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3.GAMESTART
4人目の仲間とはわかり合えるのか
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「で、あと一人はどうすんだよ、ルジネ」
「万策尽きた」
「何日待っても誰も誘えてねえじゃねぇか、帰るわ、俺」
「ちょ、ま、待ってくれ、アハルギ! オレ達、もう友達だろ!?」
「えッ!? う、うん!」
「だから、図書館ではお静かにして!」
なんか色々モヤモヤするけど、とにもかくにもアハルギのスカウトには成功した。いや、なんか、大丈夫か?
オレ達は拠点となった図書館で作戦会議をしようとしたけど。
そもそもだ。
完全に万策尽きた。オレには友達がいない。
すると。
「やはり【イマジンコード】か……いつ挑戦する? 我も参戦する」
「スパ……いや、急に誰だよ。え、ホントに誰ですか?」
ガラッと図書館のドアを盛大に開け放ち、いや、それ自動ドアなんだけど、ドバーンッとそこに堂々と仁王立つは。
「あ、お前、あの時のウサギ耳か?」
「あら、ルジネったらこんなかわいい子とお知り合いなの?」
「我が名は、ほのか……違った、コードネーム、アンガークロウラーと申す者」
「ほのかちゃんか、案外かわいらしい名前だな」
「あら、かわいいウサギさんのお耳ね、どうしたのそれ?」
「やい、我を子ども扱いするな、ちんちくりん」
「うわーん、ちょっとおっぱいが大きいからって! 背丈は大体一緒じゃーん!」
メグリを(精神的に)叩きのめし、ほのか、と、あ、いや、アンガークロウラーと名乗ったほのかちゃんは、きょとんとするオレ達の元にずいずいやって来る。
「いや、ちょ、マジでお前は何者だ、どうしてここに?」
「ちょっと道に迷っ……我は貴様の実力を見込んでいたのだ」
「道に迷ったのか」
「我は内殻より奪われた聖遺物を探している。それにはやはり【イマジンコード】をプレイするのが手っ取り早いのだ」
(獣人とは奇怪な。この世界はまことに不思議じゃの)
「オレ達にも何がなんだか理解できてないんだから、お前は黙ってて」
内殻から来たってことは、あのウサギ耳は本物か? でも、内殻にはそんな技術はないと思っていたけど。
「っていうか、内殻の友達なんていたんだね、ルジネ」
「なんだ、その眼差しは。やめろ、何もやましいことはないけどその魔眼をオレに向けるな」
「大丈夫よ、ワタシの魔眼に心を読む機能はないわ。“LOVE & JOY”ができるのは、ルジネの体温の変化と脳波と心拍数を計測することだけだから」
「いやいや、怖い怖い。余計怖い。……メ、メグリ、目怖っ!」
なんかもうすでにこの茶番劇に興味を失いかけて頬杖をついていたアハルギは、小さなため息を吐くと、
「ところで、ほのかちゃん、失礼を承知で聞くけど、内殻のキミがどうやってゲームに参加するんだい?」
アハルギはその(実は見せかけの)巨大な図体に似合わずどうやら生来のお坊っちゃんらしく。
初対面の人には好印象しか与えない。というか、もはやキャラが変わっている。周りにキラキラエフェクトすら舞ってそうなんだが?
そう、そんなのは小学生でも知っている。
内殻の自然主義者の原始人達は魔力を受け入れていない。
身体改造も外装起因機関も認めていない。
外殻という科学技術の庇護下にいながら、それら全てを否定している。
人類の進化にも技術的特異点にも、そして、宗教信仰の全面降伏にも乗り遅れた時代遅れの旧支配者だ。
つまり。
「つーか、お前じゃ【イマジンコード】なんてプレイできないだろ」
元魔力無しだからわかる。
【イマジンコード】は魔力があることが前提のゲームだ。今じゃ外殻にそんなやつはほとんどいない。
すると、ほのかは自信ありげに鼻を鳴らすと。
「ふふふん、我は刺客なり。もちろん改造手術は受けている」
そう言って両手を高々と掲げる。
「ファンタズム・セットアップ!」
「うお、危なッ!」
「図書館ではやめてぇぇぇーッ!!」
ウサギ耳からは信じられないほどの魔力が図書館に渦巻き、バサバサと机の上の本のページが乱暴にめくれ、棚はガタガタと揺れて、今にも失神してしまいそうなカグラ先生の悲鳴が響き渡る。
内殻の住人ではあり得ない。
ほのかが魔力を使って聖遺物を出力している。
そして、凪いだ魔力の中から姿を現したのはーー
「彼の銘はつらぬき丸、絶対に刃こぼれしない強い小刀だ」
それは見事な彫刻を施された木でできた柄を持つ小刀だった。
それは図書館に差し込む弱い陽光を浴びて、何か不思議な力が小さな刀身に宿っていると思わせるような鈍い光を放っていた。
だけど、さっきの大袈裟な魔力出力は何だったんだ。
「なんか頼りねえな、大丈夫か?」
「何を言うか、これほど我が手にしっくりくる聖遺物はない。ゴブリンの襲来も知らせてくれるぞ」
「ゴブリンなんていねえよ、ファンタジーじゃあるまいし」
こうして、愉快な仲間が揃ったわけだけど。
不安しかねぇ。
「つーか、いい加減教えてくれ。そのウサギ耳は何なんだ? 気になってもうきっと夜しか眠れねえよ」
「いや、この耳は我が身体の一部だ、内殻では遺伝子組み換えによる他生物との交配が行われているからな」
ほのかはさらりとそう言った。
そして、静まり返る図書館。
あんなに静寂を取り戻そうと騒ぎ散らかしていたカグラ先生でさえこの静寂が嘘であってくれと願うかのように大きく目を見開いている。
つまり、ほのかはヒトとウサギがセックスして生まれたってことか? いや、もしかしたら親同士もそうやって生まれていたのなら、もっと色々な動物が混じっているかもしれない。
それが内殻で崇拝されている自然主義の究極の形なのか?
