人が間近に迫り、目が眩む視界不良のままその拳を至近距離で振り回さんとして。
放たれる光の奔流。それを咄嗟に魔剣を目に当ててガードする。
「けど、今回は……何だったんだろうな」
「そういう本人でも説明しづらい攻撃やめてもらってもいいですか」
オレの目がようやく視力を取り戻したとき、そこには謎の光を浴びてそのまま意識を失い獣人の崩れ落ちた巨体。だけど、地響きは起きなかった。
(ああ、なんて忌々しい木屑じゃ、あんな光は嫌いじゃ!)
「悔しかったら、お前もカッコよく光ってみろよ」
「ん? なんか言った?」
(主人公性難聴じゃ! こやつ主人公性難聴を発症しておるぞ! さっさと切り殺してしまうのじゃ!)
「あ、すいません、うちの魔剣がちょっと騒いでて。アウラ、そういうのはラブコメだけだ、オレらは違う、いいね、オレらはそんなんじゃない」
「は、はあ」
少し苛立ちを滲ませながらそう言って足早に去っていく管理局職員をさすがに引き留められるはずもなく、オレはポツンと立ち尽くす。
「緊急事態って……」
完全にほのかのことだよな。あいつ、何やってんだ、やらかしすぎだろ。つーか、さっきからタイミング悪すぎやしないか?
モノリスからのナノマシンエレベーターでエントランスまで案内されたはいいけど、もう、帰ってもいいかなあ。あ、でも、自分じゃ降りれないか。
「はあ……」切なく吐息。
このまま待ちぼうけもアホらしいし、要請通り来てはやったんだ、もういいだろ。
(わらわも同感じゃ。時間にルーズなのは嫌いじゃ)
魔剣であるアウラにこの真っ白なだけで殺風景なエントランスが見えているのかわからないけど、至極つまらなさそうな声も相まって、オレもそろそろうんざりしてきた。
何もない空間。
この世界でそれは異質だ。
何もない、なんてあまりにも非効率的な空間の使い方を許容しない。
限りある資源である空間においてはナノ単位、いや、ヨクト単位で何かしらの効果をもたせなければならない。
空気中にすら一切の無駄な隙間なく埋め尽くされる閉塞感。
ほとんど脅迫的なまでに優先される効率化の風潮。
それを無視するかのようなこの真っ白なエントランスにどことなく不安になってしまうのも、それはオレも少なからずこの風潮に乗ってしまっているからかもしれないな。
ま、心の余裕くらいはあってほしいけどね。
確かあの辺だったな、とナノマシンエレベーターの方に振り返ろうとしたその時。
「うおッ!?」
衝撃と振動。反射的に思わず屈む。
建物が激しく揺れる。立っていられず四つん這い。
な、なんだ、何が起きた!?
何もわからないままただその場にいることしかできない。
「だ、大丈夫か、君!」
すると、こんなところにいるのが完全に場違いな男子高校生に声を掛けてくれる優しい人がいた。もうすでにオレの中でこの声の主に対する好感度はMAXだ。完全に良い人だ。
「あ、す、すいません、当局に呼ばれて来たんですけど、……何があったんですか?」
「すまないが僕にも分からない。状況は混乱している。とにかく君は避難した方がいい」
いかにも公務員、といった風情の面白味もないグレーのスーツに銀色の坊主頭の若い職員は、オレに手を貸してくれてゆっくり立ち上がらせてくれた。
緊急事態。
さっき慌ただしく立ち去った職員が言っていたことと関係あるのだろうか。いや、これは完全にあるだろ。今はオレとこの職員しかいないけど少し前には他にも数人の職員が事態の収束のためかばたばたと駆け回っていた。
「出口のエレベーターはこっちだ」
影すらもないこんなにも真っ白な空間だと平衡感覚とか遠近感が狂ってしまうみたいで、意外にもこのエントランスは広くただ真っ白で何もないわけでもないらしかった。
その穏やかな雰囲気と細身のスーツ姿からは意外なほどがっしりとした手にキュンとしながらお兄さんに連れられてエレベーターがあるという場所に向かおうとすると。
「ここはエントランスか」
その不穏な声と共に。
どこからかぞろぞろと集まってきたのは、明らかにここの職員とは違う風情の、そう、テロリスト共だ。ぱっと見で5~6人くらいか。
彼らの服装はまちまちだった。
古い映像で見た軍隊風の服装の者。市民に紛れるためか外殻の衣服を着た者。ボロボロの外套を纏った者。ほとんど上半身裸の者。というよりも、彼らの身体の構造自体が一人一人違うせいで、服装は各々の身体構造に合わせていて彼らの持つ同一規格の物はその銃くらいだった。組織というよりは寄せ集めのチームみたいだ。
「おい、お前ら、両手を上げろ! 変な真似するんじゃないぞ!」
かちゃり、その顔面に緑色の鱗がびっしりと生えた男が携える銃の軽々しい金属音よりも。
その両手のナイフかと見間違えるほど鋭く尖った長い爪の方が銃よりも怖かった。そんなんで突き刺されたら顔なんて一発でぐちゃぐちゃのミンチになってしまうだろう。
幸い、無抵抗で拘束に応じたから殴られはしなかったけど、少しでも抵抗したら実力行使もやぶさかではないただならぬ雰囲気。
「クソッ、ここには扉も部屋もねえじゃねえか、人質なんてめんどくせえな」
今にも噛み殺されそうな剣幕で悪態とともにすぐ足元に唾を吐かれる。真っ白な床にへばりつくその汚れはとても奇異に見えた。
「今は何もしない方がいい、大人しく従おう」
「は、はい」
オレと職員のお兄さんは両手を後ろで縛られて、その辺の隅っこに座らされる。他にも数人の職員らしき人たちが向かいの壁際にいた。
オレだって余計なことして簡単に撃ち殺されるなんて嫌だ。ここは外殻治安維持の中枢ど真ん中だ、きっと必ず助けが来てくれる。
これが正真正銘のやれやれ系最強ハイスペック主人公なら。
やれやれ、どうしてオレばかりがこんな目にばっかりあうんだ。面倒だがオレが無双してあっという間に片付けてしまうしかないか、とか言うんだろうか。バカなのかな?
