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目的、この物語のテーマ

―― Re:【倫理狂い    】   ――⑦

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 けれども、わたしには綴るべき物語と壊さなきゃいけない世界がある。それをこんな陰鬱な街で終わってしまってたまるか。明らかにバッドエンドだ、それも最上級の。

「いいよ、このままで。わたしは元々何も持っていなかったんだもん。せっかくもらったものを好きか嫌いかで捨てたりはしないわ」

 彼らはこの世界に必要だ。いつか必ず、必要となるときがやってくる。それが想像もつかないほど遠い未来だとしても。そして、それを彼らが望まなくとも。

 だから、そんな大いなる時の輪廻の果ての未来がやってくるその日まで、わたしは彼らがこの世界の片隅に“始源拾弐機関”の【倫理狂い・制度霊】、【倫理狂い・副上肢】という存在が確かにいる、という証明をし続ける、そう、この悪辣な髪の色と共に。

 それが、彼らに対するささやかで、きっととても有効な対抗手段だから。破滅的で自壊的な彼らが嫌がることをしてやるんだ。

「だけど、その代わり、いつか教えて、アナタの物語を。今じゃない、今はそんな気分にはなれないから」

「ははは、もちろんだとも」

 条件付きで、とでも言うかと思ったけど、彼はそうしなかった。真意はわからない、彼がただの打算で動いていないことだけはわかってる。

 だって、彼は、彼がいくら否定しようとも、正真正銘の“始源拾弐機関”の一つ、善悪を司る機能、【倫理狂い】に他ならないのだから。

 はたして、わたしとは違って無色透明であり続けることに固執しているようにも見える彼にも語るべき物語はあるのだろうか。

 ちょっとだけだけど、それを知りたいと思った。ほんの少しの好奇心のそれ以外のほとんどは嫌がらせに近かったけど。それでも、この世界の物語を聞く、という本来のこの物語のテーマは忘れそうになかったのかもしれない。

 彼はわたし達には到底理解できない善悪の倫理観でしか動かない。善か悪か、その疑念の中で揺れ動け、そう言われているのかもしれない。そう勘ぐってしまうことすらも、彼の思惑なのかもしれない。

 自身へと自問自答するしかない疑心暗鬼なんて鬱陶しいことこの上ない。それはどうやっても解決しないのだから。どこかで自分の倫理観と照らし合わせて善悪の折り合いをつけなくちゃいけないのだから。

 諦念と踊る踊る。

 黎明と踊る踊る。

 きっとそのどちらも大した違いはない。善悪に狂っているのは何処の誰なのかなんて誰にもわかりはしないのだ。

 【倫理狂い・副上肢】の表情は変わらない。その諦観じみた微笑が歪むことはこれから先もきっとないのだろう。この錯誤世界が先へ進むその時までは。

 そして、わたしはとある嫌がらせを思い付いてにやりと悪辣に笑う。

「……そうだ、わたしの名前を教えてあげる」



ーーWie Kinder Schlachtens miteinander gespielt habenーー
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