オレ達の足元では一体何が行われているのか。
オレ達にはきっと永遠に理解できない。
恐ろしい何かが地面の下を這いずり回っていた、そんな気分だ。
イカれてやがる。だけど、そう思っているのは内殻のやつらもかもしれない。
もうすでに、外殻と内殻は違う世界になってしまったようだ。
「……マジかよ、エイリアンは地下から来るのか」
「バカ、ルジネ、それは差別だよ!」
「いやいや、気にするな、我も外殻に初めて来たときはお前達みたいな機械仕掛けが恐ろしくてたまらなかった。それと一緒だ」
ほのかの口調はさっきまでと変わらず飄々としていて、重苦しいはずのことがなんだか世間話みたいに思えてしまう。
だけど、そうだとしてもさ。
オレ達は何も言えない。
オレ達が教えられてきた常識が完膚なきまでに真っ向から否定されたんだ。
それに対して内殻の住人に反論なんて言えるだろうか。
「我らはきっとずっとずっと昔に相互理解なんてできる機会を逃してしまったのだ」
この世界に幾度となく訪れた技術的特異点は一体何を振り落としてしまったのか。
もうオレ達には、ほのかにさえもそれを知る術はない。完全に失われてしまった。
「だが、今回我々の目的は一致している。お前達も【イマジンコード】に出たいんだろ?」
そう言ったほのかはにっこりと不敵に笑った。
「万策尽きた」
「何日待っても誰も誘えてねえじゃねぇか、帰るわ、俺」
「ちょ、ま、待ってくれ、アハルギ! オレ達、もう友達だろ!?」
「えッ!? う、うん!」
「だから、図書館ではお静かにして!」
なんか色々モヤモヤするけど、とにもかくにもアハルギのスカウトには成功した。いや、なんか、大丈夫か?
オレ達は拠点となった図書館で作戦会議をしようとしたけど。
そもそもだ。
完全に万策尽きた。オレには友達がいない。
すると。
「やはり【イマジンコード】か……いつ挑戦する? 我も参戦する」
「スパ……いや、急に誰だよ。え、ホントに誰ですか?」
ガラッと図書館のドアを盛大に開け放ち、いや、それ自動ドアなんだけど、ドバーンッとそこに堂々と仁王立つは。
「あ、お前、あの時のウサギ耳か?」
「あら、ルジネったらこんなかわいい子とお知り合いなの?」
「我が名は、ほのか……違った、コードネーム、アンガークロウラーと申す者」
「ほのかちゃんか、案外かわいらしい名前だな」
「あら、かわいいウサギさんのお耳ね、どうしたのそれ?」
「やい、我を子ども扱いするな、ちんちくりん」
「うわーん、ちょっとおっぱいが大きいからって! 背丈は大体一緒じゃーん!」
メグリを(精神的に)叩きのめし、ほのか、と、あ、いや、アンガークロウラーと名乗ったほのかちゃんは、きょとんとするオレ達の元にずいずいやって来る。
「いや、ちょ、マジでお前は何者だ、どうしてここに?」
「ちょっと道に迷っ……我は貴様の実力を見込んでいたのだ」
「道に迷ったのか」
「我は内殻より奪われた聖遺物を探している。それにはやはり【イマジンコード】をプレイするのが手っ取り早いのだ」
(獣人とは奇怪な。この世界はまことに不思議じゃの)
「オレ達にも何がなんだか理解できてないんだから、お前は黙ってて」
内殻から来たってことは、あのウサギ耳は本物か? でも、内殻にはそんな技術はないと思っていたけど。
「っていうか、内殻の友達なんていたんだね、ルジネ」
「なんだ、その眼差しは。やめろ、何もやましいことはないけどその魔眼をオレに向けるな」
「大丈夫よ、ワタシの魔眼に心を読む機能はないわ。“LOVE & JOY”ができるのは、ルジネの体温の変化と脳波と心拍数を計測することだけだから」
「いやいや、怖い怖い。余計怖い。……メ、メグリ、目怖っ!」
なんかもうすでにこの茶番劇に興味を失いかけて頬杖をついていたアハルギは、小さなため息を吐くと、
「ところで、ほのかちゃん、失礼を承知で聞くけど、内殻のキミがどうやってゲームに参加するんだい?」
アハルギはその(実は見せかけの)巨大な図体に似合わずどうやら生来のお坊っちゃんらしく。
初対面の人には好印象しか与えない。というか、もはやキャラが変わっている。周りにキラキラエフェクトすら舞ってそうなんだが?
