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4章:荳也阜縺ッ繝ッ繧ソ繧ッ繧キ縺ァ蜃コ譚・縺ヲ縺?k?

ーー残響、【超弦骨格暫定式・波動帝國】      ーー⑧

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「なあ、キティ、音が、なんだか綺麗な音が聞こえたんだ」

 そっと、おそるおそる。玉座の間の門みたいに大きな扉がゆっくりと開いて。それで、その音で、もう演奏は終わってしまったんだ、って改めて思い知る。

 振り返ると、なぜか、あのいつもお気楽な笑顔でおなじみのジーナが泣いていた。泣き顔があまりにも似合わない。涙はジーナを飾らない。

「そっからさ、なんかわかんないけど、涙が止まらないんだ」

 ジーナがその涙を拭うことはなく。

 ああ、きっとあの演奏がわたしだけじゃなく誰の胸にも響いたんだ。

 ねえ、【超弦骨格暫定式・波動帝國】。世界は、この感動を忘れないよ。

 アナタが繋ぎ止めた世界はこれからも、アナタの演奏と共にあるんだ。

 アナタならきっと、ま、それも演奏の醍醐味なのよ、とか言って満足するのかな。

「ふふ、うん、わたしも、泣いてる。悲しくて、演奏が素晴らしくて、なんだかよくわからないけど、泣いてる」

 ただ涙が出ているだけで、ピアスでジャラジャラ鳴る表情もいつもと変わらない。だから、その不可解な涙に不思議そうな様子がなんだかおかしくって、こちらも思わず微笑。ますますキョトンとするジーナ。わたしもジーナも泣きながら笑ってる、変なの。

「……なんかさ、アンタ、何か変わった?」

「そう見える? だとしたら、あの子のおかげでちょっとは自分のこと好きになれたからかな」

「わうん?」

 もう、何がなんだかわかっていないジーナに合わせてメルトも首を傾げている。

 何もかも嫌いだった、わたし、という存在の中で、たったひとつでも好きになれたところがある。それは【超弦骨格暫定式・波動帝國】のおかげ。わたしの声はさっきまでと何も変わらないはずだけど、それでも、自分でも驚くほど良く響く。

「それ、楽器だったんだ」

「そう、この子は【超弦骨格暫定式・波動帝國】――世界を震わせるもの。この世界における音と振動を司る“始源拾弐機関”……だったもの」

 【超弦骨格暫定式・波動帝國】から垂れ下がる細い白髪を見つけて、ジーナは自身の心を震わせた音の正体に気づいたみたい。

 神と転生者によって壊された世界しか知らないジーナにとってこれは、忌まわしき国王が持つ圧政の象徴たる武器。けれども、それを愛おしそうに撫でる。

「綺麗な音だった。もっと聞きたかったな」

「わう」

 まるでジーナに共感するように一声小さく吠えたメルトだって“始源拾弐機関”の機能のひとつだ。メルトは賢い。いくらもふもふの獣だったって、同胞の喪失は理解しているのだろう。悲しそうに唸り、そっと【超弦骨格暫定式・波動帝國】の亡骸に頬を摺り寄せる。

「わたし達、もう少し早く出会えていれば友達になれたかもしれない」

「キティ……」

「くうぅ」

 わたし達の革命は成し遂げられたかもしれない。

 この世界は救われたかもしれない。

 でも、【超弦骨格暫定式・波動帝國】はもういない。【深層義肢】が彼女の死を暗示していて、それは初めからわかってはいたことだけど、でも、でも。

 わたしはまた、何も掬えず、何も得ることはできなかった。

 あんまりな予定調和に、神を呪いたくなる。
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