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番外編:聖都壊滅大作戦
ゴツい武器はロマン!
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「さて、せっかくのバトル編だ、なんかカッコいい感じでいきたい」
やはりバトル物において、武器、というのはとても大事だ。
剣ならば近接での緊迫した戦闘描写、銃なんかの射撃武器ならば多人数戦や間合いの駆け引き、魔法系ならカッコいい呪文詠唱、といったふうに、何かしらの持ち味を文章表現として描写しやすいのだ。これが徒手空拳では迫力と描写難易度が格段に上がる。
「そういうもんなんすかね」
「上手な人は何しても上手だが、我らは達人ではないのでな」
そう、我のような華奢な美少女にごつい大剣はド正義すぎる。我、そういうの大好き。
だが、今回はいささか趣向を変えてみようと思う。
我は虚空に手を伸ばし、一切の光を拒絶するかのような漆黒の刃を持つ小刀を取り出す。今回はこれにしようかな。ふふん、今の我はスパイだしな。
「ヘラ様、そんな装備で大丈夫なんすか?」
「大丈夫だ、問題ない」
「アタシはでかくてゴツい武器をヘラ様みたいなちっちゃいのじゃロリ美少女が振り回すのって良いと思いますけどねー」
「キミは我と気が合うな! これは今度居酒屋でとくと語り合うしかないではないか!」
「私はゴテゴテの機能性皆無な鈍器のような杖も可愛いと思います」
「キミもいい趣味してんね!」
すごい気が合うじゃん。黒ギャルと真面目メガネなんて絶対にそういうのじゃないと思ってたけど。そうか、これがギャップというやつか。確かにDTでウブなオタク君じゃあ簡単に惚れちゃうのも無理はない。おい、そこのキモオタ、今すぐ身だしなみを整えろ!
「ちなみにキミ達は何か欲しい武器とかある? 我、いっぱい持ってるよ!」
「そんな、おしゃれな魔女のコーディネートカードみたいに」
オフィーリアとグロリアは普段から格式高き我にふさわしい護衛らしく、ぴっちりとした黒いスーツを着ている。そういう戦闘向きじゃないフォーマルな服装でごりごりの厳つい武器持ってるのもいいよね。
それに、こやつらにも戦力になってもらわねばならぬ。この大群の中を切り抜けつつ女神を見つけねばならぬからな。
すると、すらりとした人差し指を顎に添えて考えていたオフィーリアが、ハッと何かを想い付いたらしく。
「あ、それじゃあ、アタシはなんか可愛いネイルとかいいっすか?」
「ここをどこだと思ってんの? れっきとした戦場の最前線だよ? 目の前の真実から目を逸らすな!」
「熱いっすねー」
「キミはもっと熱くなれよ!」
そして、キュピーンッとメガネを意味深に光らせたグロリアも。
「私はもっと理知的に見えるように周囲にホログラムエフェクトが欲しいです」
「おバカ! それはただの飾りだ。というか、マジで頭いいやつはそんなこと気にしないわ!」
「ッ……!!」
「なんで、そんなにショック受けた表情してるの? まさかのマジのリクエストだったの?」
グロリア、あなたってホントバカ。いや、ホントにバカ。もはやグロリアが何故メガネのインテリキャラでいけると思ったのかマジで問いたい、小一時間問い詰めたい。
ダメだ、こいつら早く何とかしないと。せっかくの戦闘描写目前なのに緊張感がみるみるうちになくなっていく。
「ま、アタシ達は戦闘向きじゃないんで、」
「ん? あ、そう? ……え?」
「私達は野営地でまったりしてます」
「なんでそういうこと言うの!?」
もうそれ、ソロプレイなんよ! こちらとしては単独行動ができるのは都合がいいんだけど、それはそれとして、はいそうですか、と引き下がってしまうのは我が威信に関わるのよ! ビシッと言うときは言わないとね!