そう、そんなのは小学生でも知っている。
内殻の自然主義者の原始人達は魔力を受け入れていない。
身体改造も外装起因機関も認めていない。
外殻という科学技術の庇護下にいながら、それら全てを否定している。
人類の進化にも技術的特異点にも、そして、宗教信仰の全面降伏にも乗り遅れた時代遅れの旧支配者だ。
つまり。
「つーか、お前じゃ【イマジンコード】なんてプレイできないだろ」
元魔力無しだからわかる。
【イマジンコード】は魔力があることが前提のゲームだ。今じゃ外殻にそんなやつはほとんどいない。
すると、ほのかは自信ありげに鼻を鳴らすと。
「ふふふん、我は刺客なり。もちろん改造手術は受けている」
そう言って両手を高々と掲げる。
「ファンタズム・セットアップ!」
「うお、危なッ!」
「図書館ではやめてぇぇぇーッ!!」
ウサギ耳からは信じられないほどの魔力が図書館に渦巻き、バサバサと机の上の本のページが乱暴にめくれ、棚はガタガタと揺れて、今にも失神してしまいそうなカグラ先生の悲鳴が響き渡る。
内殻の住人ではあり得ない。
ほのかが魔力を使って聖遺物を出力している。
そして、凪いだ魔力の中から姿を現したのはーー
「彼の銘はつらぬき丸、絶対に刃こぼれしない強い小刀だ」
それは見事な彫刻を施された木でできた柄を持つ小刀だった。
それは図書館に差し込む弱い陽光を浴びて、何か不思議な力が小さな刀身に宿っていると思わせるような鈍い光を放っていた。
だけど、さっきの大袈裟な魔力出力は何だったんだ。
「なんか頼りねえな、大丈夫か?」
「何を言うか、これほど我が手にしっくりくる聖遺物はない。ゴブリンの襲来も知らせてくれるぞ」
「ゴブリンなんていねえよ、ファンタジーじゃあるまいし」
こうして、愉快な仲間が揃ったわけだけど。
不安しかねぇ。
「つーか、いい加減教えてくれ。そのウサギ耳は何なんだ? 気になってもうきっと夜しか眠れねえよ」
「いや、この耳は我が身体の一部だ、内殻では遺伝子組み換えによる他生物との交配が行われているからな」
ほのかはさらりとそう言った。
そして、静まり返る図書館。
あんなに静寂を取り戻そうと騒ぎ散らかしていたカグラ先生でさえこの静寂が嘘であってくれと願うかのように大きく目を見開いている。
つまり、ほのかはヒトとウサギがセックスして生まれたってことか? いや、もしかしたら親同士もそうやって生まれていたのなら、もっと色々な動物が混じっているかもしれない。
それが内殻で崇拝されている自然主義の究極の形なのか?
オレ達の足元では一体何が行われているのか。
オレ達にはきっと永遠に理解できない。
恐ろしい何かが地面の下を這いずり回っていた、そんな気分だ。
イカれてやがる。だけど、そう思っているのは内殻のやつらもかもしれない。
もうすでに、外殻と内殻は違う世界になってしまったようだ。
「……マジかよ、エイリアンは地下から来るのか」
「バカ、ルジネ、それは差別だよ!」
「いやいや、気にするな、我も外殻に初めて来たときはお前達みたいな機械仕掛けが恐ろしくてたまらなかった。それと一緒だ」
ほのかの口調はさっきまでと変わらず飄々としていて、重苦しいはずのことがなんだか世間話みたいに思えてしまう。
だけど、そうだとしてもさ。
オレ達は何も言えない。
オレ達が教えられてきた常識が完膚なきまでに真っ向から否定されたんだ。
それに対して内殻の住人に反論なんて言えるだろうか。
「我らはきっとずっとずっと昔に相互理解なんてできる機会を逃してしまったのだ」
この世界に幾度となく訪れた技術的特異点は一体何を振り落としてしまったのか。
もうオレ達には、ほのかにさえもそれを知る術はない。完全に失われてしまった。
「だが、今回我々の目的は一致している。お前達も【イマジンコード】に出たいんだろ?」
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