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起承転結《 》

――   新異世界より    ―ー③

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「それで、女の子がこんなところに何のご用事? クエストの依頼かい?」

「んーん、わたし達、このギルドで一番ランクの高いクエストを受けたいんだけど」

 受付の少女はまたうんざりと、今度は少し嘲笑混じりの吐息を漏らすと、

「……ランクは?」

「ない、何それ?」

「はい、クエストはライセンスを持った公認の冒険者しか受注できないの、さ、お帰り、お嬢さん」

 そして、少女はわたしにそっぽを向けると、右手をぶらぶらさせて追い払う仕草。

「それじゃあ、クエストだけ見せてくれる? 報酬は要らないわ」

「無理。さっき教えてあげたでしょ、まずはライセンスを」

「そんなの必要ない、わたしは」

「おいおい、お嬢ちゃん。ここは子どもの来るところじゃねえぞ」

「は? じゃあ、だれが来るの? え、ギルドって転生者にこき使われる負け犬の溜まり場なんだっけ?」

「……ねえ、やめてよね、ここで面倒事は」

 わたしと受付嬢との不毛な押し問答にさらに割って入る酒臭いおじさん。まあ、確かに気分よく飲んでるところで、空気をピリピリさせちゃったのは悪いけどさ。今は一刻も早くこんな陰気臭いところから立ち去りたいのよ、わたしは。

 ……ん? あれ、なんか好戦的になってない、わたし? お酒の匂いに酔っちゃってる? いかんいかん、そうだとしても一人前のレディとしてお淑やかにしなきゃ、【心励起/仇多羅急行】にまた会えたときにぷりぷり怒られちゃう。……と、思ってももう遅いか。

「ああ? なんだと、世間知らずのガキが」

「お前みてえな娼婦がこんなところまで冷やかしに来てんじゃねえぞ」

「オレだって好きで使い走りになったんじゃねえ!」

 男たちはお酒に酔ってふらつく足取りで危なっかしくわたしに掴みかかろうと突撃してくる。おいおい、やっぱり娼婦だと思われてたじゃんか。別に職業に貴賤はないんだけど、少なくとも酒臭いアンタらの相手なんてしてあげられない。指一本だけでいいなら逝かせてあげてもいいけどね。

「チケット・ゥ・ライド」

 小さく呟いてほんの少しだけの加速。依存性が高いので、過度の使用は控えて。

 怒り狂った間抜けな表情、汚らしく唾を吐き散らかしながらわたしに罵声を浴びせているのだろう光景。緩慢になった時間の流れの中でそれらをちらっとだけ一瞥、男たちの額にトンッと人差し指を当てていく。はあ、最近の若いもんは他愛もないのう。

 加速解除。

 その瞬間、次々と昏倒する男たち。速度のある衝撃は強い、それを加速した身体でやっただけ。しばらく床にのびてるだろうけど、そのうち起きるでしょ。さっきまで危害を加えるつもりはなかったんだけどさ、やられたらやり返します、倍返しです。
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