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起《承》転結
ーー 【不浄遺棄地域】 ーー①
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真紅の竜の背に乗って、あまりにも快適すぎるラスボスまでのスーパーショートカット。バグじゃん。
まあ、それでも途中の街に立ち寄りながら数日はかかったし、アズが街の近くに降り立とうものならいちいち大事件になってたけど。
ま、そのたびに人畜無害の権化、おっとり巨乳メガネお姉さんのエルルカが説明してくれたおかげでなんとか村に入ることはできたし、ついでにナイスバディのアズ亜人態も加われば全ての厄介事は万事解決だった。おっぱいすげー。
でも、マジにレベル上げもしてないし、最強装備も手に入れてないし、神の加護すらもないけど大丈夫?
そんな不安をよそに、わたし達最弱パーティは、だんだんと暗く、月も星も光が届かない夜に沈んでいくような不安な景色が続く、人間界とは明らかに異なる暗黒の領域へと飛び込んでいく。
「さ、着いたぜ。ここが魔界、魔王さまがかつて支配していた魔物どもの領域だ」
わたし達はアズの大きな背中からそっと降りる。何度も上り下りしたけど全然慣れやしない。分厚い鱗が足場になってはいるけど、落ちたら大けがになるくらいの高さはある。それに、地面は鋭い岩が転がっていて少しでも触れたら簡単に突き刺さってしまいそう。
うわー、ここが、魔界、か。とうとうこんなところまで来ちゃったよ。
ここは、きっと何千年もそうだったのだろう、黒く濃い霧(エルルカが、瘴気、魔物の力の源だって言ってたっけ)が立ち込めていて、アズが竜髑髏砕き山の山頂と同じように浄化しているはずなのに少し息苦しくて。
そう、わたし達は今、深淵と暗黒の混沌たる中心地、その支配者が統べる領域に降り立ったのだ。
「で、これが魔王城、ここに魔王様がいるぜ」
ラストダンジョンの場所、ずいぶんわかりやすいな。
あの切り立った崖の上にそびえ立つのが、魔王の住まう城なんだって。王都の綺麗で真っ白なお城とは違って、まるで光を全て呑み込んでしまったかのように真っ黒で、この暗黒ばっかりの魔界じゃ影にしか見えない。
いびつで禍々しいその姿があまりにも怖すぎて乗り込む気さえなくしちゃいそう。
「そんじゃ、行くか」
なんとなく躊躇しているわたし達とは対称的に、気楽な調子のアズはあの時のように盛大に歪み、軋みながら亜人態へと変身する。「テメエらを踏んずけちまわないようにするのはメンドーだからな」あら、アズ、意外と優しいのね。
そして、しばらく、誰もいない魔王城の静かで蝋燭すら灯っていない真っ暗な回廊をアズが作ってくれた松明を頼りに進んでいけば……
「…………え、アナタが、あ、そ、その……」
なんだか思ってたのと違くて、言い淀む。
だって、ケヴィン達が恐れ、おじいちゃんが語って、わたしが想像していたよりも。
そう、そこにいたのはずっとボロボロで、威厳なんてなくて、だから、全然強そうじゃなくて。
人間の正義と悪意をその身に穿たれて続けている。なんだかそんな痛々しさがそこに鎮座していた。
「……アナタが、えっと、その、ま、魔王様、なの……?」
まあ、それでも途中の街に立ち寄りながら数日はかかったし、アズが街の近くに降り立とうものならいちいち大事件になってたけど。
ま、そのたびに人畜無害の権化、おっとり巨乳メガネお姉さんのエルルカが説明してくれたおかげでなんとか村に入ることはできたし、ついでにナイスバディのアズ亜人態も加われば全ての厄介事は万事解決だった。おっぱいすげー。
でも、マジにレベル上げもしてないし、最強装備も手に入れてないし、神の加護すらもないけど大丈夫?
そんな不安をよそに、わたし達最弱パーティは、だんだんと暗く、月も星も光が届かない夜に沈んでいくような不安な景色が続く、人間界とは明らかに異なる暗黒の領域へと飛び込んでいく。
「さ、着いたぜ。ここが魔界、魔王さまがかつて支配していた魔物どもの領域だ」
わたし達はアズの大きな背中からそっと降りる。何度も上り下りしたけど全然慣れやしない。分厚い鱗が足場になってはいるけど、落ちたら大けがになるくらいの高さはある。それに、地面は鋭い岩が転がっていて少しでも触れたら簡単に突き刺さってしまいそう。
うわー、ここが、魔界、か。とうとうこんなところまで来ちゃったよ。
ここは、きっと何千年もそうだったのだろう、黒く濃い霧(エルルカが、瘴気、魔物の力の源だって言ってたっけ)が立ち込めていて、アズが竜髑髏砕き山の山頂と同じように浄化しているはずなのに少し息苦しくて。
そう、わたし達は今、深淵と暗黒の混沌たる中心地、その支配者が統べる領域に降り立ったのだ。
「で、これが魔王城、ここに魔王様がいるぜ」
ラストダンジョンの場所、ずいぶんわかりやすいな。
あの切り立った崖の上にそびえ立つのが、魔王の住まう城なんだって。王都の綺麗で真っ白なお城とは違って、まるで光を全て呑み込んでしまったかのように真っ黒で、この暗黒ばっかりの魔界じゃ影にしか見えない。
いびつで禍々しいその姿があまりにも怖すぎて乗り込む気さえなくしちゃいそう。
「そんじゃ、行くか」
なんとなく躊躇しているわたし達とは対称的に、気楽な調子のアズはあの時のように盛大に歪み、軋みながら亜人態へと変身する。「テメエらを踏んずけちまわないようにするのはメンドーだからな」あら、アズ、意外と優しいのね。
そして、しばらく、誰もいない魔王城の静かで蝋燭すら灯っていない真っ暗な回廊をアズが作ってくれた松明を頼りに進んでいけば……
「…………え、アナタが、あ、そ、その……」
なんだか思ってたのと違くて、言い淀む。
だって、ケヴィン達が恐れ、おじいちゃんが語って、わたしが想像していたよりも。
そう、そこにいたのはずっとボロボロで、威厳なんてなくて、だから、全然強そうじゃなくて。
人間の正義と悪意をその身に穿たれて続けている。なんだかそんな痛々しさがそこに鎮座していた。
「……アナタが、えっと、その、ま、魔王様、なの……?」
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