こんな状況でどうしてイキっていられるんだ。ほぼ完全に丸腰のオレには何もできやしない。あっちは純粋な暴力だぞ。
「そうだ、君の名前は?」
「あ、えっと、ルジネ、です。最近【イマジンコード】で電磁パルス使いを倒した」
「おお! あの魔剣士か! それなら……」
こんなところでオレの対戦を見ていた人に会っても全くさっぱりこれっぽっちも嬉しくなかった。後ろ手に縛られちゃサインもできやしない。
「子どもの君にお願いするのは心苦しいが、ランカー15位である君を見込んで共闘をお願いしたい」
「きょ、共闘? え、何と戦うんですか?」
「もちろん、このテロの実行犯達だ」
この人、穏やかな表情して結構物騒なこと言うな。
「オレらだけでなんとかなりますかね」
「まあ、この場を切り抜けることくらいはできるんじゃないかな」
そして、楽観的でもある。なんだか緊張感がないなあ。いや、まあ、無理もないか。
競争なんて時代遅れで、争うことなんて普通はしない。それこそゲーム中の話だろう。
かくいうオレもテロに巻き込まれるなんてことはどことなく非現実的で、いや、実際あり得ないような展開なんだけど、だけど、それでも身の危険を感じられていない気もしている。
「ファンタズム・セットアップ、害なす枝、レーヴァテイン」
お兄さんの背後、縛られた右手の内で幻想具現化されるは。
(あはは! 害なす枝とな! おい、主、今すぐそやつを叩き折れ、不快じゃ、不快じゃ!)
その刃がぶちぶちと拘束を引き千切る。
あまりにも有名な伝説の宝具。
そう、その圧倒的な知名度と相反するこの詳細不明の武器は【イマジンコード】に必要な想像力とすこぶる相性がいい。
そして、彼が想像したレーヴァテインは無数の木の枝が絡み付いた両刃を持つ剣の形をしていた。アウラがここまで嫌悪するとは、もしかしていい線までいっているんじゃなかろうか。
だけど、その曲がりくねった木の枝は刃にも絡み付いている。これじゃあ剣としての役割は果たせそうにないけど。
「僕の名前は、ノルベルト、不正体のノルベルト。一応ランカーなんだけど、……その様子じゃ知らない、よね?」
「は、はあ、すいません」
ノルベルトと名乗った職員のお兄さんはオレの拘束を解くと、ゆっくりと立ち上がり手を貸してくれた。「あ、ど、どもっす」その手を取ろうとしたとき。
「おい、そこのお前ら何している!」
呑気な会話をしている場合じゃない。ここには
銃を構えていた毛むくじゃらで大柄な獣人がこっちに向かってくる。銃を携えてはいるがすぐにそれを使わないところをみると、どうやら無意識に茶色の長い毛に覆われた岩のような自身の拳の方を信頼しているように思える。
「いや、別に気にしないでくれ。もう人気はアーサーに全部持ってかれてるし」
自嘲気味にそう言うとノルベルトはレーヴァテインの切っ先を獣人に向ける。
その剣は鋭くも、しかし、枝が絡まっていて獣人のたくましい身体など到底貫けなさそうだった。
「外殻の機械頭は大人しくしていろ!」
意味不明な聖遺物を突き付けられてなお突進してくるこの獣人は、もしかしたら【イマジンコード】を知らないのだろうか。それとも、こんなふざけた形状の武器なんて飾りか何かだと思っているのだろうか。
レーヴァテインが徐々に光を帯び、それはすぐに目も眩むほどの莫大な輝きとなる。
「この聖遺物の特性は詳細不明だ。ある時は炎の剣となり、ある時は万物を貫く槍、またある時には魔法弾を発射する杖にもなるのさ」
その光はすぐ近くにいるはずのノルベルトすら見えなくなるほどで、強く閉じたはずの視界すら射抜かんとしている。
「クソッ、目くらましなんかしやがって!」
いよいよ獣人が間近に迫り、目が眩む視界不良のままその拳を至近距離で振り回さんとして。
放たれる光の奔流。それを咄嗟に魔剣を目に当ててガードする。
「けど、今回は……何だったんだろうな」
「そういう本人でも説明しづらい攻撃やめてもらってもいいですか」
オレの目がようやく視力を取り戻したとき、そこには謎の光を浴びてそのまま意識を失い獣人の崩れ落ちた巨体。だけど、地響きは起きなかった。
(ああ、なんて忌々しい木屑じゃ、あんな光は嫌いじゃ!)
「悔しかったら、お前もカッコよく光ってみろよ」
「ん? なんか言った?」
(主人公性難聴じゃ! こやつ主人公性難聴を発症しておるぞ! さっさと切り殺してしまうのじゃ!)
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