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5章:完璧で究極の査察

無敵のフォカヌポゥで荒らすメディア

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『さあ、いよいよ決勝戦、世界最強の称号を得るのははたしてどちらなのか!』

 アナウンスがド派手に響き渡る。大歓声と熱狂がスタジアムはおろか、この領地全体を包み込んでいくようだ。

 ようやくこの茶番も終わる。

 さっさとファジムを見つけ出して、この現状について問い詰めなくてはならぬのだ。

 こんなところでサクリエルが苦戦するはずもないが、とりあえず最速RTA目指してさくっと終わらせてほしいところだ。

『魔界の果てより顕現せし大悪魔! どうしてそんなヤツがこんなところにいるのか! それは自身こそが世界が忘れてしまった真の恐怖なのだと知らしめるためだ! 今夜、世界は彼女の前にひれ伏すのだ! 彼女こそが最強! 彼女こそが至高! エンシェントデーモン、神の贄たるもの、サクリエルの登場だ!』

「あべし! そんなこと言ってないでござる! 早く死にたいでござる!」

 マイクパフォーマンス的な煽りに対し、逆に大ダメージを受けるサクリエル。おろおろと周囲を不安そうに見渡し、観客のブーイングに「ひぃッ!」と頭を抱えて怯えるその姿は、ここまで難なく勝ち上がってきた強者の様相とはとても思えない。これもギャップの一種ということでいいのかなあ。ネガティブ方向のギャップはむしろマイナスなのでは?

 たった一人で大きなステージに立つ、猫背気味の弱々しげなその姿にはエンシェントデーモンとしての威厳なんてさっぱりないが。

『一番つえーヤツと戦いに異世界から来てやったぞ! この戦いは全部異世界で配信されています! 配信映えしねえ無様な戦いはこのオレが許さねーぞ! 自称迷惑系のただの害悪配信者がヤクザの事務所に凸したら配信中に殺されたと思いきや神様に転生して改心しろと言われて異世界転生したはいいけどオレは別に反省するつもりはないし視聴者が面白がってくれればそれでいいだろうが! 有名になりたいなら何してもいいのか! 自称異世界配信者、RYUSHOW(リューショー)!』

「イエエーイ、オレの配信なんか観てるクソどもいるー? 今日もBANレベルのやべえ配信すっからよろしくなー」

 のそりとそのぶくぶくと肥えた身体を揺らしながら現れたその巨漢は、よくもそんな醜い姿を全世界中に公開できるな、というほどに、見るに堪えないような酷く醜悪な男だった。

 教養もなく他人から何を言われても何も理解できず、全く反省なんてしないのだろう、というのをビシビシ感じるだらけきって弛緩した口元。自身の風貌にすら無関心なガサガサの肌。他人を舐めきっているとしか思えないような、にやつく眼差しには嫌悪すら覚える。

 何の反省もしない系の、クソウザい生命力と繁殖力だけがやたら高い虫けらのようなやつか。迷惑系というよりほぼ犯罪のやつな。

 女神もなんであんなこの世界にも害になりそうなゴミを生き返らせたのだろうか。あんなん死んでた方がどちらの世界でも有益だろ。ま、畑の肥料くらいにはなるかな。

 しかし、あんなオークの出来損ないみたいな醜悪な体型で決勝まで勝ち上がってきたのだ。あやつの実力は見た目からは想像できないが、実は中々のものなのであろう。腐っても転生者だし。女神から一体どういうスキルやステータスを与えられたのかは気になるところだ。

「やべえエロい女はたとえ魔物であってもブラのカップ数聞いて、ひん剥いてエロ同人AVしつつ視聴者の弱男どものオカズにしまーす!」

 クソ最悪だった。こやつ、これまでもそんなことをしてやがったな。マジで転生者っていい歳こいてモラルの欠片もねえ、無教養の猿ばっかりなの? 承認欲求って他人を傷付けてまで得たいようなものなの? 転生者の印象悪すぎんだろ。我、完全にアンチ転生者である。

「ひ、ひいッ、小生、公衆の面前でめちゃくちゃにされて異世界に恥ずかしい姿を発信されちゃうでござる~」

 案外ノリノリで身体をくねらすサクリエル。そういう妄想は部屋の隅で埃でも食いながらひっそりとやってくれないかなあ。あやつはあやつで変態だったか。

 実際には決してそんなことにはならないのだということで、こんな恥ずかしい妄想を余裕ぶっこいて垂れ流している辺りはサクリエルの実力の高さを感じるわけだが。

 これで害悪系配信者の変なスキルやらで薄い本されなければいいのだが。

『試合開始!』

 盛大に決勝戦のゴングが鳴り響く。

「極大光魔法、弔鐘は誰がために鳴る(ヴィクティム・オール)」

 厳かで、絶対的であり、神々しくすらあるその声で宣うは。

 ――全てを光へと消し去る無慈悲な魔法。

 あまりにも他人と関わらなさすぎて、発声し慣れていないくぐもったようないつものサクリエルのキモくて低い声とは違う。そこにはエンシェントデーモンとして、そして、最古の堕天使としての強大な力の片鱗が感じられた。

 全ての観客が痛みすら感じるほどの莫大な光によって目が眩み、何が起きたのかすら全くわからなくなる。

 そしてーー

 全ての光が凪いだ時。

 そこに残されていたのは、サクリエルの姿だけだった。

 深く抉れたスタジアムの地面は、まるで初めからそこには何もなかったかのような空洞となっていた。

 もちろん、あの害悪系配信者の姿形もない。なんだ、これじゃあ、肥しにもならぬではないか。

「決勝まで勝ち上がった転生者だからついつい良さげな魔法使ってみたでござるが。もうちょっと楽しても良かったでござるな」

 やるときゃやるじゃん、サクリエル。さすがエンシェントデーモンだ。

 ま、こういう輩は変に同情とか批評とかを与えると謎につけ上がって調子に乗り出すしな、こうして跡形もなく消し炭にして、誰の記憶からも忘れ去られてしまうのが一番いいのかもしれない。

 サクリエルもたまにはいいことするじゃないか。評価をちょっとだけ上げておくか。
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