「大丈夫、キミ達にもやれることは必ずある! 我が責任を持つからその能力を活かそう! 街路樹だけは絶対に枯らすなよ!」
「すごい良い上司気取るじゃないですか」
「上司なんだよ! かつて魔界全土を治めていた誰よりもトップの良い上司なんだよ!」
引退したとはいえ、我、まだ結構偉いんだけどな。そんなに威張るつもりはないけどさー。
「冗談です、そんなあからさまにしゅんとしないでください、可哀想すぎて襲っちゃいたくなります」
「やめてよ!」
「しゃーないっす、かわいそうはかわいいんで」
不穏でくだらない会話のおかげかふたりの緊張も少しはほぐれたように見える。スライムがガチガチになってたら良さは半減だし、余裕のないサキュバスなんて全く魅力的じゃない。うむうむ、いいじゃないか、こういうのでいいんだよ、こういうので。
「いいか、絶対死ぬなよ。生きて帰ったらきっと褒美をやる。だから、キミ達に下す我が命令はたたひとつ、生き残れ」
「一言一句全部死亡フラグとかマジ笑えないんすけど、ヘラ様」
「あ、あれ~?」
「私達はきっと生きて帰ります、だから、ヘラ様も死なないでください」
「なんか全ての会話が不穏なんだが」
いや、こういうのは逆に乱立させると回避できるのではないか、という説もある。ま、気にせずに行こうじゃないか、我々には帰る場所があるのだからな。
「そんじゃ、各個散開!」
「「あいあいさー!!」」
……あ、結局武器渡してなかったけど、ま、大丈夫か。
やはりバトル物において、武器、というのはとても大事だ。
剣ならば近接での緊迫した戦闘描写、銃なんかの射撃武器ならば多人数戦や間合いの駆け引き、魔法系ならカッコいい呪文詠唱、といったふうに、何かしらの持ち味を文章表現として描写しやすいのだ。これが徒手空拳では迫力と描写難易度が格段に上がる。
「そういうもんなんすかね」
「上手な人は何しても上手だが、我らは達人ではないのでな」
そう、我のような華奢な美少女にごつい大剣はド正義すぎる。我、そういうの大好き。
だが、今回はいささか趣向を変えてみようと思う。
我は虚空に手を伸ばし、一切の光を拒絶するかのような漆黒の刃を持つ小刀を取り出す。今回はこれにしようかな。ふふん、今の我はスパイだしな。
「ヘラ様、そんな装備で大丈夫なんすか?」
「大丈夫だ、問題ない」
「アタシはでかくてゴツい武器をヘラ様みたいなちっちゃいのじゃロリ美少女が振り回すのって良いと思いますけどねー」
「キミは我と気が合うな! これは今度居酒屋でとくと語り合うしかないではないか!」
「私はゴテゴテの機能性皆無な鈍器のような杖も可愛いと思います」
「キミもいい趣味してんね!」
すごい気が合うじゃん。黒ギャルと真面目メガネなんて絶対にそういうのじゃないと思ってたけど。そうか、これがギャップというやつか。確かにDTでウブなオタク君じゃあ簡単に惚れちゃうのも無理はない。おい、そこのキモオタ、今すぐ身だしなみを整えろ!
「ちなみにキミ達は何か欲しい武器とかある? 我、いっぱい持ってるよ!」
「そんな、おしゃれな魔女のコーディネートカードみたいに」
オフィーリアとグロリアは普段から格式高き我にふさわしい護衛らしく、ぴっちりとした黒いスーツを着ている。そういう戦闘向きじゃないフォーマルな服装でごりごりの厳つい武器持ってるのもいいよね。
それに、こやつらにも戦力になってもらわねばならぬ。この大群の中を切り抜けつつ女神を見つけねばならぬからな。
すると、すらりとした人差し指を顎に添えて考えていたオフィーリアが、ハッと何かを想い付いたらしく。
「あ、それじゃあ、アタシはなんか可愛いネイルとかいいっすか?」
「ここをどこだと思ってんの? れっきとした戦場の最前線だよ? 目の前の真実から目を逸らすな!」
「熱いっすねー」
「キミはもっと熱くなれよ!」
そして、キュピーンッとメガネを意味深に光らせたグロリアも。
「私はもっと理知的に見えるように周囲にホログラムエフェクトが欲しいです」
「おバカ! それはただの飾りだ。というか、マジで頭いいやつはそんなこと気にしないわ!」
「ッ……!!」
「なんで、そんなにショック受けた表情してるの? まさかのマジのリクエストだったの?」
グロリア、あなたってホントバカ。いや、ホントにバカ。もはやグロリアが何故メガネのインテリキャラでいけると思ったのかマジで問いたい、小一時間問い詰めたい。
ダメだ、こいつら早く何とかしないと。せっかくの戦闘描写目前なのに緊張感がみるみるうちになくなっていく。
「ま、アタシ達は戦闘向きじゃないんで、」
「ん? あ、そう? ……え?」
「私達は野営地でまったりしてます」
「なんでそういうこと言うの!?」
もうそれ、ソロプレイなんよ! こちらとしては単独行動ができるのは都合がいいんだけど、それはそれとして、はいそうですか、と引き下がってしまうのは我が威信に関わるのよ! ビシッと言うときは言わないとね!
「大丈夫、キミ達にもやれることは必ずある! 我が責任を持つからその能力を活かそう! 街路樹だけは絶対に枯らすなよ!」
「すごい良い上司気取るじゃないですか」
「上司なんだよ! かつて魔界全土を治めていた誰よりもトップの良い上司なんだよ!」
引退したとはいえ、我、まだ結構偉いんだけどな。そんなに威張るつもりはないけどさー。
「冗談です、そんなあからさまにしゅんとしないでください、可哀想すぎて襲っちゃいたくなります」
「やめてよ!」
「しゃーないっす、かわいそうはかわいいんで」
不穏でくだらない会話のおかげかふたりの緊張も少しはほぐれたように見える。スライムがガチガチになってたら良さは半減だし、余裕のないサキュバスなんて全く魅力的じゃない。うむうむ、いいじゃないか、こういうのでいいんだよ、こういうので。
「いいか、絶対死ぬなよ。生きて帰ったらきっと褒美をやる。だから、キミ達に下す我が命令はたたひとつ、生き残れ」
「一言一句全部死亡フラグとかマジ笑えないんすけど、ヘラ様」
「あ、あれ~?」
「私達はきっと生きて帰ります、だから、ヘラ様も死なないでください」
「なんか全ての会話が不穏なんだが」
いや、こういうのは逆に乱立させると回避できるのではないか、という説もある。ま、気にせずに行こうじゃないか、我々には帰る場所があるのだからな。
「そんじゃ、各個散開!」
「「あいあいさー!!」」
……あ、結局武器渡してなかったけど、ま、大丈夫か。
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